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短編小説「ダイエット」(Tip Text)

A氏は様々なダイエットを試した。
ジョギング、筋トレ、半身浴。
サプリメント、下剤、ホルモン注射。
炭水化物抜き、砂糖抜き、カフェイン抜き。
どんなダイエットを試しても、A氏の希望を叶えることはなかった。
絶食も試したが、耐え切れずに食べてしまう。
それならばと、A氏は自分の首をしめて食べたくても食べられないようにした。
身体と魂が離れてしまったA氏は初めて外から自分を見た。
相変わらず醜かったが、数日もすれば細くなるだろうと思った。
しかし次の日、近所の人に見つかってしまった。
まだ全然痩せていないのに。私の身体を見るな。
その思いが届くわけもなく、様々な人に醜い姿を見られ、A氏の身体は火葬場に送られた。
しかしA氏は喜んだ。焼かれてしまえば、あとに残るのは骨だけだ。飢えるよりもさらに痩せることができる。
A氏は自分の美しい身体が出てくるのを心待ちにした。
出てきた黒い箱には、醜い身体も、細い骨も、何一つ残っていなかった。
A氏は様々なダイエットを試してしまったがために、骨の髄までボロボロだった。
A氏は思った。

「そうか、カルシウムだけは抜いちゃダメだったな」

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