*試し読み:誘惑★オフィスLOVER2―プロローグ15―

渡された水を、言われた通りに飲んでグラスを置く。

息を吐く私を、謎の男性は隣で見つめる。

???「お前、面白いな」

相沢美月「そんなこと言われたの、初めてです」

???「俺も、こんなこと言うのは初めてだ。本当の君は、どんな女なんだ?」

相沢美月「ふふ、興味ありますか?」

???「・・・少しな」

冗談を言うなんて、私のキャラじゃない。だから、隣の男性に真剣な表情で顔を近づけられたら、それをかわす引き出しなんて、持ち合わせているはずない。

相沢美月(キス、される・・・? でもどうして、私は逃げようとしないんだろ)

ゆっくりと近づく整った顔と唇に、吸い寄せられるように動けなくなり、目を閉じようとした、その時。

???「かける」

その声に、私たちは同時にハッとなって、不自然に近い距離から、自然な他人の距離に戻る。

状況を思い返して、混乱する私とは対照的に『かける』と呼ばれた隣の男性は、声の主に軽く手を上げる。

近づいて来るその人を、私は知っていた。

相沢美月(何日か前に、オズで会った気がする。・・・あ! エレベーターの人だ)

???「そろそろ時間。どこにいるかと思ったら・・・」

かける「メール、送っておいただろ?」

???「準備は?」

かける「俺が出来ていないとでも?」

???「一応聞いただけ」

相沢美月(このふたり・・・友達? ていう感じとは違うかな・・・)

かける「おい、酔っ払い。紹介しよう、君がこき下ろしていた山縣の右腕の」

立花律「立花律です」

相沢美月「・・・先日は、失礼いたしました」

立花律「いえ」

相沢美月(覚えて、くれてたんだ)

かける「なんの話だ?」

立花律「こっちの話」

かける「あ、そう。それで、彼女が・・・君、名前は?」

相沢美月「私、は・・・」

目の前には、山縣社長の知り合いがふたり。

酔っぱらった上に、八つ当たりまでしたとは言え、さすがに恥ずかしさは酔いでごまかせず、とっさに・・・。

相沢美月「葉山・・・葉山、陽向です」

親友の苗字に、妹の名前。偽名を使うにしては、なんとも安直な発想だけど、謎の男性は、満足そうな笑みを浮かべて立ち上がる。

かける「葉山陽向か・・・覚えた。俺たち、また会うかもしれないな」

相沢美月「あの、あなたの名前は・・・?」

かける「俺? 俺は・・・『かける』」

相沢美月「そうじゃなくて、フルネームを・・」

私の言葉を最後まで聞かずに『かける』と名乗る男性は、立花さんと去って行く。

バーを出る直前、振り返って私に大きな声を投げる。

かける「自分の足で歩けるまで、そこにいろ! 酔っ払いはパーティに出るべきじゃない」

相沢美月「声、大きいです・・・!」

かける「今さら恥ずかしがるのか?」

周りの目を気にする私に、『かける』さんは笑い飛ばす。その表情が、酔っ払いの記憶に刻み込まれる。

バーを出て行く背中を見送りながら、グラスの水を飲み干すと、新しい水をバーテンさんが置いてくれる。

相沢美月「ありがとうございます」

バーテン「いえ、とんでもございません」

相沢美月「それに、騒がしくてごめんなさい」

バーテン「心は、少しでも晴れましたか?」

その問いかけに、私は曖昧な微笑みでごまかす。

心に引っかかっていた気持ちを吐き出せば、スッキリする。そう思っていたけど、実際気持ちは何も変わらなかった。

優しい魔法は、確かに一時の違う夢を見せてくれた。だけど仕事でした悔しさや苦い気持ちは、やっぱり仕事で取り返すしかないみたい。

相沢美月「今の自分で勝負出来ないなら、成長しなきゃ」

魔法は解けて、日常に戻る・・・そう思っていた。だから、私はまったくもって想像さえしていなかった。

この日をきっかけに、誘惑に満ちたオフィスでの毎日が始まるだなんて――

めくるめく誘惑の数々に、胸をときめかせることになるだなんて──

・・・夢にも思わなかった。

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