好きになったのはモノクロ写真から。
今は、写真なんて簡単に撮れて、簡単に見ることができる。
私が自らカメラを買ったのも中高生の頃で、使い捨てカメラと呼ばれていた「写ルンです」だった。その頃の私はフィルムに焼き付かれてそれが引き延ばされて写真になるなんて、これっぽちも思わなかった。ただ、友達との思い出づくりにパシャパシャと気軽に撮ってはプリント屋さんにお願いし、出来上がりを仲の良いメンバーで見て楽しんだ。
そんな私が、モノクロ写真を知ったのは大学の頃だった。デザイナーや映像編集など、とにかくパソコンを使った「ものづくり」のお仕事に憧れを抱き、その分野の大学の芸術学部写真学科メディア映像コースという、それらしい格好良さげな専門分野へ進学した。
使い方さえ、全く知らないマニュアル式の一眼レフ(当時6万円)を買わされ、なんがなんだか分からずの授業でついていくのがやっとだったのを思い出す。
沖縄から本土へ進学したのもあり、都会に慣れない私はホームシックにかかってしまった。仲の良い友達も中々できず…分からない事も臆病になって、誰にも聞けずに授業を過ごす日々だった。
そんな私を見兼ねて、ある先生が私にモノクロ写真実習のボランティアに誘ってくれた。授業外で先輩たちに教えてもらえるというサークルのような活動に参加させてくれた。
私を担当してくれた女性は、笑顔の素敵な優しそうな先輩。今思い出すと涙が出て来そうになるくらい…。右も左も分からない私に0から丁寧に指導してくれた。私はその時初めて先輩からモノクロ写真(絵)のつくり方を習い、写真づくりの楽しみを学んだ。撮影ではなく、ネガから印画紙に映し出し焼き付け作業で、プリントの工程になる。
引き伸ばし機にネガをセットし、引き伸ばし機用レンズで拡大された絵を印画紙に焼き付ける、その拡大された絵は光りで印画紙に焼き付かれる。そのとき、ピントは勿論、光りを当てる秒数の調整や、焼き付けたくない箇所は覆焼きをする調整で濃淡を作り出し、一枚のモノクロ写真を生み出していくのだ。なんて、手間のかかる作業なのだろうと心の中で思ったが、一方ではこれが本物のモノクロ写真なのだろうとも思った。
私の中で、モノクロ写真がこんなにも奥深いものだと知らず、これまでの写真に対する認識をガラリと変えてくれた。中高生のときに撮った「写ルンです」の時とは、まるで別物にさえ思う。それくらい一枚一枚が重たいものだと感じた。
焼き付け作業を知るまでは、身近で手軽に感じてた写真だが、この経験のおかげで、写真への想いが頂点達する程にモノクロ写真に魅了された私がいる。今でもモノクロ写真が好きで、モノクロの基本となる「光と陰」を探しながらカラー写真も仕上げている。
モノクロ写真は、
やはり写真好きな私の原点なのだろう。
この先もずっと決して失くしてはならないものだと、ここへその想いを残す。
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