2人劇 幕間 『人の子と神と』(4幕と5幕の間) 想定10分

🖊沖ママカーニバル 幕間

幕間 『人の子と神と』
(4幕と5幕の間)

登場人物:cast
神官 cast. (男性)
女神 cast. (女性)

《女神 ナレーション》
※これから行われるのは声劇です。
宗教や信仰(しんこう)を斡旋(あっせん)するものでも否定するものでもありません。
演劇としてお楽しみ下さい。

《神官 ナレーション》
神に仕え神を敬う神官の、懺悔(ざんげ)の物語。無力な神官の懺悔(ざんげ)とは何か。
神は神官の懺悔(ざんげ)をどう受け止め、導くのか。神官と神の物語。

《女神 ナレーション》 
幕間 人の子と神と

神官
『あぁ、神よ。罪な私をお許し下さい。』

《しばらくの間》

神官
『か、神よ!偉大なる神よ!私の罪を、どうか、どうか!お許しを!』

女神
「あー、うるさい!誰だ!?私の昼寝を邪魔する罪深き罪悪人は!……ん?なんだ、お前か?お前が私の貴重な貴重な昼寝の邪魔をしたのか!?」

《しばらくの間》

女神
「おい、何とか言え。ただ腰を抜かして口をパクパクさせていては話にならぬ。お前、何者だ?」

神官
『わ、私は!私は旅の神官にございます。』

女神
「なんだ?喋れるじゃないか。ということは、だ。それなりに高位なのだな。」

神官
『こ、好意などと!?そんな!私は神に仕える身でございます。そ、そんな好意など!?』

女神
「私と言葉が交わせるとは、それなりのハズなのだが……まぁ良い。で?何を慌てておる?私はただお前が人間の中では高位の神官なのだろうと言っている。」

神官
『高位の神官……。あぁ!?高位!地位の事でございますか!?あぁ、そ、それはまぁ、それなりに……なんと、言いますか……。』

女神
「おい、神官。私はな、暇では無い。」

神官
『は、はい……。神、ですからね。色々とご苦労が耐えない事とは思っております。』

女神
「うむ。話が分かれば良い。で、お前……何用なのだ?先程から、わめいているが?」

神官
「そ、そうなのです!私は、私は罪を犯しました。その、懺悔(ざんげ)にございます。」

女神
「はぁ~……、帰れ。」

神官
『は?今、何と?』

女神
「帰れと言ったのだ。耳は付いているだろう?聞こえておるのだろう?ならば帰れ。即刻(そっこく)帰れ。ん、これで良し。」

神官
『神よ!それではあんまりではございませんか!?私の、私の罪はどうしたら許されるのです?』

女神
「知らん。」

神官
『え?』

女神
「知らんと言ったのだ。聞こえぬか?お前、頭は大丈夫か?」

神官
『いや、神ともあろうお方が懺悔(ざんげ)に来た者を帰れとは。ちょっとその、聞いたことないなぁ……と。』

女神
「面倒臭い。」

神官
『面倒臭い?』

女神
「人間はいつもそうだ。勝手に罪を犯しては神に許しを請(こ)おうとする。神目線で言わせてもらえばな、そんな些細(ささい)なことはどーでもいい。」

神官
『か、神に……見放されたのか……。私は。私の罪が深いばかりに……。あぁ、何と言うことだ……。神に見放されたとなれば私はこれから何を信じて行けと……。』

女神
「おーい。聞こえてるのかー?おーい!」

神官
『あぁ!神をないがしろにするとは私はまた、なんという罪を!』

女神
「お前……かなり面倒臭いな。」

神官
『はい。よく言われます。』

女神
「聞けばいいのだろ?聞けば。」

神官
『聞いてくださるのですか!?』

女神
「お前、懺悔(ざんげ)の内容を話すまで帰らぬのだろう?ならばさっさと話せ。」

神官
『私は、罪を犯しました。ここに来る途中、飢えている子供、その親、また怪我をしている市民を救えなかった。』

女神
「お前、神官だろ?医者じゃないだろ?それはどうやっても無理。」

神官
『そればかりではありません。息も途絶えそうな市民を見て、私は……私はあろう事か、気持ち悪いと思ってしまったのです。』

女神
「死ぬ間際だからな。それは仕方ないかもな。死ぬ間際の人間は醜(みにくい)いものだ。うむ。」

神官
『その後、商店から食べ物を盗む盗っ人を見逃しました。何も出来なかった。神に祈る事しか私には出来ませんでした。』

女神
「それが神官の務めだからな。」

神官
『私は……私はどうしたらいいのですか!?神に仕え、神に従い生きて来ました。でも、でも何も出来ない。何も救えない。それでも神は、私に神に仕えよとおっしゃるのか!いっそ私など死んでしまえばいい!』

女神
「ならば、死ね。今すぐここで。神である私がその死を見届けよう。」

神官
『……え?今すぐ……ここで、死ねと。』

女神
「その方が楽だぞ?ウジウジ悩まずに済む。」

神官
『えっと……それは、ちょっと……。』

女神
「なんだ?未練(みれん)があるのか?このような、すさんで生きる価値などないような世界で生きて何になる?ならば死ねばいい。」

神官
『か、神から死ねと言われるとは……。』

女神
「ただし、未練があるのなら生きろ。身勝手に死ぬ事は私が許さん。」

神官
『神よ……私は……。』

女神
「いいか、人の子よ。信仰(しんこう)など目に見えるものでは無い。神を崇(あが)めたところで飯は食えぬ。生きては行けぬ。だがな、信仰(しんこう)は心を救うやもしれぬ。」

神官
『心を……救う?』

女神
「そうだ。人の心というのはもろく、弱い。すぐに闇に染まり、闇に堕ちる。だからこそ、お前のような神官が必要なのではないのか?なぁ、神官よ。お前は、闇に染まる人々に光を照らす存在として生きたいのではないのか?」

神官
『た、確かに……。人の心は闇に染まりやすい。私が、私が光を灯せば……救える。私が、人を救えるのか。』

女神
「分かったらさっさと行け。このようなところで懺悔(ざんげ)している暇はなかろう。」

神官
『神よ!その御心(みこころ)の広さに感謝いたします。それでは!』

女神
「行った……か。人とは難儀(なんぎ)なものよ。何故に悩み、何故に嘆(なげ)くのか。自らの行いを省(かえり)み、自らを奮(ふる)い立たせ、自らの意思で、足で、歩くことが出来ように……。さて、私は寝るとしよう。しばらくの間、さらばだ。か弱き人間よ。」

終わり


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