4人劇シリーズ 想定15分 『思い出の1ページ①』 作 沖ママ

登場人物

松本 健吾 (まつもと けんご) : (男性)
中川 祐一 (なかがわ ゆういち) : (男性)
水瀬 七海 (みなせ ななみ) : (女性)
佐原 志保 (さはら しほ) : (女性)

ー以下本文ー

《教室のドアを開ける》

松本 健吾
「おはよ~。」

中川 祐一
「お、健吾。おはよ。」

水瀬 七海
「あ~、松本君。おはよう。」

佐原 志保
「今日もギリギリじゃないの。」

松本 健吾
「みんな、朝早いな~。」

中川 祐一
「お前が遅いんだよ。昨日も深夜か?」

松本 健吾
「まぁ、そんなところだ。」

水瀬 七海
「え?何?バイト?」

佐原 志保
「松本君、何か大変そうだね。」

中川 祐一
「高校生にもなれば色々あるよな。」

水瀬 七海
「そりゃそうかも知れないけどさ、2年になってから変わったよね。」

佐原 志保
「確かに。2年になってから時々、学校来ない日もあるし。1年の時はそんなこと無かったもん。」

中川 祐一
「まぁまぁ、コイツにも色々あるんだよ。」

佐原 志保
「中川君、何か知ってるの?」

水瀬 七海
「知ってんなら、吐きなさいよ。」

中川 祐一
「ダメだ。健吾に言うなって言われてるからな。」

佐原 志保
「もうすぐ私たちも進路決めなきゃ行けないんだからね。」

水瀬 七海
「そうだよ。このままじゃ松本君、成績もヤバいんじゃないの?」

中川 祐一
「そうかも知れん。そうだな……。」

松本 健吾
「祐一!」

中川 祐一
「と、言うことだ。俺からは何も言えん。」

佐原 志保
「もうそろそろ、授業始まっちゃうから、またね。」

水瀬 七海
「もうそんな時間!?ヤバっ!」

中川 祐一
「そんじゃ~ね~。」

松本 健吾
「授業終わったらな。」

中川 祐一
「健吾、夏休み前に言っといた方がいいんじゃないか?」

松本 健吾
「分かってるよ。」

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《授業後》

中川 祐一
「さぁて、授業終わったぞ!」

水瀬七海
「話してもらいましょうか。」

佐原 志保
「そのために集合したからね。」

松本 健吾
「お前ら、何なんだよ。そんなに聞きたいのか?」

水瀬 七海
「そりゃあ、気になるよね、ね?」

佐原 志保
「なるなる。」

中川 健吾
「何だかんだ、心配してんだよ。」

松本 健吾
「しゃあない、話すわ。」

中川 祐一
「良し、聞こう。」

松本 健吾
「実はさ。俺、今1人暮ししてんのよ。」

水瀬 七海
「は?」

佐原 志保
「1人暮し!?」

松本 健吾
「両親が離婚してさ、親父は単身赴任先にそのまま居るし、お袋は実家帰っちまってな。」

中川 祐一
「んで、住んでた家を譲り受けた訳だ。」

松本 健吾
「もともと、親父名義の家だったんだけど、俺はまだ未成年だから名義変更出来ん。だから成人したら名義変更して俺の持ち家になるって事だ。」

水瀬 七海
「そんな状況だったの?」

佐原 志保
「で、何でバイト漬けなのよ?」

松本 健吾
「学費、自分で稼がないといかんくなった。それが両親が離婚した時に、ここに残る事を選んだ俺に突きつけられた条件。」

中川 祐一
「普通なら、どちらかの親に付いていくんだけどな。」

松本 健吾
「そんなことしたら転校しなきゃならんだろうが。」

佐原 志保
「え?ってことは……。」

水瀬 七海
「転校したくなくて条件飲んだの!?」

松本 健吾
「あぁ、そうだよ。悪いか!」

中川 祐一
「コイツ、馬鹿だよね~。普通、転校するだろうにさ。」

松本 健吾
「うるせぇな、俺の人生なんだ。別にいいじゃねぇか。」

水瀬 七海
「へぇ~、なるほどねぇ……。」

佐原 志保
「でも、それで出席日数とか赤点とかで留年したり退学したら何にもなんないじゃん。」

松本 健吾
「出席日数は何とかなる……はず。あとな、悪いけど俺、赤点取った事ないぞ?」

水瀬 七海
「えぇ!?マジで!?」

中川 祐一
「マジなんだよなぁ。コイツ、地頭良いからテストはいい点取ってるよ。」

松本 健吾
「祐一、お前それ言うなよ。」

中川 祐一
「いいじゃん、別に~。」

佐原 志保
「私立じゃなくて良かったよね、ホントに。」

松本 健吾
「ホント、それな。私立だったら無理だったわ。」

水瀬 七海
「でもさ、これからどうすんのよ?」

松本 健吾
「どうするって?」

佐原 志保
「学費、ちゃんと払えるの?」

松本 健吾
「任せとけ。3ヶ月分前払いしてある。あとは夏休みの間に稼げれば、今年の分は何とかなる。」

中川 祐一
「ホント、健吾は馬鹿だよな。俺も聞いた時は何言ってんだコイツって思ったもの。」

水瀬 七海
「ホントに馬鹿よ馬鹿。何で今まで黙ってたのよ。」

佐原 志保
「そうだよ。言ってくれたら良かったのに。」

松本 健吾
「こんな話、言える訳ないだろう?俺だってどうしていいか分かんなかったんだから。」

佐原 志保
「ご両親の離婚の話はどうしようもないけど、何か出来るかも知れないじゃん。」

水瀬 七海
「学費稼ぐ手伝いとか何かあるじゃん?」

中川 祐一
「俺たち、学生なんだぞ?どうやって学費稼ぐんだよ。」

水瀬 七海
「カ、カンパとか……バイトとか?」

松本 健吾
「頼むからそれだけはやめてくれ。」

中川 祐一
「カンパとかさ、俺も考えたよ。でもカンパは一時的なものだからさ。」

松本 健吾
「そうだ。カンパは一時凌ぎにしかならん。それに、みんなに申し訳無い。」

水瀬 七海
「そんなこと言ったって、このままじゃ、じり貧じゃん?これからどうすんのよ?ってか祐一!」

中川 祐一
「え?俺!?」

水瀬 七海
「あんた、何で黙ってたのよ!」

松本 健吾
「俺が黙っててくれって頼んだんだ。祐一は悪くない。」

中川 祐一
「……まぁ、そうだけど。」

水瀬 七海
「何にも出来ないの?」

中川 祐一
「俺は、金は出せない。だからメシとかその辺はな。」

松本 健吾
「マジで助かってるよ。食い物あるのは助かる。」

水瀬 七海
「物(もの)ならいいのね?」

松本 健吾
「金を直接もらうのは重すぎるし、人としてどうかと思うんだよ。」

水瀬 七海
「援助物資届けるわ。」

松本 健吾
「それなら、受け取らせてもらう。」

佐原 志保
「ねぇ、ちょっといい?」

中川 祐一
「佐原?どうした?」

佐原 志保
「松本君、修学支援制度は申請してないの?」

松本 健吾
「修学支援制度?何だそれ?」

佐原 志保
「修学支援制度ってのはね……ちょっと待って……。」

水瀬 七海
「もしかしてアレ?」

中川 祐一
「アレってなんだよ。」

水瀬 七海
「アレはアレよ!何だっけ、ほら。奨学金制度みたいな?」

佐原 志保
「まぁ、簡単に言えば奨学金制度なんだけど、あった。これこれ。これ見て。」

松本 健吾
「奨学金って大学とか専門学校だけじゃないのか。」

佐原 志保
「そう、高校生でも受けられるの。基本的に一般的な高校生は住民税非課税世帯だし、支援を受けられる枠は広がってるみたいだから申請したらいけるかも。」

中川 祐一
「佐原……すげぇこと知ってんのな。」

水瀬 七海
「私、何言ってるのかよく分かんないけど、大丈夫そうって事?」

佐原 志保
「可能性はゼロじゃないって事。それに、うちの周り親戚多くて。親同士が話してるの聞いた事あったから。」

松本 健吾
「佐原!」

佐原 志保
「え、な……なに?」

松本 健吾
「その修学支援制度っての、詳しく教えてくれ。」

佐原 志保
「う、うん。私も少し聞いたくらいで詳しくないけど、こういう事なら協力出来るかも。」

松本 健吾
「まずは、制度について調べないとか。」

佐原 志保
「そうだね。一緒に調べようか。」

《しばらくの間》

中川 祐一
「なぁ、七海(ななみ)。」

水瀬 七海
「な、何よ……改まって。」

中川 祐一
「あの2人、お似合いじゃね?」

水瀬 七海
「あら、珍しく祐一と意見が合うわね。」

中川 祐一
「何だ、お前もそう思ってたのかよ。」

水瀬 七海
「そりゃあねぇ、分かるよ。祐一だって、気付いてんでしょ?」

中川 祐一
「どっちも本音、言わねぇからなぁ。」

水瀬 七海
「ねぇ祐一。松本君、大丈夫だよね?」

中川 祐一
「大丈夫だろ。アイツは馬鹿じゃない。不器用なだけだ。」

水瀬 七海
「それならいいんだけど。ようやく、やっと……か。」

中川 祐一
「いつからだ?」

水瀬 七海
「え?志保の事?」

中川 祐一
「ずっとなんだろ?」

水瀬 七海
「そうだねぇ、中学の時からだから。一途だよねぇ。高校も同じ学校に行くんだって頑張ってたもん。」

中川 祐一
「上手くいくといいな。」

水瀬 七海
「志保なら大丈夫よ。私が保証する。」

中川 祐一
「そっか。」

《しばらくの間》

松本 健吾
「佐原、ちょっと待ってくれ。」

佐原 志保
「ん?なぁに?」

松本 健吾
「奨学金制度が修学支援制度になったのは分かった。でも奨学給付金って何種類かあるぞ?」

佐原 志保
「あ~それはね、奨学給付金って言うのは親が申請するの。で、修学支援金っていうのは、親の収入によって学校に直接、授業料とかが支払われるの。教育支援金って言うのは、授業料以外の教育費の支援が得られるのよ。でも、これらは奨学金制度じゃない。」

松本 健吾
「ん~?分からんくなって来た。どういう事だ?」

佐原 志保
「給付してもらう修学支援制度と、奨学給付金制度は別のものなの。」

松本 健吾
「高校生でも何か色々と受けられるものもあるんだな。」

佐原 志保
「うん、例えばこれ見て。高校生が受けられる支援として、就学支援金、高校生奨学給付金とかあるよ。」

松本 健吾
「ホントだ。なるほど、親の収入とかが関係するのか。」

佐原 志保
「松本君の場合は、親権はどっち?」

松本 健吾
「親父だな。」

佐原 志保
「あっ、でも就学支援金は入学時に申請しないとだ。」

松本 健吾
「って事は、就学支援金はダメか。」

佐原 志保
「うん……。あとは公益財団とか都道府県とかの給付金が受けられるかどうかだね。」

松本 健吾
「難しくなってきたな。」

佐原 志保
「諦めたらそこで終わりだよ。可能性があるなら、それに賭ける。」

松本 健吾
「あ、あぁ。佐原も一生懸命になってくれてるんだもんな。頑張んなきゃ。」

佐原 志保
「松本君はさ……。」

松本 健吾
「ん?どした?」

佐原 志保
「何で転校、しなかったの?」

松本 健吾
「それはほら、みんなここに居るし。」

佐原 志保
「そこに私も入ってる?」

松本 健吾
「あ、当たり前だろ。何突然言い出すんだよ。」

佐原 志保
「ちょっと、気になって……。」

松本 健吾
「あ、うん。そっか……。」

水瀬 七海
「おふたりさーん!」

松本 健吾
「うわっ。水瀬、何だよ!?」

水瀬 七海
「盛り上がってるとこ悪いんだどさ、そろそろ帰らない?」

中川 祐一
「そうそう、結構遅くなっちゃったよ?」

佐原 志保
「あ、もうこんな時間なんだ!?」

松本 健吾
「やっべ!夜のバイト行かなきゃ!良し、帰るぞ!」

水瀬 七海
「志保、どう?」

佐原 志保
「な、何!?どうって……?」

水瀬 七海
「んもう、松本君。いい感じ?」

佐原 志保
「七海!?……ま、まぁ……。」

中川 祐一
「健吾、頑張れよ!」

松本 健吾
「おう!今日はありがとな!」

中川 祐一
「さてさて、我々も帰りますか。」

水瀬 七海
「そうだね~帰ろ~。」

佐原 志保
「中川君も、七海も、またね。」

終わり

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