新・沖ママカーニバル2023 第5幕 『地球最後の日』
・登場人物
次郎(ジロー) : 男性
颯太(ソウタ) : 男性
奏(カナデ) : 女性
絵里(エリ) : 女性
設定・あらすじ
地球が終焉を迎える。そんなハズがない。いやしかし、各メディアは地球最後の日を1日、1日とカウントダウンしていた。地球最後の日まであと30日。街に住む人、メディア、ネットまでもがその異常さを理解出来ずに誰一人として信じてはいようだった。ある預言者の預言はハズレた。ある人格者の提言は見捨てられた。それでも地球は生き残った。だからこそ、また今回も大丈夫。今まで大丈夫だったから大丈夫だと、そう受け取る事が出来る。しかし、世界は、地球は着実に最後の日を迎えようとしていた。取り残された4人。たった4人で何が出来るのか?そして迎える地球最後の日。果たして4人の運命は?
-以下本文-
次郎
『地球が終焉を迎えるってどういう事だ!?』
颯太
『穏やかな話では無いが、どうやらそういう事になっているらしい。 』
次郎
『奏と絵里は、どう思う?』
奏
「どう思うって言われても……。」
絵里
「私たち以外は、信じてるよね。」
颯太
『分からないのはそこなんだよ。何故、俺たち以外の人々は信じているのか。』
奏
「そういう世界だとしたら?」
颯太
『どういう事だ?』
奏
「ここは、私たちの居た世界では無い世界。だとしたら?」
颯太
『……パラレルワールド?』
奏
『そう。私たちの元々いた世界と瓜二(うりふた)つの世界。でもこちらの世界では今、世界の終焉(しゅうえん)を迎えようとしている。』
颯太
『にわかには信じられないが、周囲の状況がものがたってはいるな。』
絵里《小声》
「ね、次郎。言ってる事、分かる?」
次郎《小声》
『全く分かんねぇ。』
絵里《小声》
「だよね、どうする?」
次郎《小声》
『どうしようもないだろ……。』
颯太
『次郎!おぃ!次郎!』
次郎
『あ、俺か!?あはは、どうした?』
颯太
『どうした、じゃねぇよ。お前の意見が聞きたいんだが?』
次郎
『俺の意見なんて聞いてどうする?今だって、言ってる事分かんねぇよなって絵里と話してのに。』
颯太
『次郎、お前は気付いてないのかも知れないから言っておく。お前は昔から俺たちとは違う感覚や考えを持ってる。』
次郎
『な、なんだよ突然……。』
奏
「次郎にはずっと前から驚かされてきたわ。」
次郎
『か、奏まで……。』
颯太
『見えてんだろ?未来が。』
絵里
「えー!?そうなの!?」
奏
「思い出してみて。体育祭との時も、文化祭の時も、いつも誰よりも異常な程に必死だった。それは何故?結果を知っていて、運命に抗おうとしたんじゃないの?」
颯太
『文化祭の打ち上げでもお前は言っていた。あの場所には縁があると。やっぱりまた来ることになったと。そして何より、あの場所が何故、見えていたのかだ。』
絵里
「え?どういう事?ふたりとも、何を言ってるの?」
奏
「これまでの事をずっと思い出してた。次郎と一緒に過ごした時間をずっと遡(さかのぼ)ってた。そしたら、気付いたの。次郎は、ずっと先回りして私たちを導いてた。」
颯太
『俺が言ったのは、あの場所の問題だ。奏ほど付き合いが長い訳では無いからな。文化祭で打ち上げをやったあの神社、俺たちが再び待ち合わせをしたあの神社。どこにも存在してないんだよ。どの地図にも、文献にも、一切出てこない。』
絵里
「じ、次郎……。」
次郎
『あと30日だ。30日。30日後に、地球は最後の日を迎える。どういう事か分かるか?分かんないんだよ!最後の日を迎える事は分かってる!でも、どうなるかも、どうしていいかも分かんないんだよ!なぁ、俺はどうしたらいい?どうしたらこの運命を変えられる?』
颯太
『それじゃ、巷(ちまた)で言われている地球滅亡論は正しいのか。そんな馬鹿げた話が……。』
奏
「次郎の言う事が正しいとしたら、あと30日で地球が終わる……。」
絵里
「そんな!?まだ私たち、何もしてない!まだ学生だよ!?卒業も恋もデートも結婚も、何にも出来ないの!?」
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《間を空ける》
颯太
『次郎、お前はこれまでどれだけの矛盾を繋いで来た?お前はどれだけ世界の理(ことわり)を紡(つむ)いできた?』
次郎
『言えばキリがない。ガキの頃からだからな。俺に関われば不幸になる。何故なら、この世の理(ことわり)を紡(つむ)ぐには、必ず代償が生じる。その代償は俺自身か、周囲に影響があるか、どうなるか分からない。だから俺は色々なものを遠ざけてきた。』
奏
「私とは?私の事は!?」
次郎
『奏……。君は本当に真っ直ぐで、穢(けが)れを知らない存在だった。人間はな、生まれながらにして様々な能力を持っているんだ。奏は癒し。だな。』
奏
『癒し?私が?』
次郎
『そうだ。だから俺が小さい頃からずっとそばに居てくれて感謝している。奏が居なければ、俺は今もこうしてここには居ないだろうよ。』
奏
「だったら、私が!」
次郎
『ダメなんだよ!このままじゃ、奏が、奏が……。』
颯太
『なるほどな。だから敢(あ)えて奏から離れた訳か。』
奏
「そんな!?」
絵里
「それが強制力?次郎がこの世の理(ことわり)を繋ぎ変えたから。」
颯太
『まぁ、簡単に言えばそういう事だな。次郎が奏から離れる代わりに、奏に降りかかる厄災(やくさい)から救った。』
絵里
「って事はさ、次郎が私たちと関わっているのはこの世の理(ことわり)を繋ぎ変えるのに必要だから?」
奏
「絵里!そんな言い方しなくてもいいじゃない!」
絵里
「奏、ごめんて。頭の中で理解出来なくてさ。」
颯太
『どうなんだ、次郎?』
次郎
『お前たちと出会った最初は、これで俺も救われると思ったのは事実だ。奏は癒し。絵里は浄化と再生 。颯太は神器(じんき)。』
絵里
「浄化と再生……?」
颯太
『俺が、神器(じんき)だと?』
次郎
『だから俺はお前たちと一緒にいた。でもな、それは最初だけだ。たくさん話して、たくさん笑って、たくさん泣いて。未来が見えていようが、結果がどうだろうが、お前たちといる時間は幸せだった。楽しかったんだ。』
奏
「次郎、運命は変えられないの?」
絵里
「そうだよ、私たちと居れば救われるんでしょ?これまでも変えてきたんでしょ?」
颯太
『次郎、残された時間で何が出来る!?』
次郎
『すまん、考えさせてくれ。地球最後の日まで、あと15日だ。』
絵里
「あ、次郎!ちょっと待ってよ!どこ行くの!」
《間を開ける》
颯太
『どう思う?』
奏
「え……次郎の事?」
颯太
『ああ。』
奏
「何とかなるでしょ、多分。」
颯太
『信じてるのか?』
奏
「そりゃあ、まあ。幼なじみだし。」
颯太
『なぁ、奏。』
奏
「言わないで!お願い。それ以上は言わないで。私は1歩も動けなかった。いや、動かなかった。それだけなの。」
颯太
『お祭りの時も言ったろ?我慢しなくていいんだ。強がらなくていい。』
奏
「颯太……ありがとう。私、最低だよね。」
颯太
『ばーか。言わなくていいんだよ。俺はこうしたくて、こうしてるんだ。』
奏
『颯太は、そうやって女の子を口説いてるのね。私もコロッと行っちゃうところだった。危ない危ない。』
颯太
『なっ……そんな事ある訳ないだろ!俺は、俺は奏が好きだから!ずっと好きだから!だから……。奏だけなんだ。』
奏
「あ~ぁ、言っちゃった。そこまで言うんだったら、ちゃんと責任、取ってもらうからね。」
颯太
『奏!それって!』
奏
「さぁ、どういう事かなぁ。」
颯太
『あと15日で本当に世界は終わっちまうのかよ。』
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《場面転換 間を空ける》
絵里
「次郎!次郎ってば!」
次郎
『……何だよ。』
絵里《蹴りとばす》
「いつまで寝てんのよ!」
次郎
『痛ってぇ!蹴らなくてもいいだろ?寝起きで蹴るやつが居るかよ!』
絵里
「残念でした、ここに居ます~。」
次郎
『で?何だ?』
絵里
「朝ごはん、食べよ。」
次郎
『朝メシか。。。なぁ、絵里。』
絵里
「朝からはダーメ。朝はちゃんとご飯食べるの。」
次郎
『ちぇ~。分かったよ。夜まで我慢する。』
絵里
「よしよし、偉い子ねぇ。お姉ちゃんがぎゅ~ってしてあげる。」
次郎
『あ、そうだ。今日行きたいとこあるんだよ。』
絵里
「あーん、もぅ。で?行きたいとこ?」
次郎
『そ、斑鳩(いかるが)の里。』
絵里
「何それ?聞いたことない。」
次郎
『まぁ、そうだろうな。俺も行ったことない。』
絵里
「次郎も行ったことないの?」
次郎
『あぁ、ただ何だろ。昨日の夜の……で、ほら。夢に出てきたんだよ。それだけは強烈に覚えてる。だから多分、呼ばれてるんだと思うんだ。』
絵里
「もぅ、夜の事は言わなくていいから!で、すぐ行く?」
次郎
『あぁ。もう時間が無い。地球最後の日まであとは5日しかないからな。颯太と奏には連絡しておく。』
絵里
「現地集合なの!?」
次郎
『しゃあないだろ。向こうには向こうの事情がある。俺たちだって一緒だ。』
絵里
「あ、まぁ、そうだね。分かった。私もすぐ準備するから。」
《場面転換 間を空ける》
颯太
『奏……。』
奏
「颯太……。」
颯太
『これで、良かったのか?』
奏
「うん。良かったんだと思う。今、すっごい幸せだもの。」
颯太
『奏……。俺もだ。』
奏
「ふふふ、颯太ったら……。ホントにカッコ良くなっちゃって。」
颯太
『奏だって、綺麗だよ。』
奏
「ホント、上手いなぁ。」
颯太
『そんな事ないさ……。ん?次郎から連絡だ。もしもし、どした?』
次郎
『颯太!今、斑鳩(いかるが)の里に向かってるんだが、ふたりとも来てくれ!?』
颯太
『ふたりって……。知ってたのかよ。』
次郎
『俺を、誰だと思ってんだ?』
絵里
「あ、颯太?おはよー!」
次郎
『あ、絵里。邪魔すんな!』
絵里
「あはは、次郎が怒ったー!」
颯太
『随分と賑やかだな……。』
次郎
『とにかく、そういう事だから!詳しい場所は後で送る!じゃあな!』
颯太
『分かった分かった、行けばいいんだろ。行くよ。』
次郎
『おぃ、絵里!お前、ちょろちょろすんな!』
奏
「次郎、何だって?」
颯太
『斑鳩(いかるが)の里に来て欲しいって。』
奏
「斑鳩(いかるが)の里?」
颯太
『詳しい場所はまた送ってくれるらしい。あちら様ご一行は既に向かっている様だよ。』
奏
「そっか。次郎、絵里と上手くやってるんだ。」
颯太
『奏は、大丈夫かい?』
奏
「大丈夫よ。さぁ、準備して行きましょ。私たちの未来の為に。」
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《場面転換 間を空ける》
次郎
『ここか……。』
颯太
『ここに何があるんだ?』
絵里
「パンフレットによると、遺跡があるみたいだね。」
奏
「遺跡?遺跡と何か関係があるのかしら。」
次郎
『それは俺にも分からん。行ってみて、確認するしかないな。』
颯太
『この里に眠る民は、始祖(しそ)の民だからな。もしかしたら何か関係があるのかも知れん。』
絵里
「どうする?このままグルっと回ってみる?」
奏
「そうね。それもいい……。」
《地震のような揺れ》
次郎
『な、なんだ!?』
颯太
『地震か!?』
絵里
「すっごい揺れ、捕まってないと!」
奏
「捕まってても、む、無理……。」
颯太
『奏!』
次郎
『絵里、お前も捕まれ!ほら、早く!』
絵里
「じ、地面が!?次郎!」
次郎
『絵里!早く!』
颯太
『奏、大丈夫か!?』
奏
「な、何とか。」
次郎
『治まった……のか……?』
颯太
『それよりここから早く逃げよう!』
次郎
『そうだな。奏も絵里も大丈夫か?』
奏
「な、何とかっ。」
絵里
「大丈夫……。えっ……。」
《地震のような揺れ》
颯太
『奏!手を!俺の手を掴んで!早く!』
次郎
『絵里!絵里!そんな!?こんな事あっていいのかよ!?』
颯太
『足場が耐えられなかったんだ!早く引き上げて逃げるぞ!くっ、なんだ?風!?』
奏
「何が起こってるの!?」
次郎
『分からん!とにかく、引き上げるから待ってろ!』
絵里
「次郎……。このままじゃ、助から無いよ!みんな助からない!」
次郎
『馬鹿野郎!全員でここから出るんだよ!』
奏
「颯太、手を離さないで!」
絵里
「次郎!お願い!みんなを助けて!」
次郎
『なんで……なんでだよ……。』
絵里
「ごめんね……サヨナラ……。」
颯太
『ダメだ!行くなぁぁぁ!』
奏
「お願い!手を……離さないで!」
次郎《ナレーション》
『地球最後の日まであと……2日。』
颯太
『地球最後の日まであと……1日。』
絵里
「地球最後の日まであと……0日、」
奏
『4人がこの後どうなったのか、それは誰も知らない。』
終わり
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