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2人声劇 想定5分『ボクらの終わらない時間』作 沖ママ

登場人物
来ヶ谷誠(くるがや まこと) : 男性
細田音瑠(ほそだ ねる) : 女性

来ヶ谷 誠
『やめろ!もういいだろ!なぁ!もう止めてくれ!』

細田 音瑠
「止める?何で?何で止めるの?」

来ヶ谷 誠
『もうじゅうぶんだろ!』

細田 音瑠
「まだだね。まだダメ。まだ、試してないことがある。」

来ヶ谷 誠
『こ、今度は……何をさせようって言うのさ。』

細田 音瑠
「ふふふ、このナイフでボクの心臓を一突(ひとつ)きにしてよ。」

来ヶ谷 誠
『……分かった。やればいいんだろ!やれば。』

細田 音瑠
「そう、やればいいのよ。さぁ、早く。」

来ヶ谷 誠
『うわああぁぁぁ!!!』

細田 音瑠
「ぐ……ゲホッ……。こ、今度こそ……ボクは……。」

来ヶ谷 誠
『やったか。。。心臓は!?と、止まった……。音瑠!音瑠!やったぞ!あはは、俺は遂にやったんだ!』

細田 音瑠
「……あ?何をやったって?」

来ヶ谷 誠
『そ、そんな……。う、嘘だ。嘘だろ……。うわぁぁぁぁ!』

細田 音瑠
「……あ~ぁ、内蔵ぐちゃぐちゃ。どうすんのよこれ。」

来ヶ谷 誠
『な、何でだよ。何で生きてんだよ!おかしいだろ!』

細田 音瑠
「ああ、おかしいよ。ボクの体……どうなってんのよ。心臓一突(ひとつ)きにされても、切り刻まれても生きてる!」

来ヶ谷 誠
『お、俺の……せいだ。俺が……。』

細田 音瑠
「そうだよ!誠が!誠がボクに変なクスリ飲ませるから!どんなに生きてたくなくても、生きてなくちゃならなくなったの!生かされてるの!誠に分かる?」

来ヶ谷 誠
『お、俺は何て事を……。』

細田 音瑠
「こうしてる間にも刺された心臓も、ぐちゃぐちゃにされた内蔵も再生してる。ボクは……ボクは生きてなきゃいけないの?ねぇ、答えてよ。」

来ヶ谷 誠
『あれからもう、何年経った?どんな外傷を加えても薬を飲ませても効かない。何でだ?』

細田 音瑠
「ねぇ、誠。あの日から年を取らなくなったボクがもし、30年の時間を一気に取り戻したらどうなるの?」

来ヶ谷 誠
「急激な身体の老化に脳が付いていけずにパニックを起こし、その機能を停止する、もしくは急激な身体の老化に体が、内蔵が耐えられなくなるかも……知れない。」

細田 音瑠
「このままボクを放っておいたら?」

来ヶ谷 誠
『そんな事したら音瑠、君は科学者や研究者のモルモットだぞ。』

細田 音瑠
「なんだ、今とそう変わらないじゃん。」

来ヶ谷 誠
『いや、それは違う!』

細田 音瑠
「何も違わない!」

来ヶ谷 誠
『ね、音瑠……。』

細田 音瑠
「ボクは年を取らない。でも誠、あなたは老いていくじゃない!どれだけ一緒に居たくても無理なの!あなたはあと何年生きられる?ねぇ、誠!」

来ヶ谷 誠
『もっと早くにこうすれば良かったのかもしれない。もっと早くにこうしていれば、君は苦しまなくて済んだのかも知れない。……俺も飲もう。あの薬を。』

細田 音瑠
「そんな事したら誠だって!」

来ヶ谷 誠
『俺は科学者だ!もし君と同じ様な事になったら、タイムマシンでも作って過去に行こう。そして、薬の開発を止める。そうすれば俺たちは、世界から……消える。』

細田 音瑠
「そしたら終われる?終わらせる事が出来る?」

来ヶ谷 誠
『何年かかるか、何十年かかるか、分かんないぞ!?いいのかよ、それでも。』

細田 音瑠
「いいよ。どれだけ時間がかかっても。ボクらの終わらない時間は……。」

来ヶ谷 誠
『進み続ける……。』

《 3秒開ける 》

細田 音瑠
『……そういう事!さ、飲んで!薬、早く飲んで!』

来ヶ谷 誠
『わ、馬鹿!急かすなよ!クッソ不味いんだぞ、この薬!』

細田 音瑠
「そんな不味い薬をボクに飲ませたのは誰だ!」

来ヶ谷 誠
『俺だよ!分かったよ!飲むよ!飲めばいいんだろ!』

終わり

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