*試し読み:誘惑★オフィスLOVER2―プロローグ01―
「これが、私・・・?」
鏡に映るのは、魔法にかかったシンデレラ。
「そう、12時をすぎても解けない魔法だ」
「・・・お前は自分の魅力を知らな過ぎる」
「俺の女に、なってみないか?」
***
広告代理店で、2年目のCMプランナーとして働く主人公・相沢美月。
ある日、地味だという理由でCM担当をおろされてしまい!?
見返してやろうと最高に美しく装い、社内パーティーに参加することに。
そこで出会ったのは、息も止まるほど魅力的な男性。
・・・その日を境に、あなたの毎日は一変して!?
***
それはまるで、短編映画を観ているようだった。
渋谷駅前の交差点を行き交う、人々の喧騒が消え、見上げた大型ビジョンに、心ごと吸い寄せられる。
――伝えたいタイミングは、いつだって、あなたの手の中に――
映し出されたCMの文字が、いつまでも記憶から消えない。
相沢美月「・・・見つけた」
何気ない出来事が、先の人生に大きな影響を与える。
──大学3年の秋の終わり。
初めて、自分のための夢を見つけた瞬間だった。
***
???「輝雪堂(きせつどう)の件、進行状況はどうなってる?」
相沢美月「あ、はい! コンセプトや内容は、すでに先方からOKをもらっているので、大きな問題もなく、撮影まで進めるかと」
あの日から、もうすぐ3年。
私はCM制作を得意とする広告代理店・オズマジック(Oz Magic)のCMプランナーとして、慌ただしい日々を過ごしていた。
相沢美月「これから、四宮さんと打ち合わせに出てきます」
???「おお、万事順調だな」
相沢美月「だといいんですが・・・」
準備の手を止めて、苦笑交じりに顔を上げる私に制作部の要で、数々のCM受賞歴を持つ、部長の上条健一郎(かみじょう けんいちろう)さんが朗らかに笑いながら、ぽんと私の頭に手を置く。
上条健一郎「今までのお前でいいんだぞ。初めてのメイン担当で力が入るのもわかるけど、アシスタントの経験は、必ず実になってるからな」
歴史も実績もあり、業界内でも評判の高いオズマジックに入社して、2年目の春を過ぎた頃、ひとつのチャンスが巡って来る。
大手化粧品メーカー・輝雪堂(きせつどう)の新商品。
【ティアラ・ホイップ】というシャンプーの、CMコンペに出した案が採用され、初めてメインプランナーとして、任せてもらえることになったのだ。
相沢美月「ありがとうございます、上条さんにそう言ってもらえると背筋がシャンとするというか、気合いが入ります」
上条健一郎「いや、俺は肩の力を抜けって言ったつもりなんだが・・・まぁ、受け取り方がなんともお前らしいか」
部長の名にはミスマッチな、安心する笑み。
気取らない、気負わせない、気飾らない。
上条さんの人柄に触れ、改めて納得したことがある。
彼の作ったCMは、人の心を瞬時に捕まえる魅力がある。
――あの日、私の心をギュッとつかんだみたいに。