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2人声劇想定3分『縁側』作 沖ママ

参考楽曲
歌 秋桜 山口百恵
三日月 絢香

季語 秋桜 三日月

登場人物
優歌(ゆか) : 女性
織木先生(おきせんせい) : 男性

優歌
「……先生、先生。」

織木先生
「……あぁ、君か。何だね?」

優歌
「何だね?じゃありません。ダメですよ、こんなところで寝てちゃ、風邪をひいてしまいますわ。」

織木先生
「まぁまぁ、良いじゃないか。」

優歌
「先生はホント、ここからの眺めがお好きですのね。」

織木先生
「見てみなさい。淡紅(うすべに)の秋桜(コスモス)が、秋の日の何気ない陽だまりに揺れている。」

優歌
「まぁ、何ですの?何か、歌の歌詞のよう。」

織木先生
「優歌、君が嫁いで来て何年になる?」

優歌
「さぁ、忘れてしまいましたわ。」

織木先生
「そんなものかね。」

優歌
「そういえば、嫁いで来る時に、母に言われたんです。」

織木先生
「お義母さんが?何と?」

優歌
「苦労はしても、笑い話に時が変える。心配はいらないよ、って。」

織木先生
「そうだっか。どれ、少し温かい飲み物でもいれるとしよう。」

優歌
「あっ、それなら私(わたくし)が!」

織木先生
「じきに宵が来る。それまで君はゆっくりしていなさい。」

優歌
「ありがとう、ございます。」

織木先生《独り言》
「薪(まき)はどこだったかな……。」

優歌《独り言》
「織木先生ったら……。頑張っているからねって、強くなるからねって誓ったんだもん、頑張らなきゃ。」

織木先生《独り言》
「優歌は本当に良くやってくれている。君も見ているだろ?この消えそうな三日月を。ここからでもよく見える。」

優歌《独り言》
「つながっているからねって、愛してるからねって……。嬉しかったなぁ。」

織木先生
「……っとと、お待たせ。何が嬉しかったんだい?」

優歌
「いいじゃないですか。昔の事ですよ。」

織木先生
「そうか。昔の事か。」

優歌
「はい。それより先生。」

織木先生
「ん?なんだ?」

優歌
「三日月。」

織木先生
「昔みたいに手を伸ばしてみるか?」

優歌
「ふふふ、素敵ですわ。私(わたくし)が右側を。」

織木先生
「私が左側を。」

優歌
「先生、ありがとうございます。」

織木先生
「なぁに、私は何もしてなどいないさ。」

織木先生《モノローグ》
「君に届け」

優歌《モノローグ》
「この想い。」

終わり

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