*試し読み:誘惑★オフィスLOVER2―プロローグ13―
* * *
相沢美月「もう一杯、同じものをくださいっ!」
バーテン「かしこまりました」
『すぐに戻ります』
その言葉とはウラハラに、私は最上階のバーで、気づけばグラスを何杯も空にして、フワフワになっていた。
居酒屋で飲むカクテルとは格段に違うおいしさに、酔いはすぐに身体を包み込んで、押し込めていた本心がこぼれる。
相沢美月「だいたい、会ったこともない人に地味なんて言われたくありません・・・! 可愛ければなんでもいいんですか?」
結局は、同じところをグルグル。
相沢美月「頑張って頑張って・・・やっとつかんだ、夢の一歩だったのに」
自分は自分! と、突っぱねる強さも
もっと可愛くなろう! という従順さもない私は、いったい何で成果を出して、どこで納得すればいいんだろう。
相沢美月「綺麗にしてたら、担当を外されなかったのかな・・・。んー・・・わかんない・・・とりあえず、飲んじゃおっ!」
バーテン「お待たせいたしました」
相沢美月「ありがとうございます」
ニコッとバーテンさんに笑顔を向けた、その時。
カウンターに置いていた携帯が震えて、桃花から着信が。
手に取ろうとするけど、滑って落ちてしまう。
拾おうとスツールから下りた瞬間。
相沢美月「きゃっ」
視界が揺れて、身体のコントロールが完全に制御不能になる。
相沢美月(情けない。酔っぱらった上に倒れちゃうなんて・・・)
転倒して床に打ちつけられることを覚悟した、その時。
???「・・・重い」
相沢美月(え?)
???「座り直せるか?」
何が、どうなっているのか。
私は雰囲気のいいバーで、醜態をさらさずに済み、さらに、モデルさんのような男性に抱き止められていた。
???「・・・返事は?」
相沢美月「あ・・・はい。じゃなくて、ごめんなさい! 見ず知らずの相沢美月に、ご迷惑を・・・!」
???「とりあえず、座ってくれないか?」
相沢美月「・・・すみません」
呆れるような視線から顔をそらして、呼吸を整えてスツールに座る。
男性は私を一瞥して、携帯を拾い上げてくれる。
桃花からの呼び出しは、既に震えを止めていた。
改めて謝ろうと顔を上げたタイミングで、その人は当然のように、私の隣に座る。
相沢美月(っ・・・)
片手をスッと上げてバーテンさんを呼ぶ仕草に、私はドキドキ・・・ではなく、呆然と見つめる。
???「彼女にチェイサーを。俺はジントニック、少し強めで」
バーテン「かしこまりました」
相沢美月「あの、本当にすみませんでした。支えていただいて、助かりました」
???「やけ酒を否定するつもりはない。だが、自分の限度を知らずに飲むのは、頭の悪い人間だと俺は思っている」
相沢美月「・・・嫌な感じ」
???「嫌な感じで結構。酔っ払いには嘘くさい慰めより、正直な意見が有効だ」
相沢美月「え?」
???「少し、冷静になっただろ」
相沢美月(言われてみれば・・・)