4人劇シリーズ 想定15分『2人の刑事①』 作 沖ママ
登場人物
田村刑事 (男性)
佐藤刑事 (女性)
秘書 石川 (男性)
社長 奈良原 (女性)
《社長である奈良原のオフィス》
警備員 石川
『……社長、これ……どうします?』
社長 奈良原
「どうします?じゃない!どうにかしなさい!その為にあなたを雇ってるんですから!」
秘書 石川
『……分かりました。では、私はこれで。』
社長 奈良原
「頼んだわよ、石川。」
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田村刑事
『佐藤刑事、通報があったのはこのビルか?』
佐藤刑事
「はい。この奈良原ビルですね。」
田村刑事
『で?通報の内容は?』
佐藤刑事
「それが、良く分からないんです。」
田村刑事
『良く分からない?どういう事だ?』
佐藤刑事
「緊急指令室からの報告ですが、どうやら内部通告の様でして。とにかく一度調べて欲しいとの事です。」
田村刑事
『そんなこと言われてもな。令状がないんじゃ、任意での事情聴取くらいしか出来んぞ。』
佐藤刑事
「だから、我々に声がかかったんだと。」
田村刑事
『ったく、めんどくせぇな。こんな案件ばかり回して来やがって。刑事部長に文句言ってやる。』
佐藤刑事
「それはやめて下さい。周囲の捜索して中に入りますよ?」
田村刑事
『分かった分かった。んじゃやりますか。』
佐藤刑事
「田村さん、これを。」
田村刑事
『マジかよ。めんどくせぇヤマだな。』
佐藤刑事
「さ、行きましょ。」
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社長 奈良原
「警察?」
秘書 石川
『ええ。任意ですが、お話を聞きたいと。』
社長 奈良原
「石川、貴方も同席しなさい。」
秘書 石川
『社長、お見えになりました。』
《扉開け、刑事登場》
社長 奈良原
「ようこそ。」
田村刑事
『貴女が社長さんですか?』
社長 奈良原
「ええ。こちらは秘書の石川。同席させても?」
田村刑事
『構いませんよ。私は田村。こっちは佐藤です。』
佐藤刑事
「どうも。本日は宜しくお願い致します。」
社長 奈良原
「それで、警察の方にわざわざ御足労願うような覚えは無いのだけれど、どんなご要件かしら?」
佐藤刑事
「私からお話致します。率直に申し上げますと、一昨日の夜、どちらにおられましたか?」
社長 奈良原
「アリバイの確認かしら?まるで何かの犯人扱いね。……いいわ、石川。」
秘書 石川
『はい。一昨日の夜ですと、19時まで社長室にて執務。20時から会食。23時にはご帰宅されております。』
社長 奈良原
「ありがとう。」
田村刑事
『ぶしつけで申し訳ないが、会食相手は?』
社長 奈良原
「それはお答え出来ませんわ。これは任意、ですものね。それに、今後の会社経営に関わる事ですので差し控えさせていただきます。」
田村刑事
『うむ、結構。』
佐藤刑事
「ありがとうございます。それでは、秘書の石川さん、貴方はどうですか?」
秘書 石川
「わ、私ですか?……あ。一昨日の夜ですと……。」
社長 奈良原
「一昨日の夜と言えば貴方、取引先の社長の誕生パーティに参加していたのではなくて?」
秘書 石川
『そうです、そうです。社長のご予定が既に入っておりましたので、私が代わりに出席しておりました。』
田村刑事
『そのお相手と言うのは……?』
社長 奈良原
「ご勘弁ください。」
田村刑事
『でしょうな。』
佐藤刑事
「それでは、次にお聞きしたいのは、失踪した社員の事です。」
社長 奈良原
「失踪?うちの社員が?」
佐藤刑事
「ええ、そういったお話はお耳に入っていませんか?」
社長 奈良原
「……石川?そうなの?」
秘書 石川
『失踪……と言いますか、ご家族の方から問い合わせのご連絡はいただいております。どうやら社員が1名、就業後、帰宅していない様子でして。』
田村刑事
『その社員というのは?』
秘書 石川
『それは……。』
社長 奈良原
「その件については会社の方で確認してから申し上げますわ。」
田村刑事
『そうですか。それなら……。』
佐藤刑事
「今すぐ確認して来て下さい。該当部署、ご家族へのヒヤリング。電話で済みますよね?」
田村刑事
『何もアリバイを聞いている訳じゃない。本当に失踪したのかどうか。連絡が取れていない事を確認するだけですよ。』
佐藤刑事
「そのくらい、すぐに出来ますよね?石川さん?」
秘書 石川
『し、社長……。』
社長 奈良原
「ですから、その件に関しましては……。」
田村刑事
『社長!あなたの会社の社員が行方不明なんですよ?もしこれが失踪なら最悪の場合、国際問題だ!時間との戦いなんです!』
佐藤刑事
「ご理解、いただけませんか?」
社長 奈良原
「……分かりました。石川。確認して来なさい。」
秘書 石川
『では、行ってまいります。』
《数秒の間》
田村刑事
『電話はここでも出来たのでは?』
社長 奈良原
「申し訳ありません。秘書課の内線で確認致しますので。ここから……社長室からの電話なんて、一般の社員は驚いてしまいますわ。」
佐藤刑事
「それが秘書課からなら、驚かれないと?」
社長 奈良原
「ええ、秘書課から各所への連絡は度々あるのもですから。」
佐藤刑事
「どのような電話を?」
社長 奈良原
「社内の問題ですわ。上申書やら申告書やら書類関係の不備が多いかしら。」
佐藤刑事
「ほぅ、社長自らそういった書類に目を通されるのですか?」
社長 奈良原
「決断はスピード勝負です。商機はまってくれません。即断即決のトップダウンであるからこそ、そのスピードが生かされるのです。その点、警察組織はさぞご面倒なのでしょうね。」
田村刑事
『あははは、全くだ。本当に組織なんてもんは面倒くさくて好きにはなれませんな。』
社長 奈良原
「あら、貴方のようなお方がそんな事を仰っても大丈夫なのかしら?」
秘書 石川
『しゃ、社長!』
社長 奈良原
「石川?どうしたの?」
秘書 石川
『け、警察が……家宅捜索を……!』
社長 奈良原
「そんな!?だって令状は!?見てないわよ!?」
田村刑事
『まぁまぁ、少し落ち着いてくださいよ。』
佐藤刑事
「そうですよ?それに、捜索されてはマズイ事でもあるのでしょうか?」
社長 奈良原
「あ、あなたたち!」
秘書 石川
『社長、どうしましょう!?』
社長 奈良原
「石川!落ち着きなさい!大丈夫よ!すみませんが、これはどういう事でしょうか?事と次第によっては容赦しませんよ!?」
田村刑事
『まぁまぁ、奈良原社長。落ち着いて下さいよ。そう高ぶってちゃ、話も出来ないでしょう?』
佐藤刑事
「秘書の石川さん。あなたはどこに電話を?」
秘書 石川
『け、経理部ですよ。行方不明と思われる社員は経理部所属なんですから。そうしたら警察が来てて、家宅捜索だって騒ぎに。』
社長 奈良原
「経理部に!?彼は経理部の社員だったの!?」
秘書 石川
『そ、そうです。』
田村刑事
『奈良原社長!そろそろ観念したらどうですか?』
佐藤刑事
「往生際が悪いというのも、どうかとおもいますが……。」
社長 奈良原
「な、何を言っているんですか!?わ、私は何も!」
佐藤刑事
「秘書の石川さん!」
秘書 石川
『は、はい!』
佐藤刑事
「私たちは失踪した社員について何と言っていたかしら?」
秘書 石川
『失踪した社員の事を聞きたいと。』
佐藤刑事
「では、社長は何故いま、彼は経理部の社員だったの?と言ったのでしょうか?」
秘書 石川
「そ、それは……。」
田村刑事
『それはあなた方が失踪した社員の存在を知っていたからだ。そしてその社員は男性。彼は会社の不正会計に関する情報を握っていた。いや、不正に関与させられていたといた方がいい。』
社長 奈良原
「それは……。まさか、そんな!?」
佐藤刑事
「社長、ここまでの事が起きてまだ分かりませんか?」
社長 奈良原
「え?何!?どういう事よ!?何が起きてるの!?」
田村刑事
『石川さん。貴方は?』
秘書 石川
『私から申し上げる事はありません。社長に生涯尽くすと誓いましたので。』
田村刑事
『あんた、独り身かい?』
秘書 石川
『はい。』
田村刑事
『それがあんたの……まぁいい。佐藤。』
佐藤刑事
「はい。石川さん。社長は後で連行させていただきますので。先に行きましょうか。」
秘書 石川
『……はい。ありがとうございます。』
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田村刑事
『良かったのか?これで。』
佐藤刑事
「良かったんじゃないですか?まさか内部告発者が警察に保護されて失踪してるなんて言えませんよ。」
田村刑事
『お前、どこまで知ってたんだよ。』
佐藤刑事
「さぁ?どこまででしょうね?ちゃんと踏み込む前にメモ渡したじゃないですか。」
田村刑事
『ったく、人使いの荒いヤツだ。そんなんだからいつまでも独り身なんだよ。』
佐藤刑事
「私の事はいいんです~。次、行きますよ次。」
田村刑事
『次は何だよ?』
佐藤刑事
「田村さん、最近ちょくちょくサボってるでしょ?帰ったら刑事部長からお小言があるみたいですよ~。」
田村刑事
『別にいいじゃねぇか。こうして実績残してんだし。』
佐藤刑事
「一応、我々も警察組織ですから!ほら、行きますよ!」
田村刑事
『はぁ~。しゃあない、行くか。』
終わり
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