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Pix4DcatchRTKで構造物(橋台)を計測した結果


はじめに

建設産業の現状と課題

 国土交通省が発表している「建設産業の現状と課題」を読み取ると
2015年には約600万人いた就労者数は2028年の予測では492万しかいなく108万人減少している一方で、建設投資は51.8兆円で横ばいの状況であることから建設投資額を就労総数で換算すると1.2倍程度の生産性向上が必要で、かつ働き方改革の影響も加味すると更に一人あたりの生産性向上数値は上がるだろう見通しは容易に想像出来る。
https://www.mlit.go.jp/common/001187379.pdf

i-Construction2.0って?

国土交通省はi-Construction2.0を令和6年4月16日に策定したが、これは従前のi-Constructionの概念目的【生産性向上】から【省人化対策】に大きく舵を切ったものです。
2015年比で2022年度には当初の目標値1.2倍を達成したことからi-Construction2.0では2023年度比で2040年までに省人化3割、つまり「生産性1.5倍とする」と掲げています。
これは2015年度比に換算すると実に1.8倍もの生産性向上の目標値になる訳ですがこんな事は可能なのでしょうか?

2025年にICT施工の原則化

 策定されたi-Construction2.0を読み進めていくと驚いたのは2025年ICT施工の原則化ですが、これはもう出来る出来ないではなく「やらなきゃいけない」というフェーズです。この辺りは遅かれ早かれ分かっていたことで、今から慌てても仕方がないですね。

3次元出来形管理の改定

3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)令和6年3月

まずICTの全面的な活用という事で様々な要領が規定されています。
・出来形管理の監督・検査要領
・出来形管理要領
・各種要領
・ICTの全面的な活用の推進に関する実施方針 等ですが、中でも施工業者さんにとって重要な出来形管理要領の概要を説明します。

地上写真測量

 R6年3月版 3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)では【地上写真測量】による計測手法が追加され、地上写真測量の定義はLiDAR併用の地上写真測量も同様に扱って良いと明記されている。

Pix4DcatchRTKはフォトグラメトリなの?LiDARなの?

 Pix4DcatchRTKは基本フォトグラメトリであるが、同時にLiDARで取得した点群計測データをマージして処理する事が特徴である。
よってLiDAR併用の写真測量技術という解釈で差し支えない。

LiDAR併用地上写真測量が可能な工種とは?

 R6年3月版 3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)で認められたLiDAR併用地上写真測量で出来形管理して良い工種は以下のとおりです。
・土工編(第2編)
・路面切削工編(第4編)
・法面工編(第9編)法枠のみ
・小規模土工編(第14編)
・付帯道路施設工編(第16編)
・電線共同溝工編(第17編)
この辺りの計測等については全国のクライアント様と一緒に検証して参りたいと考えております。

Pix4DcatchRTKで橋台計測

ICT構造物工(橋脚・橋台)編(第13編)

 あれ??前述の地上写真測量ではICT構造物工(橋脚・橋台)が無いじゃないか?と気づくと思います。
そうです、この計測を行ったのは令和5年度ですから令和6年4月に最新版の要領が制定される前の実証実験結果です。
しかしながら、今の要領には制定されていないからこそ実証実験に価値があるものと思います。

計測方法

 橋台・橋脚の施工にあたっては様々な制約があります。具体的には地下部は仮締切・土留があり、地上部では足場が設置されています。
 従ってどのような計測手段をとろうとも段階的に計測せざるを得ません。大きく工程を分けると以下のように順番になります。
 1)フーチング(地下に埋まる部分)
 2)梁・台座・沓座・翼壁・踏掛版などの一番上部にある部位
 3)側面・躯体・壁面などの部分
 また2)の計測時は高所作業となるため足場が設置されていることが条件で、1)と3)はその逆になります。

計測条件

 原則として以下の条件が基本となります。
 ・オープンスカイであること
 ・計測毎に標定点を設置しておくこと(最低2点以上)
 ・1回の計測における写真枚数の上限は公式では4,000枚とアナウンスしているが、なるべく多くても2,000枚までとする方が望ましい。かつ計測対象やロケーション更には写真の解像度に依存することもあるので注意が必要
 ・場合によっては何回かに分けて計測する方が結果が良い場合もある
 ・RTKがFIXしていても端末の過度な上下作業は避けること

注意事項

計測にあたっては以下の点に注意して安全側で作業する事が必要です。
 ・法令遵守で作業すること
 ・高所作業になる場合は転落墜落防止対策を行うこと
 ・スキャン時は転倒しやすいので十分に注意と対策を行うこと
 ・一人作業は慎むこと

計測(翼壁・台座・沓座・踏掛版)

 今回はフーチングは対象外となります。計測対象の橋台の形状は以下のようなります。幅18m*長さ5.2m*高さ7.4m程度

3Dモデル


3Dモデル(上から)


3Dモデル

先ずは足場が設置してある状態で上部に上がり計測します。
平面的に見ると「コの字」形状なのですが一度に計測せずに3回に分けました。理由としては以下の通りです。
  1)足場の形状が連続性が無い
  2)枚数を削減するため
  3)スキャンの連続性が担保出来ない為フロート状態になる

実は最初に計測した時にエラーが出ています。
理由としてはスキャンの連続性が失われたこと、LiDAR計測に拘りすぎて枚数が2261枚になったこと、同じ場所を何度も往復せざるを得なかった事で結果的にマージ出来ませんでした。
よっては何回かに分けて計測する方が楽ということになり3回に分けて計測して後の点群データを合成しています。

失敗事例


翼壁部は何度かに分けて計測する

この時に標定点を設置しており、TSで与えた真値とする座標値とPix4DcatchRTKで取得した座標値を比較すると平均で25mmの差異がありました。
これはVRSで取得した標高の誤差ですが相対形状は精度が確保されているため標定点で3次元ヘルマート変換をかけるとピッタリきます。

TS取得座標との差異


TS取得座標との差異

それらを重畳し3D設計データと比較すると共に、TLSで取得した点群データと比較してもほぼ誤差はない結果となった。
(TRENDPOINTの差分解析を使用)

計測(躯体・壁面)

 最初にLiDARでなるべく躯体の点群データを取得する方法で計測しましたが、枚数が増えるだけで結果はさほど変化ありません。
 また、その方法では高所(地上から7m)になるとLiDARレンジを超えるため点群密度が不足する箇所が出来ます。
 よってLiDARで計測はあまり考えず躯体周辺をぐるっと回るイメージが良いと結論付けました。
計測条件は以下の通りです。
 ・Iphone14Pro+pix4DcatchRTK使用
 ・地上から自撮り棒使用しない
 ・LiDAR使用は一部のみ
 ・翼壁までの高さ7.5m
 ・橋台幅18m
 ・橋台背面は安全ネットが設置されている為別Scanとする
 


 LiDARで取得しているのは以下のポイントだけであるが、RTKがFIXしていて写真がキチンと撮れていればフォトグラメトリで処理しているため点群データも密度があり精度もある。

計測結果

この計測時もTSによる標定点を設置しており、真値とする座標値(標高)とPix4DcatchRTKで取得した座標値を比較すると差分は(17mm、26mm、39mm、51mm)であり平均すると33.2mmとなった。これを3次元ヘルマート変換したうえで設計3Dモデル及びTLSで計測した点群データと重畳し比較した。

計測データを合成・変換して比較

Pix4DcatchRTKだけで取得した点群データを地上レーザースキャナー(SX12・X7)と比較した結果、同等の精度が確保された事を確認出来た。
(尚、透水シート部分の控除はしていない)

まとめ

結局のところPix4DcatchRTKでICT構造物工が出来るのか?

出来ます!!
工夫と鍛錬が必要になりますが、3D設計データと重畳比較してヒートマップで検証した結果精度内に収まりました。
また地上レーザースキャナー(TrimbleSX12及びX7)で計測した点群データと比較した結果誤差も見受けられませんでした。

編集後記

 今回駆け足で記事を書きましたが、ここでは書ききれないほどの苦労や失敗を重ねて今回の結果を得ました。
 そのため注意点や失敗事例、改善点なども含めノウハウが蓄積されています。今後も様々な実証実験を重ねて、専門的な知識が必要な3次元出来形管理を誰でも出来る簡単な3次元出来形管理にチェンジして行く活動を続けますので応援宜しくお願い致します。