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最期の物欲? ライトスピード「ロードバイク」再生


歳と共に「欲」がなくなってきてしまいました。「それはいけない!進歩が止まってしまったのではないか!」と、心配すべきことなのかも知れませんが「物欲」に関しては「欲しいものを(ほとんど)手に入れてしまった」という喜びでもあるのです。若い時には「あれも欲しい、コレも欲しい」「新しいものが欲しい」となっていたものですが、歳をとって少しは成長したのでしょうか、「足るを知る」の領域にまで来れたのなら嬉しいことですが、物欲に関してはもうほとんど新たに追加する、気持ちは起こらなくなってきています。断捨離という造語が一部で使われていますが、幸いなことに若い時から(人様と比較して)「あれも欲しい、これも欲しい」という気持ちが少なかったためか、「もう要らない」というものも少なく、むしろ今所有していて満足を感じるものの多くは「かなり前に手に入れて、気に入ってずっと使っている」ものが多くて処分する必要が無いようです。それでいて使い続けながら満足している、というありがたい状況なのです。元々「収集癖」が無いため、使わないものを所有したいという欲が無かったのかも知れません。使いたいものが手に入り、使いきれるキャパに達した時点で物欲が満たされた?のかも知れません。 そんな枯れてしまった?物欲の内でまだ成し遂げていなかった物の一つに「永久保存版的なロードバイクを所有する」のが残っていました。これからも新しい製品が次々と出てくる中で、「身の丈に合った」ロードバイクがどんなものか、はもう察しがついています。とびきりの高性能である必要は無く、ただ純粋に乗って楽しいロードバイク。新たに手に入れる必要は無く、もう手元にあるものをさらに自分の満足のいく形にさえ仕上げることができれば完成。物欲ももう終わりにできそうです。これまではなんとなく手に入れた、人からのおさがり、などを経て初めて自分で欲しいと思って手に入れたロードバイク(フレーム)が「Litespeed」のチタンフレームでした。チタンのフレーム自体はマウンテンバイクでケニアやタヒチでのレースで使用してその良さを知っていました。当時はIRC(イノアック)が取り扱っていた「ライトスピード」を使わせてもらっていましたが軽さだけでなく金属フレームとしての特性の良さ、作りの良さを感じました。やはり手に入れるロードフレームは「ライトスピード」に。チタン専門のメーカーで、いくつもの種類がありましたが、最も古典的な特性とジオメトリーの「クラシック」を選び、これが事実上初めての自分ロードバイクの「第一号」となりました。 このライトスピードにカンパニョーロの10速を中心にしたパーツで構成し、長く使っていました。トラブルもなく、不満もなし。今となっては標準的な「25C」のちょっと太目(と言われていた)タイヤを履き、舗装から林道、旧道、廃道まで幅広く有意義に使用していました。競技はしないのでほぼすべてのロードバイクライドはこれ一台で十分カバーしていました。そうして気に入って使用していたのですが、競技用?にWレバー付のスチールロードを投入したり、eTAP+ディスクブレーキの冒険的ロードバイクを投入することに伴ってライトスピードを使う場面は減っていき、とうとう乗らなくなってしまいました。一番の理由は、本国でブランドが譲渡されて商品の方向性が変わってしまったこと、国内での輸入元が変わり、自店での取り扱いを終了してしまったことも「店主」としての立場上、大きかったこともあります。 そんなライトスピードのロードフレームでしたが、「いつかはちゃんと復活させて活用しよう」という思いがあり、フレーム単体にばらした状態で「その時」を窺っていました。「ちゃんと」のところに「Wレバー化したい」という気持ちがありました。そのためにカンパニョーロのWレバーにして使うことができる?「バーエンドシフター」を手配して温存してありました。2008年くらいまでは販売されていたようです。しかし、フレーム自体がWレバーに対応したものではなく、ダウンチューブにはシフトケーブルのアウター受しか設けられていません。Wレバーを装着するためにはダウンチューブに「シフター台座」が必要です。しかし、どうしたらそれがフレームに付けることができるだろうかとアイデアが浮かばないまま年月だけが経っていきました。 今年になってこのままではいけないと、意を決して?某フレームブルダーの方に相談してみました。基本はスチールフレームが主力ですがチタンのフレームも製作しています。「部品さえあればできるよ」あれだけ依頼先を悩んでいたのに案外あっさりの回答でした。ところがその「部品」が見つかりません。海外のフレーム小物を専門に扱う先から探すのでですがチタンのシフター台座が見つかりそうにありません。図面を書いてどこかに作ってもらうか、と考えましたがどれだけの金額が掛るかはわかりません。やむなく使っていない別のチタンフレームからシフターボスを切り取り、これをライトスピードに取り付けてもらうことにしました。(後に取り除かれた方のフレームは別の方法で補修しました) 元に付いていたアウター受けを切り落し、フレームが出来上がりました。チタンフレームの場合、劣化としてはデカールくらいでしかありませんが、これを全て除去し、新たに彩色することにいます。主だった部分は白であって白でない「牛乳色」に塗ることにします。以前から、所有するジテンシャも店で展示するジテンシャも「白(系)」と緩く決めていましたのでこの色で決定です。チェンステイやシートステイ、クランクBB周辺などの汚れ易い箇所はチタンの素材のまま、塗らずに磨くだけにしました。実際にどこで塗ってもらうかですが、フレーム専門の塗装業者へ依頼する選択肢もあったのですが、信頼するクルマ屋さんが「単色なら簡単だからジブンで塗れば」というのでその言葉に甘え、場所と道具を、そして最終的にはその腕を借りて塗装が「完了。これまた温存してあったフレームデカールを貼って、フレームの完成です。 ところでなぜ「Wレバー」なのか。STIレバーの「ブレーキレバーがブレーキ以外の他の動き(働き)をする」という構造がどうにも好ましくありません。誤操作に加えブレーキレバー自体が重くなってブレーキ操作の反応が悪くなることには抵抗があります。それゆえのエルゴパワーやダブルタップの選択だったのですが、Wレバー化したロードバイクのハンドル周りの軽快さ(実質軽くなりますが)、トラブル回避やメインテナンスの容易さ等機器がシンプルになる大きなメリットに気付かされました。「ブレーキ操作がやりづらい」と言って感じている人の遠因はSTIなのではないかとさえ考えています。幸い、カンパニョーロのエルゴレバーの構造はブレーキレバーとしても悪いものではなく、シフター機能を簡単にブレーキレバーから取り除くことができます。実際にレコードグレードではシフター機構の入っていない「ブレーキレバー」が製品として販売されていたほどです。シフト操作の煩わしさ?はむしろ操作する楽しみですし、ハンドル周りが軽くなる恩恵やシフト機構がトラブルで変速しないという不安からはほぼ解放されます。クルマやオートバイの変速動作が煩わしいと感じることが無いのと同じだと思うのです。 ホイールはフロントハブだけを新たに組み直し。以前はベアリングで支えているだけのフロントハブなんでなんでもいいのでは?とさえ考えていたのですが、軽量なハブの耐久性、そしてフランジを小径にするほどホイールの捩じり剛性が低下することを実感してから、極力大きなベアリング、大きなフランジを選ぶように改めました。軽さ、よりも旋回時の安定性の方が大切です。ブレーキ、変速機などは以前のカンパニョーロのまま。なんら不満もありません。クランクは165㎜を選択するためにストロングライトとフランス製です。これまで使っていたサドル+シートポスト、温存していた新品バーテープを巻いて完成です。 こうして完成したロードバイクは決して「新調」したものでもなく、なにか目新しい物でもなく、何より既に所有していたものですので「物欲」の対象として取り上げるのは少し違うのかもしれません。しかし所有欲ではなく「道具は使ってナンボ、乗り物は乗ってナンボ」という気持ちの上では自分の理想に近い状態で再び「乗れる」形にできたことの喜びが大きく、大変「物欲」が、満たされた気分なのです。もうこれで「もっといい自転車が欲しい」という気持ちが満たされたはずです。 さあこれで、全ての物欲がなくなったはずです! はず・・・ 

(2022.2.19)

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