『卒業旅行って楽しいもんじゃないの!?』 想定5分
女
「ちょっと!ねぇ!ちょっと聞いてる!?聞いてますか~。お~い、耳付いてる~?んぐぐぐぐ……。こうなれば……この……。」
男
『何だよ、うっさいなぁ。……お?どうした?その手に持って振り下ろしそうな椅子は何だ?』
女
「あ、あんた……ねぇ……。」
男
『だから何だよ、今さ、冬馬(とうま)、来(らい)、別所(べっしょ)、類瀬(るいせ)の連絡待ってるんだろ?』
女
「ま、まぁそうだけどさ。なんか1人ぼっちで喋ってる気がして……。」
男
『お~?もしかして寂しいのか~?ん~?』
女
「も、もういいじゃない!それより連絡よ連絡!まだ連絡取れないの!?」
男
『ここ、電波の入り悪いんだよなぁ。圏外なったりならなかっりしてダメだ。』
女
「全員連絡取れないなんておかしいでしょ!?何とかしなさいよね。」
男
『何とかしなさいよねって、お前なぁ……。』
女
「せっかくの卒業旅行だってのにまさか、はぐれるなんて。しかもこんなのと一緒とは……。私はなんて不幸なのかしら。」
男
『そこで悲劇のヒロイン演じてるそこのお嬢さんに朗報だ。GPSの履歴で追えるかもしれん。検証しよう。』
女
「どうやるのよ?」
男
『知らん。』
女
「やっぱり私は不幸な女。あぁ、何でこんな事に……思えば出発当日からトラブル続き。」
男
『駅でホーム間違えて違う電車に乗るはめに……。』
女
「言わないで!」
男
『やっとの思いで着いたテーマパークは大改装中で、ほぼアトラクションは利用出来ず。』
女
「だから言わないで!」
男
『極めつけはこの迷子騒動だ。』
女
「ごめんて!私が悪かった!ねぇ謝るから許してよ!」
男
『別に俺は謝って欲しくて言ってるんでは無いんだがな。』
女
「はぁ……。本当にこれからどうするのよ。ってか、ここ何処なの?」
男
『キャンプ場。』
女
「あなたに聞いた私が悪かったわ。」
男
『落ち着けよ。ここはキャンプ場なんだ。敷地内からは出てないはずだろ?』
女
「ん、あぁ、そうね。確かに。ここはキャンプ場……キャンプ場……。」
男
『ほんと、星が綺麗で良い夜なんだけどな。』
女
「探しに行く。」
男
『おいおい、やめとけ。こういう時は待つのが鉄則だ。下手に動くと俺たちまで……。いや待てよ。アイツらももしかしたら待っているのかもしれん。』
女
「よ~し、みんなを探しに行くよ!ほら、準備して、準備!」
男《ナレーション》
『卒業旅行とは一般的にとても楽しく、思い出に残るものだ。楽しい思い出はいずれ話のネタになる。』
女《ナレーション》
「私たちの卒業旅行はどこへ向かおうとしているのか。どんな結末を迎えるのか、私たちはまだ知る由もなかった。」
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男
『はぁはぁ……。だいぶ歩いてきたな。もうすぐ丘の上の展望台だろ?』
女
「……そうよ。ここまで登れば辺りを一望出来る。」
男
『今は、夜だけどな。っと、着いた~。』
女
「うわぁ……ほんと、星が綺麗……。」
男
『この星空をここで見ているのは、俺たち2人しか居ないんだよな。』
女
「ええ……凄い……。」
男
『なぁ、どうやって探すんだよ?』
女
「……え?……あっ……。」
男
『お前、まさか……。はぁ……。いいよ、取り敢えず何かサインを送っているかも知れん。見て探すしかない。』
女
「そうね。」
男《ナレーション》
『夜の闇に取り残されたのは俺たちでは無いか。そう思える程の静けさと、星の瞬きがそこにはあった。』
女
「あ!あれ!」
男
『何だ!?どこだ!?』
女《ナレーション》
「闇に動く光を確認するのと同じくして、空にある星たちは一斉に流れ始める。」
男
『とんだ卒業旅行になっちまったな。でも、見つかって良かった……。』
女《ナレーション》
「終わりは始まり、私たちの卒業旅行はまだまだ続く。」
終わり
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