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2人声劇 想定5分『花火を見下ろすあの星と君』作 沖ママ

登場人物
斗真(トウマ)
夏海(ナツミ)

《夏海の夢の中》

斗真
『夏の夜空に浮かぶあの大三角形。君にも見えるだろ?』

夏海
「えぇ、綺麗。私、あのほら。あの星が好き。こと座のベガ!」

斗真
『俺は……白鳥座のデネブかな。』

夏海
「え~?わし座のアルタイルもカッコイイじゃん?」

斗真
『何言ってんの?白鳥って羽を広げたら天使みたいだろ?』

夏海
「ロマンチストみたいなこと言っちゃって~。」

斗真
『いいじゃねぇかよ、ロマンチストでも。』

夏海《泣きながら》
「私、今日のこと、絶対に忘れない!」

斗真
『な、なんだよ突然。ほら、涙をふいて。』

夏海《ぐずぐず》
「うん。……もうすぐお別れ……なんだもん。嫌だよ。」

斗真
『またすぐに会えるさ。』

《夏海、夢から覚める》
《バン! 机叩く》

夏海
「んぁ!?何時!?……3時!?……あれ、夢だったんだ。」

斗真
『おい、夏海!夏海!』

夏海
「は、はい!なぁに?」

斗真
『大丈夫か?』

夏海
「えぇ、まぁ。何とか。」

斗真
『疲れてんじゃないのか?もういっそ辞めちゃってもいいんだぞ。』

夏海
「そういう訳にも行かないのよ。」

斗真
『そんなもんかねぇ。』

夏海《独り言 小さめ》
「これまで何度だってつまづいて来た。でもその度に這い上がって来たの、私は。あの夢の彼、誰だったんだろ。もぅその姿を思い出すことも出来ないや。」

斗真
『夏海!おーい、夏海!』

夏海
「んぇ!?」

斗真
『ホントに大丈夫かよ?今日の約束、忘れんなよ?』

夏海《眠そうに》
「あ、うん。仕事終わったら連絡して。私は少し仮眠する~。」

斗真
『ったく、まぁいいけど。そっちは終わってないのか?』

夏海
「6時から打ち合わせ~。」

斗真
『仮眠室、鍵かけとけよ。んじゃ俺は行ってくるから。』

《間を開ける》
《夏海の夢の中》

夏海
「好きなんです!仕方ないんです!」

斗真
『困るなぁ。君のことは好きだが、君を幸せにすることは出来ない。』

夏海
「え!?……は、花火!?」

斗真
『夏の夜空に咲くどんな綺麗な花火だって、夜空に浮かぶ星たちが見下ろしてる。だから、僕らのことも、きっと星たちが見ていてくれるよ。例え君がどんな君であっても、僕は……絶対に忘れない!』

夏海
「斗真!」

斗真
『サヨナラだ。』

《夏海、夢から覚める》
《バン! 机叩く》

夏海
「……夢……?あっ、打ち合わせ!」

《斗真、夏海に電話》

斗真
『ん~、夏海のヤツ、どうしたんだろ?』

夏海
「……もしもし!斗真!?ごめん!打ち合わせ長引いちゃって!」

斗真
『なんだ、そうだったんだ?来れそうか?』

夏海
「うん!今から行く。」

斗真
『おぅ、もう花火始まってるぞ。早く来いよ。』

《夏海 お祭り会場へ》

斗真
『おーい!夏海!こっちだこっち!』

夏海
「はぁはぁ、お待たせ~。ごめんね、遅くなっちゃって。もぅ花火終わっちゃった!?」

斗真
『まだ1時間くらいあるだろ。』

夏海
「え~ほんとに?」

斗真
『それに、花火は綺麗だけど、スグに消えて無くなっちゃう。でも今、俺の隣に居てくれる君は赤色の菊の花だ。なぁ、僕じゃダメか?』

夏海
「え?」

斗真
『ば~か。2度も言わせるな。』

夏海
「だって……。花火と菊の花、かけてるんでしょ?」

斗真
『そうやって解説するとこ、嫌い。』

夏海
「いーじゃーん。あとさ、赤色って意味、分かってる?」

斗真
『あなたを愛しています。だろ?』

夏海
「ば、ばか。面と向かって言わないでよね。」

斗真
『花火よりも、俺は夏海。お前を見ていたい。』

夏海
「こうやって抱きしめられて……夢を見ているようで、でも大好きで仕方ないの 。」

斗真
『なぁ、見てみろよ。』

夏海
「ん?なぁに?」

斗真
『あの空に浮かぶあの大三角形を。どんな綺麗な花火だって、夜空に浮かぶ星たちが見下ろしてる。』

夏海
「えっ?それって……。」

斗真
『ちゅっ。ばーか。隙だらけなんだよ!』

終わり

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