4人声劇 想定20分『第1話 ロックダウン』

🖊沖ママカーニバル2024

『No Limit(ノーリミット)』 作 沖ママ

第1話 ロックダウン

法医学者 サトウ シンヤ : (男性)
法医学者 ミマカサ ミユキ : (女性)
助手 フカザワ ユキヒコ : (男性)
事務員 スガワラ ミネコ : (女性)

-以下本文-

スガワラ ミネコ
「あらやだ!ねぇ、ちょっと。ミユキちゃん。見てよこれ。」

ミマサカ ミユキ
「スガワラさん?どうしたんですか?」

スガワラ ミネコ
「また変死体ですって。物騒な世の中になったもんよねぇ。」

ミマサカ ミユキ
「そういう事件性(じけんせい)のあるご遺体(いたい)があるから、うちみたいな機関が必要なんじゃないんですかね?」

フカザワ ユキヒコ
「そうそう、事件性のあるご遺体や解剖依頼がなけりゃ我々、お仕事ないですからね。」

スガワラ ミネコ
「そう言われてみればそうよね。お仕事なかったらお給料、もらえないものね。うん。」

フカザワ ユキヒコ
「お給料もらわないと、生活やって行けないから。」

ミマサカ ミユキ
「ホント、難儀(なんぎ)な商売よねぇ。」

スガワラ ミネコ
「そういえば、今日サトウさんは?」

ミマサカ ミユキ
「あ~、見てないわね。フカザワ君、何か知ってる?」

フカザワ ユキヒコ
「さぁ。あの人、最近あの、記者さんいたじゃないですか。名前……なんだっけな。」

ミマサカ ミユキ
「カガワ ノブオ!月刊クナジャーナル……だっけ?あんまり覚えてないけど。」

フカザワ ユキヒコ
「そう、それ!何か良く会ってるみたいですよ。」

ミマサカ ミユキ
「あ~、なるほどねぇ。」

サトウ シンヤ
「俺が、どうしたって?」

フカザワ ユキヒコ
「今頃ご出勤ですか、サトウさん?」

ミマサカ ミユキ
「あーあ、これだから職歴長い人は……はぁ……。」

サトウ シンヤ
「うるせぇな。俺がいつ来ていつ帰ろうが、俺の勝手だろ。」

スガワラ ミネコ
「ダメですよ~。出勤時間、決まってるんですから。ちゃんと守ってもらわないと。」

サトウ シンヤ
「ミネコさんまで、あぁそれより。ミネコさん、こないだのアレ。死亡検案書、出せる?」

スガワラ ミネコ
「こないだの?」

サトウ シンヤ
「法務省案件のアレ。ナンバー付きの。」

スガワラ ミネコ
「あぁ、ナンバー53番さんね。はいはい、えぇ~っと。ちょっと待ってね。」

ミマサカ ミユキ
「ナンバー53番さん、私が休みで診(み)れなかった時の……。何かあったんですか?」

フカザワ ユキヒコ
「まさか、イチャモン付けられてるとか?」

サトウ シンヤ
「そのまさかだ。さっき所長から呼び出されてな。」

ミマサカ ミユキ
「えぇ!?面倒なことにならないといいけど。」

フカザワ ユキヒコ
「もうなってんじゃないかな、多分。」

サトウ シンヤ
「で、ミネコさん。どうなんだ?出せそうか?」

スガワラ ミネコ
「ん~、それが、おかしいのよねぇ。」

サトウ シンヤ
「おかしい?」

ミマサカ ミユキ
「え、なになに?」

フカザワ ユキヒコ
「はぁ……やっぱり……。」

スガワラ ミネコ
「何かね。死亡検案書、見れないのよ。」

サトウ シンヤ
「見れない?どういう事だ?」

スガワラ ミネコ
「うちの、DAIE(ディーエーアイイー)の専用サーバーのはずなんだけど……。無いのよ、データが。フォルダごと。」

ミマサカ ミユキ
「えぇ!?そんなことある!?」

サトウ シンヤ
「コイツは何かあるな。フカザワ、お前見れるか?」

フカザワ ユキヒコ
「はいはい、分かりましたよ。んじゃ、スガワラさん。ちょっと失礼しま~す。」

スガワラ ミネコ
「ユキヒコ君、お願いね。私、お茶入れてくるから。」

サトウ シンヤ
「ミマサカ、お前がここに来たのって2年前。だよな?……いいか、ちょっとこっち来い。」

ミマサカ ミユキ
「んぇ!?何ですか?DAIE(ディーエーアイイー)に来たのは2年前……ですけど。」

サトウ シンヤ
「2年前に何があった?」

ミマサカ ミユキ
「2年前……。ある変異体(へんいたい)のご遺体(いたい)を診(み)ました。死因は胸部圧迫(きょうぶあっぱく)による心停止(しんていし)。圧迫死(あっぱくし)です。そのご遺体(いたい)には不可解(ふかかい)な点があった。私、言ったんです。おかしくないですか?調べませんか?って。でも、誰も取りあってはくれなかった。それどころか、忘れろ。検案書(けんあんしょ)に書くな。誰にも話すなって言われてしまって。」

サトウ シンヤ
「その時のこと、どのくらい覚えてる?」

ミマサカ ミユキ
「あんまり詳しくは覚えてないですけど……体内の損傷(そんしょう)が、外傷(がいしょう)に比べて激しかったのは覚えてます。いくら圧迫死(あっぱくし)でもあんなになるかなと。」

サトウ シンヤ
「なるほど。損傷だけか?腐食具合は?」

ミマサカ ミユキ
「外皮(がいひ)、皮膚(ひふ)、それから筋肉とか脂肪(しぼう)はそれほどでもなかったかと。あ、でも……。」

サトウ シンヤ
「内蔵は腐食が進んでいた、と?」

ミマサカ ミユキ
「言われてみれば……そうだったかも。でも、サトウさんが何でそれを?」

サトウ シンヤ
「ちょっと思い当たる件があってな。」

ミマサカ ミユキ
「それがナンバー53番。」

サトウ シンヤ
「その通りだ。ナンバー53番にはある種の特異性を俺も感じてはいた。ただ……。」

フカザワ ユキヒコ
「サトウさん!ミマサカさん!ちょっと!」

ミマサカ ミユキ
「フカザワ君!?」

サトウ シンヤ
「なんだ?どうした!?」

フカザワ ユキヒコ
「PCのログなんですけど、おかしいんです。改ざんされてる。」

ミマサカ ミユキ
「フカザワ君!」

フカザワ ユキヒコ
「はい!」

ミマサカ ミユキ
「どういうことか分かんない!説明して。」

サトウ シンヤ
「要するにハッキングされたか、何者かが直接データ抜き取るかして、ご丁寧にログの改ざんまでして行ったって事だ。」

ミマサカ ミユキ
「それが分かんないんです!」

スガワラ ミネコ
「はいはい、お茶入ったわよ。はいこれ、ミユキちゃんの分。」

ミマサカ ミユキ
「あ、ありがとうございます。」

スガワラ ミネコ
「はい、これはユキヒコ君の。」

フカザワ ユキヒコ
「はぁ~、美味しい。」

スガワラ ミネコ
「サトウさんのは、これね。はいどうぞ。」

サトウ シンヤ
「おう、悪いな。ありがとう。」

スガワラ ミネコ
「それで?ユキヒコ君、パソコン。どうだったの?」

フカザワ ユキヒコ
「そうです!パソコン!所長に報告しときますか?」

サトウ シンヤ
「いや、待て。それはマズイ。」

ミマサカ ミユキ
「なんでですか?犯罪ですよ、これ。」

サトウ シンヤ
「そもそも、何でナンバー53番の死亡検案書を今更改めて見ようと思ったのかを説明しなくちゃならん。」

ミマサカ ミユキ
「それは!まぁ、確かに。」

フカザワ ユキヒコ
「我々だけの秘密ってことですね。」

スガワラ ミネコ
「何か大変なことになってるの?大丈夫?」

サトウ シンヤ
「今のところは、な。フカザワ、ナンバー付きのフォルダにバックドア、仕掛けられるか?」

フカザワ ユキヒコ
「出来なくは、ないですけど……。良いんですか?」

サトウ シンヤ
「かまやしないさ。あっちがその気なら、こっちも罠を仕掛ける。」

スガワラ ミネコ
「あら電話。もしもし、あ~所長。どうされたんですか?皆さん?いますよ。はいはい、テレビ?ちょっとお待ちを。はい、付けました。緊急チャンネル?あ~、これですね。はい。」

ミマサカ ミユキ
「え?なに……これ。」

サトウ シンヤ
「政府による緊急放送。」

スガワラ ミネコ
「放送が終わったら電話する?はい、お待ちしておりますね。それでは、ごきげんよう。」

ミマサカ ミユキ
「未知のウイルス……?」

サトウ シンヤ
「クソッ!変異体の原因はこれか!」

フカザワ ユキヒコ
「どういうことですか?」

サトウ シンヤ
「人体は数億の細胞から出来てるって話は分かるよな?」

フカザワ ユキヒコ
「そのくらい分かってますよ。」

スガワラ ミネコ
「あら、そうなの?凄いわね。」

サトウ シンヤ
「ミネコさん、ちょっと黙っててくれるか。説明しずらい。」

スガワラ ミネコ
「はいはい、聞いてるわね。」

サトウ シンヤ
「すまないな。今度、どら焼きをご馳走様しよう。」

スガワラ ミネコ
「あら嬉しい!」

フカザワ ユキヒコ
「サトウさん!」

サトウ シンヤ
「説明を続けよう。未知のウイルスと言われているが、コイツは恐らく人工細胞を模したウイルスだ。何より厄介なのは、人体の細胞組織を破壊すること。しかもまだ良く知られていない。」

フカザワ ユキヒコ
「そんなものが……作れるんですか?」

サトウ シンヤ
「結論から言えば YES だ。所詮細胞は細胞でしかない。今、医療研究の最先端では細胞を人工的に作り出し、その細胞を人体に移植する事が行われている。その細胞は他の細胞と癒着(ゆちゃく)するもの、共存するもの、そして……破壊するものに分別出来る。」

フカザワ ユキヒコ
「破壊するもの……某国(ぼうこく)で研究されてるっていう、スーパーキラーT細胞。」

サトウ シンヤ
「しかし、そんなものどうやって手に入れた!?不可能だ。政府機関、医療機関、製薬会社、あらとあらゆる分野でマークされているんだぞ。」

ミマサカ ミユキ
「ねぇ、これ政府による緊急放送ですよね?」

フカザワ ユキヒコ
「そうだね、それが何か?」

ミマサカ ミユキ
「という事は、政府機関はスーパーキラーT細胞の存在を認め、認知していたって事になる。」

サトウ シンヤ
「そうだな。ナンバー53番を覚えて……って、ミマサカは知らないんだったな。ナンバー53番が運ばれてきたのは、およそ1ヶ月前。あのご遺体は確かに特異体だった。原因が分からなかったが、そういう事かよ。クソッ!」

ミマサカ ミユキ
「サトウさん……2年前ってもしかして……。」

フカザワ ユキヒコ
「2年前がどうかしたんです?」

スガワラ ミネコ
「2年前かぁ。懐かしいわねぇ。ミユキちゃんがウチに来たのもちょうどその頃よね。大学病院から流れてくるってDAIE(ディーエーアイイー)で大騒ぎだったもの。」

フカザワ ユキヒコ
「へぇ~、そうだったんですね。俺はまだ見習いみたいなもんなんで、あんまその辺は分かんないなぁ。」

サトウ シンヤ
「大学病院からワザワザ、ウチみたいなトコに流れてくるんだ。何やらかしたんだって噂だったけどな。どうせ、ろくでもない理由なんだろうとは思っていたが……まさかだな。」

ミマサカ ミユキ
「わ、私が診(み)たご遺体(いたい)、このウイルスに……?」

サトウ シンヤ
「恐らくだが、感染していたんだろうな。もしくは、感染させられたか。とにかく、今となっては詳しい事は何も分からん。だからこそ、ナンバー53番の検案書を確認したかったんだが、まさかデータそのものをやられるとはな。」

フカザワ ユキヒコ
「確認されたら困るって事ですかね。サトウさん、最近外出多かったのと関係あるんじゃないですか?月刊クナジャーナルの記者と頻繁に会ってますよね。」

サトウ シンヤ
「月刊クナジャーナル。あぁ、カガワ ノブオか。あいつは協力者だ。」

ミマサカ ミユキ
「協力者?」

フカザワ ユキヒコ
「月刊クナジャーナルってゴシップ誌じゃないですか。大丈夫なんです?」

サトウ シンヤ
「アイツは信用出来る。」

スガワラ ミネコ
「まぁまぁ、サトウさんがそう言ってるんだし、信じて見ましょう。私たちだって、何を信じていいんだか分からなくなったらおしまいよ?」

フカザワ ユキヒコ
「そう、ですね。確かに俺たちが、俺たちを信じられなくなったら終わりだ。」

ミマサカ ミユキ
「はい、分かりました。」

サトウ シンヤ
「悪いな。今はあまり大手を振って言うことが出来ん。」

スガワラ ミネコ
「さぁさ、緊急放送は続いてるから見てみましょうね。」

サトウ シンヤ
「……ミネコさん、お茶のおかわり、もらえるかな?」

スガワラ ミネコ
「あら、みんなは?大丈夫?」

フカザワ ユキヒコ
「あ、俺もお願いします。」

ミマサカ ミユ
「それじゃあ、私も。お願いします。」

スガワラ ミネコ
「はいはい、みんなちょっと待っててね。お茶、煎れて来るから。」

フカザワ ユキヒコ
「……サトウさん。スガワラさん、ワザと外させましたよね。」

ミマサカ ミユキ
「え?お茶のおかわり欲しかったんじゃないの?」

フカザワ ユキヒコ
「スガワラさんは、我々の中でも一般人に1番近い人だ。恐らく、今回の事に巻き込みたくないんじゃないんですか?」

ミマサカ ミユキ
「んんん?サトウさんとスガワラさんて、そういう関係!?」

サトウ シンヤ
「どういう関係だ!?……いいか。これから話す事は俺たち3人だけの秘密だ。」

ミマサカ ミユキ
「なんだろう、秘密とかワクワクしちゃう。」

フカザワ ユキヒコ
「サトウさん、ミマサカさんはほっといていいんで、話してもらえますか?」

サトウ シンヤ
「分かった。実はな……今、放送されている政府による緊急放送は事前に仕組まれていた事なんだ。」

ミマサカ ミユキ
「んぇ!?」

サトウ シンヤ
「これは、カガワ ノブオから聞いたんだが、議員や秘書の中にも行方不明者がいるらしい。最近、体調不良を理由に表舞台から姿を消したのが居るだろ?」

ミマサカ ミユキ
「え、誰?フカザワ君、知ってる?」

フカザワ ユキヒコ
「政権与党の幹部クラスじゃないからあまり報道されてないけど、確か居たはず。そんな歳でもなかった気がするけど、まぁ何か病気とかなのかなって思ってた。」

サトウ シンヤ
「表向きは政府直轄の警察大学病院に入院してるって話だが、あれはガセだ。本当のところは行方不明らしい。」

フカザワ ユキヒコ
「幹部クラスじゃない人を狙う理由ってなんなんですかね?」

サトウ シンヤ
「それは、心理的な作戦だろうな。大物にいきなり行くと、それこそ報道されて大事になる。犯人としてはそれでは動きにくくなる。大物でなければ世間の関心も薄い。数字が取れなきゃ報道はされない。議員連中は、次は誰だ?って話でヤキモキしてるだろうがな。」

フカザワ ユキヒコ
「って事は、もう次のターゲットは決まっている?」

サトウ シンヤ
「その可能性もある。ミマサカ、ミネコさんとこ行って、お茶じゃなくてコーヒーにしてくれって頼んできてくれ。」

ミマサカ ミユキ
「え~!?自分で行けばいいじゃないですかぁ~?」

サトウ シンヤ
「いいから、頼むよ。」

フカザワ ユキヒコ
「俺のも、コーヒーにしてもらって下さい。」

ミマサカ ミユキ
「フカザワ君も!?もぅ、行けばいいんでしょ、行けば。ふんっだ!」

サトウ シンヤ
「全く、手のかかるじゃじゃ馬だな。」

フカザワ ユキヒコ
「サトウさん、俺を残した理由は何ですか?」

サトウ シンヤ
「……さすがだな。」

フカザワ ユキヒコ
「お茶じゃなくてコーヒー頼んだのも、時間稼ぎですよね?」

サトウ シンヤ
「それに乗っかるフカザワもフカザワだと思うが?」

フカザワ ユキヒコ
「サトウさんのそういうとこ、嫌いじゃないです。」

サトウ シンヤ
「最近の若造は頭の回転も早いし、口が達者だな。」

フカザワ ユキヒコ
「最高の褒め言葉ですよ。」

ミマサカ ミユキ
「スガワラさーーーーん!」

スガワラ ミネコ
「あら、ミユキちゃん。どうしたのよ。放送は?終わった?」

ミマサカ ミユキ
「まだ続いてます。何か良く分かんない事になって来ちゃいましたよね。」

スガワラ ミネコ
「そうねぇ。でも、みんなが居るじゃない。それかになんだっけ、ほら。」

ミマサカ ミユキ
「ご遺体(いたい)は何も喋(しゃべ)らないが、真実(しんじつ)を教えてくれる。ですか?」

スガワラ ミネコ
「そうそれ、所長とサトウさんが話しててねぇ。カッコ良かったなぁ。」

ミマサカ ミユキ
「えぇ!?サトウさんが?カッコいい!?」

スガワラ ミネコ
「話してたのは所長。あの人ね、元々、法医学者だったのよ。その頃からの知り合いで、私をDAIE (ディーエーアイイー)に引っ張って来たのも所長。」

ミマサカ ミユキ
「所長とスガワラさんてどんな関係なの……?」

スガワラ ミネコ
「そうだ、ミユキちゃん。何かあって来たんじゃなくて?」

ミマサカ ミユキ
「そうだ!そうなんですよ。サトウさんと、フカザワ君がお茶じゃなくてコーヒーがいいって言い出して。」

スガワラ ミネコ
「あー、コーヒーね。コーヒーコーヒー……っと。あれ?コーヒー無くなって……ないわ。あったあった。大丈夫よ。もうすぐお湯沸くから。そしたらコーヒー煎れるわね。」

ミマサカ ミユキ
「サトウさんとフカザワ君、何か怪しくないですか?」

スガワラ ミネコ
「怪しい??」

ミマサカ ミユキ
「そうなんです。何かこう男同士でこそこそしてて、実は……みたいな。」

スガワラ ミネコ
「あはははは!ミユキちゃん、それは無いわ。大丈夫。」

ミマサカ ミユキ
「えぇー!?何ですか!?」

スガワラ ミネコ
「サトウさん、既婚者よ?」

ミマサカ ミユキ
「はぁぁぁぁぁぁ!?!?」

サトウ シンヤ
「……って訳だ。この事件、何かある。」

フカザワ ユキヒコ
「何か給湯室の方、騒がしいですけど?」

サトウ シンヤ
「どうせミマサカだろ。アイツ、声だけはデカイからな。」

フカザワ ユキヒコ
「あ~、確かに……。」

スガワラ ミネコ
「はい、みなさ~ん。お茶とコーヒー、入りましたよ~。」

サトウ シンヤ
「ミネコさん、ありがとう。」

フカザワ ユキヒコ
「俺のコーヒー、いただきます。」

ミマサカ ミユキ
「お茶お茶~っと。」

スガワラ ミネコ
「緊急放送、どう?」

サトウ シンヤ
「もうそろそろ終わりじゃないか?何か画面の中ではバタついているが……。何だ?」

フカザワ ユキヒコ
「ん?……ロック……ダウン?」

ミマサカ ミユキ
「ロックダウンて何ですか?」

スガワラ ミネコ
「ロックダウンはね、ロックしてダウンしちゃうの。」

ミマサカ ミユキ
「え?」

サトウ シンヤ
「適当に言うのはやめてくれ。ロックダウンってのは……。」

フカザワ ユキヒコ
「都市封鎖。人の行動制限。事実上の都市機能の停止。」

ミマサカ ミユキ
「私たちどうなっちゃうの!?お仕事は?お給料は!?」

サトウ シンヤ
「ミマサカ、お前心配するとこそこかよ……。」

スガワラ ミネコ
「まぁでも無理もないわよ。経験した事ないんだもの。」

フカザワ ユキヒコ
「スガワラさん、随分と落ち着いてますよね?」

スガワラ ミネコ
「私ね、昔の話だけど……国際医療派遣団体に所属してたときがあってね。紛争とか災害とかで孤立したり身動き取れなくなるとかあったから。」

サトウ シンヤ
「ミネコさん、昔は凄腕の医療スタッフだったんだぞ?所長がその腕を見込んでDAIE(ディーエーアイイー)に引っ張って来たんだ。」

スガワラ ミネコ
「もう、昔の話よ。昔の。」

ミマサカ ミユキ
「そうだったんですか!?人はみか……。」

フカザワ ユキヒコ
「ミマサカさん。それ以上は言わない方がいい。それよりこれからですよ。これから。」

サトウ シンヤ
「放送が終わったら、所長から電話がかかってくるんだろ?」

フカザワ ユキヒコ
「放送、終わりましたね。」

ミマサカ ミユキ
「ロックダウン……。」

スガワラ ミネコ
「……はい、もしもし。あら所長~。今ね、所長の昔話してたんですよ?えぇ、そう。私が国際医療派遣団体にいた頃の。え?その話はまた今度?分かりました。ご要件は何ですか?みんないますよ?」

フカザワ ユキヒコ
「何か……所長も大変だな……。」

ミマサカ ミユキ
「毎回、なんかしら話してから本題に入るよね。」

スガワラ ミネコ
「ロックダウン?はいはい、言ってました。うん。……え?特別外出許可証?」

サトウ シンヤ
「何だ?俺たちは行動制限無しってか。」

スガワラ ミネコ
「はいはい。これから厚生労働省に?ご苦労さまです。みんなにも言っておきますね。はい、行ってらっしゃい。」

フカザワ ユキヒコ
「どういう事ですか?」

スガワラ ミネコ
「何かね、私たちには特別外出許可証が出るから、ロックダウン中でも行動制限無いんだって。」

ミマサカ ミユキ
「ここに、こればいいの?」

サトウ シンヤ
「何故、我々なのか考えろ。どう考えてもおかしいだろ。」

スガワラ ミネコ
「おかしい?」

ミマサカ ミユキ
「何がおかしいんですか?」

フカザワ ユキヒコ
「ロックダウンする。行動制限をかけるって事は、犯罪の抑制になるはず。それなのに何故か。何故俺たちには行動制限が無い?何かある。って事ですかね。」

サトウ シンヤ
「そうだな。都市封鎖、ロックダウンまでして何をさせようってんだ。」

ミマサカ ミユキ
「スーパーキラーT細胞の活動限界時間を稼ぐとか?」

フカザワ ユキヒコ
「そうか。それか!」

サトウ シンヤ
「死者の炙り出しか。」

フカザワ ユキヒコ
「サトウさん、言い方エグいです。」

スガワラ ミネコ
「あ、私も来なきゃ行けないんだわ。あら大変。」

ミマサカ ミユキ
「私たち、どうすればいいんですか?何にも出来なくないですか?ただご遺体(いたい)を解剖して、死亡検案書を書くくらいしか出来ないなんて。」

フカザワ ユキヒコ
「でも、そのご遺体の中にヒントが隠されているはずなんだ。」

ミマサカ ミユキ
「ご遺体(いたい)は何も喋(しゃべ)らないが、真実(しんじつ)を教えてくれる。ってやつ?」

サトウシンヤ「諦めるな!諦めたらそこで終わりだ!俺たちには、俺たちにしか出来ない事がきっとある。」

第1話 ロックダウン 終わり

第2話へ 続く


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