頑張らないのは難しい
アリとキリギリスの寓話のように、頑張り屋さんはとても好感が持てますよね。
けれど一概にはそうは言えない、というお話を今回はしていきたいと思います。
むしろ頑張ることの弊害は甚大だというのも伝わればいいですね。
さて、まずは『頑張る』の定義ですね。
一言にまとめるのなら、平常時にプラスして負荷が掛かる状態のことでしょうか。
たとえば『新しく何かを始めた』とか『繁忙期』とか『ミス対応』とか。
つまり普段以上の処理や成果を求められる状態とも言い換えられますね。
この『頑張る』とは大変であり、誰にでも想像のつく地道な行為です。
とても分かりやすく、万人に受け入れられやすい状態でもあります。
いうなれば制限速度100km/hまでしか出ない車で120km/hの速度を出しているようなものです。
こうした車や電化製品たちは、安全性や耐久性を考慮して制限を課しています。
なのでいきなり壊れたりはしませんが、やはり想定以上の負荷が掛かっていることになります。
制限内で運用していてさえ、故障のリスクは存在するのですから、少なくとも保証を受けられるような用途ではありませんよね。
このように『頑張る』ということは、無理をしていることに他なりません。
そもそも想定以上の稼働をしている時点でNGですが、長期間の運用なんてそれこそ想定されていませんからね。
これが前述のように機械であれば、作成者側で性能を設定できる分、リスクはある程度見えるものになります。
しかし能力を数値化することが難しく、しかも個人間で大きな差が存在する人になると、多大なリスクにしかなりません。
過労死問題なんてのはまさにの典型例です。
一週間の労働時間の上限って40時間が『限界』って決められているわけですからね。
機械の制限は注意して守るのに、人が残業するのが普通なのは理屈に合いませんよね。
このように『頑張る』というのは『無理をしている』のと同じであることが伝わったでしょうか。
これらを踏まえて、さらに深堀りしていきたいと思います。
たとえば『100の能力』で『90の仕事』を毎日処理しているとします。
この場合『100(能力)-90(仕事)=10(余力)』と、能力内の仕事量なので特に問題はありません。
しかし忙しくなると急に『130の仕事』が渡されるわけです。
こうなると『100(能力)-130(仕事)=-30(不足)』になり、単純に30の仕事が溢れてしまいます。
同時に前述の車のように、人もある程度無理が効きます。
溢れたのが30程度であれば『頑張る』ことができるでしょう。
この際に犠牲にするのは大体時間で、これが『残業』というわけですね。
突発的かつ一時的なことなので、その時に『頑張る』ことで対処する。
これだけ見れば日常の光景ですよね。
そして『頑張る』ことで対応できることこそが実は落とし穴になります。
説明が伝わりやすいように数値にして話していますが、闇が深いのはここからです。
30の仕事を無理して処理した分は、あっさりと翌日に降りかかります。
そう、疲労の分だけ能力が落ちるわけですね。
能力100が前日の疲労によって30マイナスされたとすると70しか残りません。
しかし運悪くこの日の仕事は能力の上限値である100でした。
普段であればこなせる仕事もこの日ばかりは『70(今の能力)-100(仕事)=-30(不足)』となり、ままなりません。
またも『頑張る』日が訪れます。
そう、依頼者は『きちんと対応できる量を渡している』にも関わらず、です。
ここからはまさに地獄です。
そもそも能力以上の仕事に対処しようとした場合、効率は著しく悪くなります。
わかりやすいように先ほどは不足分だけを翌日に繰り越しましたが、実際はもっとマイナス補正があってもおかしくないのです。
たとえば『溢れた30の仕事は50の仕事と同じだけの労力が掛かる』と言えば共感してもらえると思います。
こうして普段の仕事量ですらこなせず疲労が毎日蓄積していきます。
最初は100あった能力上限も、知らぬ間に90に落ちるなんてことにもなります。
これはマイナス補正の常態化が続くことで、当人の主観が『自分の能力は100もない(90である)』と認識してしまうからです。
しかも能力が落ちたことでさらに仕事に潰されて『頑張る』必要が出る。
疲労が積み上がってマイナス補正を食らって能力が落ちる……まさにエンドレスッ!!
こういう状況に陥っている人って結構いませんか?
何だか本来の能力を出し切れない、と感じている人はとにかく一度どこかでリフレッシュを挟みましょう。
それだけで格段に世界が変わります。
今まで謎に時間をかけていた仕事があり得ないほど楽に感じるので一度試してみてください。
さぁ、ここまでで『頑張る』ことの不毛さを説いてきたつもりです。
次は逆に『頑張らない』について少し話していきたいと思います。
思っていたよりも時間が掛かった、逆に早く終わってしまった、なんてのは日常です。
つまりその時点でできる仕事量の見積もりというのは、想定しているよりも随分とあやふやなものだとまずは自覚しましょう。
自覚できましたか?
では対処法を伝授していきます。
まず、今日出せる能力を使い切った時点で帰ります。
大体の場合、これは定時の認識でOKです。
一日八時間、週に四十時間が『仕事の限界』だと法律が定めているのです。
それ以上働くことがそもそも異常事態だと心に刻みましょう。
そして翌日、能力が最大値まで回復した状態で仕事に取り掛かり、使い切って帰るのです。
たったこれだけで自身のベストパフォーマンスを維持できます。
つまり一日100、週に500の仕事を処理できるわけです。
先ほどの例だと『普通の仕事量』でも対応できなくなっていたのが嘘のようですよね。
その際に必要なのが優先順位。
あれもこれもと手を付けると全部が中途半端になってしまいます。
今やるべきことと後回しにするものの区別がつかなければ、前述の過労死まっしぐらというわけです。
ただこれが意外に難しい。
何せ疲れて焦った頭で取捨選択を迫られるわけですからね。
けれどこの対策もさほど難しくありません。
1:今抱えている仕事の名前を紙に書き出す
2:優先順に1から数字を振る
3:今日中に行わないといけない仕事がわかるようにマークを入れる
以上です。
ちなみに2と3の順番は入れ替えても構いません。
結果的に『今何が必要か』が見えれば十分ですからね。
後はこの順番に沿って進めるだけです。
ね、簡単でしょう?
これでも溢れっぱなしなんだんだけど!?
そう感じた方は次の手です。
優先順位の高いものの中から、ボリュームの大きな仕事の期限を伸ばしてもらいましょう。
それが難しければ次にボリュームの大きいもの、それでもダメなら次のやつ。
このように『できなかった結果を渡す』より、まずは『できそうにない現状を報告』すれば、別口の答えが現れるかもしれません。
それに実際に間に合わないのですから、どうせ何かを切り捨てなくてはいけませんからね。
やって損はありません。
このように『頑張る』というのは、他のことを考えない点では非常に楽です。
しかし耐える時間は減ることがないので、本人が摩耗に強い必要はあります。
対して『頑張らない』を実現するには、全体像の把握は大前提で、自身のやり方の見直しや周囲の協力が不可欠です。
仕事を減らすために調整の仕事を増やす矛盾を抱えるため、仕事量の配分にセンスや経験が必要になります。
別の苦労が発生するわけですね。
さて、『仕事』という単語で話を進めてきましたが、これらは日常のあらゆることに該当します。
遊びの予定や家事のあれこれ。
仕事をお金に置き換えれば、家計のことにも応用が利くでしょう。
『思考停止でとにかくこなさなければならない』というのは、能力をフル活用するには必要なことでもあります。
けれどその前に一呼吸入れて全体像を確認するだけで、一段と没頭できるようになるはずです。
段取りや準備に一番時間を掛けなくてはいけないのですからね。
#もやしいため #日常エッセイ #頑張らない生き方
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?