おけまる

顧客企業が抱える課題にカスタマイズした研修プログラムを企画し、実施する中堅研修会社に中…

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顧客企業が抱える課題にカスタマイズした研修プログラムを企画し、実施する中堅研修会社に中途入社して早10年。直近3年で登壇した研修の数は332案件。現在も年間100案件を超えるペースで登壇中。実践を通じて蓄積した講師としてのノウハウを形式知化し、無料公開いたします。

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講師への道 序章 ①はじまり

私が本稿を書く理由 はじめまして。とある中堅研修会社に勤める「おけまる」と言います。中途採用で入社して、もう10年以上になります。 10年一区切りなので、これまで培った講師としての知識、スキル、マインドを体系的に整理し、note上に無料で公開したいと思います。理由は大きく3つあります。 第一に、体系的に整理された、講師のための指南書が世の中にないからです。分かりやすくて実践的実用的で、誰もがアクセスしやすいものはないというのが、個人的な印象です。一方で、講師業を既にやって

    • 講師への道 終章 講師マインドとは 研修で「真実の瞬間」を担うのは誰?

      いよいよ終章です。序章の②で、「書き終えるのに1年ぐらいかかるかも」と言っていたのですが、おかげ様で4か月で終章にたどり着けました。最も書きたかったことを、最後に書きます。講師としてのマインドの話です。 研修ビジネスにおいて「真実の瞬間」を担うのは誰? 「真実の瞬間」とは、顧客と企業の接点において顧客がその企業全体に対して印象を抱くきっかけとなる出来事やその瞬間のことを指します。主にサービス業で重視される概念です。 具体的には、店舗などの施設外観、従業員の接客態度、製品や

      • 講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)⑤学習KPIの設計とモニタリング

        前回からの続きです。ラーニング・エクスペリエンス・デザイン(LXD)の最後のステップについて、私見を述べます。 KGIとKPIの関係 社会人の学習において、比較的中長期にわたる学習のゴールは、業務上のパフォーマンス向上を目指すのが理想です。短期・単発の研修では難しい面もありますが、中長期・複数回にわたる研修ならば不可能ではありません。 ゴールというからには修了時に達成/未達成が判定できる必要があります。その意味で、KGI(キー・ゴール・インディケーター)は定量的ならば判

        • 講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)④ラーニング・エクスペリエンス・デザイン(LXD)とは

          体験価値を重視する潮流 ここ数年、ビジネスの世界で『顧客体験』というキーワードが注目されています。背景には、消費者ニーズの多様化、プロダクトライフサイクルの短命化、インターネットの普及に伴う情報格差の消滅などがあります。 「モノからコトへのシフト」を合言葉に、各社とも製品サービスの「そのものの価値」ではなく、その利用を通じて顧客が得られる「体験やストーリー」を訴求する傾向が強まっています。 そしてこの流れは、エドテック(EdTech:教育とテクノロジーを組み合わせた造語)

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        講師への道 序章 ①はじまり

        • 講師への道 終章 講師マインドとは 研修で「真実の瞬間」を担うのは誰?

        • 講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)⑤学習KPIの設計とモニタリング

        • 講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)④ラーニング・エクスペリエンス・デザイン(LXD)とは

          講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)③ラーニングジャーニー

          第4章 第1,2項からの続きです。若手B2B営業パーソンのための商談トレーニングについての架空のID(午前中まで)を例に、解説を続けます。 例示:若手B2B営業パーソンのための商談トレーニングID オープニング(研修の目的やゴール、時間割の明示、講師自己紹介)10分 アイスブレイク「グループ内自己紹介」15分 グループ討議「①商談力を要素分解し、②課題を特定する」25分 発表共有(グループ数にもよるが仮に)25分 (各グループの発表に紐づけながら)まとめの講義「商

          講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)③ラーニングジャーニー

          講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)②ID設計

          第4章 第1項からの続きです。若手B2B営業パーソンのための商談トレーニングについての架空のID(午前中まで)を例に、解説を続けます。 例示:若手B2B営業パーソンのための商談トレーニングID オープニング(研修の目的やゴール、時間割の明示、講師自己紹介)10分 アイスブレイク「グループ内自己紹介」15分 グループ討議「①商談力を要素分解し、②課題を特定する」25分 発表共有(グループ数にもよるが仮に)25分 (各グループの発表に紐づけながら)まとめの講義「商談力

          講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)②ID設計

          講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)①IDとは

          インストラクショナル・デザインとは 講師実務読本「講師への道」もいよいよ本丸、インストラクショナル・デザイン(以降「ID」と略します)に突入します。講師への道を歩むにあたって、もっとも本質的で奥深い領域だと思います。ドキドキしますね。 さて、まず「IDとは何か?」ここから始めたいと思います。定義を押さえることで、何が重要でどうするべきかが見えてくるからです。学術的な定義はありますが、実務家としての私のこれまでの登壇経験に基づき定義させていただきます。 「IDとは、いつ、何

          講師への道 第4章 インストラクショナル・デザイン(ID)①IDとは

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル④議論の見える化、構造化

          暴れ馬を飼い慣らす、動かない馬を歩かせる 研修やワークショップの運営において、受講者同士あるいは受講者と講師の対話から得られる気づきを重視するならば、討議の活性化は重要な要素です。ただし、悪気の有無にかかわらず、受講者が討議テーマを無視して好き勝手にしゃべり出すと、収拾がつかなくなります。 かと言って、お通夜のように誰も話さないようでは、討議は成立しません。いずれの場合も、学習ゴールは達成できないでしょう。 討議を適切に活性化させるのは講師の役目であり、ファシリテーション

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル④議論の見える化、構造化

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル③多様性のマネジメント

          そもそもファシリテーションとは ファシリテーションの本来的な意味は「物事を容易にすること」です。ビジネスの文脈で具体的に定義すると「複数の人間が知恵や知見を持ち寄って、問題解決やイノベーションを成し遂げるための働きかけ」となるでしょうか。 このような「化学反応」を促進する人をファシリテーターと言います。ビジネスの現場においては、会議やミーティングの司会進行役と捉えることが多いのですが、本来的な意味に照らすと、それ以上の役割を担うべき存在です。で、研修講師は本来の意味での「

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル③多様性のマネジメント

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル②タイムマネジメント

          講師の力量を見極める際のポイントは? 私は現職場で自ら登壇する機会が多いのですが、案件によっては裏方として他の講師をアサインすることも少なくありません。この11年間で数多くの講師を間近で見て、アサインしてきました。なので、講師の良し悪しを見極める目利き力には、それなりの自信があります。 講師の力量を見極める際のポイントはいくつかありますが、最もわかりやすく、かつ実際の力量と比例しているのが、タイムマネジメントの能力だと確信しています。つまり、タイムマネジメントがきっちりで

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル②タイムマネジメント

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル①ディスカッションの活性化

          ”討議は踊る、されば深まる?” ディスカッションは学びを深めるための重要なアプローチ方法です。グループ討議であれクラス討議であれ「概念を言語化すること」は、学びを自分事化するための第一歩となるからです。 ただし、ディスカッションを活きたものにするのは容易ではありません。理由は、コントロールしがたい様々な要素が絡み合うからです。例えば、その日の天候・気候、物理的な会場から受ける影響(暗い/狭いなど)に始まり、果てはその組織の文化(学びに対する姿勢、快活さなど)から受ける影響

          講師への道 第3章 1対多数のファシリテーションスキル①ディスカッションの活性化

          講師への道 第2章 1対1の対人コミュニケーションスキル③フィードバック

          「気の利いたフィードバック」は、講師の力量の現れ 講師が、特定の受講者の気づきを増幅したり、その気づきをクラス全体に共有するという目的で、受講者のパフォーマンス(グループワークのアウトプットや、プレゼンテーション、ロールプレイ実演)に対してフィードバックする局面があります。 ここでいわゆる「気の利いたこと」が言えれば、上記目的通りまたはそれ以上の効果が得られます。反対に不発に終わると、あからさまにクラス全体の学習効果が下がるまでには至らないものの、微妙な失望感がざわざわと

          講師への道 第2章 1対1の対人コミュニケーションスキル③フィードバック

          講師への道 第2章 1対1の対人コミュニケーションスキル②コーチング

          複数の受講者が集まって学ぶ意義 学習者が知識のみを求めるならば、研修に参加する必要はなく、独学による読書や動画視聴で十分です。「コスパ」や「タイパ」という観点でいえば、研修はむしろ「分が悪い」と言えます。 知識のみならず知恵やスキル習得につながる気づき、あるいは「目からうろこが落ちる」「何かに開眼する」といった特別な学習体験を求めるならば、複数の受講者が一同に会して学ぶ「研修」に意義や醍醐味が見い出せます。 研修設計と研修運用の2つのアプローチ 研修の意義や醍醐味を高め

          講師への道 第2章 1対1の対人コミュニケーションスキル②コーチング

          講師への道 第2章 1対1の対人コミュニケーションスキル①傾聴・共感

          人は基本、話したがり 一般論として、他人の話を聞き続けるのは苦痛です。話し手への興味関心がよほど高い、あるいは話し手の話す内容がよほど面白いなら話は別ですが。 一方、話し手は、なぜ話すのか?聞き手がいるからですよね。相手が熱心な聞き手であればあるほど、話し手は気持ちよく話せます。 受講者を研修に巻き込み、自分事化させ、満足度も高めるために、講師は上記特性を利用します。つまり、受講者とのインタラクティブな対話場面をプログラムの要所に盛り込み、傾聴の姿勢で受講者の話を「聴く」

          講師への道 第2章 1対1の対人コミュニケーションスキル①傾聴・共感

          講師への道 第1章 1対多数のデリバリースキル③デモンストレーション

          コミュニケーションスキル研修では、デモンストレーションを示すことが有効 私は、営業パーソン向けの商談/交渉スキルや、マネジャー・リーダーあるいはOJTトレーナー向けの指導スキルなどをテーマとした研修に登壇することが多くあります。これらの研修ではコミュニケーションスキルがテーマになります。 コミュニケーションスキルには、傾聴、オープン/クローズド質問の使い分け、深堀り質問、コーチング、フィードバック、プレゼンテーション、ファシリテーション(プレゼンやファシリは「複合技」ですね

          講師への道 第1章 1対多数のデリバリースキル③デモンストレーション

          講師への道 第1章 1対多数のデリバリースキル②講師自己紹介

          研修業界における「魔の11分」とは 航空業界には「魔の11分」という言葉があります。これは航空事故が離陸時の3分間と、着陸時の8分間に集中していることに由来します。 研修業界で言えば「魔の11分」は開始から最初のセッションに入るまでの時間帯のことだと、私は痛感しています。着陸(終了時)は怖くありません。オープニングにはちょうど10分から12分くらいかかりますので、平均するとまさに「魔の11分」と言えそうです。理由は3つあると思います。 第一に、講師にとっての受講者情報が未

          講師への道 第1章 1対多数のデリバリースキル②講師自己紹介