#仲間と作る本 「祖母」

#仲間と作る本


[祖母]

あなたには大切な人はいますか?

ここからは僕の大好きな祖母を話を

していこうと思います。

少しだけお付き合い頂ければと思います。


(本編)

「いらっしゃい、来てくれたのぉ」


父方の祖母はすごく優しい人だった。

小さい頃から僕をとても可愛がってくれて

厳しい事を言われた記憶が一切ない。

けど実際は結構はっきりした性格だったみたいで

僕の父と母は厳しい面を何度も見てきたらしい。

「あぁ見えて結構キツイよ〜」

って母は時々言っていた。


でも何でか僕は気に入られていたみたいで

本当に良くしてもらった思い出しかない。

僕の記憶の中では優しくて大好きな祖母。

そんな祖母の話。


祖母は祖父と一緒に東京の下町でクリーニング屋を営んでいた。

祖父は僕が小学生低学年の頃に亡くなって

しまったので、あまり濃い記憶は残って

いないがすごく可愛がってくれたらしい。

「お前のほっぺは美味しそうだねぇ〜」

僕のほっぺの肉を食べたいと何度も言っていたようだ。こわいこわい。


ある時、父から祖母の昔の話を聞いたことがあった。

戦時中に看護師として働いていて

防空壕で色んな人の手当てをしていたらしい。

僕の知っているおっとりした祖母の印象

からは想像がつかなかった。

でもその話を聞いた時なんとなくだけど

「芯の強い人」なんだなぁと感じた記憶がある。


僕は大学時代、都内まで通っていたので

時々祖母のところにふらっと顔を出していた。

「おばあちゃん孝行しよう」っていう

健気な思いというよりは

「お菓子食べれるかも」っていう

よこしまな気持ちが強かったのは伏せておく。


事実、僕がいつ行っても祖母は

とびっきりの優しい笑顔で迎えてくれた。


「いらっしゃい、来てくれたのぉ」


特にストレスフルな生活を送ってた訳では
ないが、

「癒されるわぁ〜」ってマジで毎回感じてた。

本当に大好きだった。


そんな大好きな祖母の体調がおかしくなってきたのは、僕が仕事を始めた頃だった。


「アルツハイマー」


知っている人も多いかもしれないが

アルツハイマー型認知症は新しい記憶からどんどん消えていく病気。

祖母は確かその時90歳くらいで、
僕と祖母が過ごした時間は約20年。

きっと近い将来記憶からいなくなってしまうだろう、そう感じた。

すごく寂しかった。


事実、祖母は記憶がなくなっていくだけじゃなく

身体もどんどん衰弱していった。

当時仕事もあり中々お見舞いに行くことが出来ず

年に結局数回程度しか行ってあげる事が出来なかった。


でも僕の予想に反して祖母の記憶から

僕が消える「その時」は中々来なかった。

久しぶりにお見舞いに行っても


「いらっしゃい、来てくれたのぉ」


そういって変わらぬ優しい笑顔で笑ってくれた。

嬉しくて祖母の手を握りながら会話をした。


それでも病魔は確実に祖母をむしばんだ。

少し経った頃、祖母の容体が悪化して

意識がなくなったとの連絡を受けた。


「もう長くないかもしれない」


認めたくなかったその事実を覚悟せざるを得なくなった。

両親と僕は出来るだけ早く見舞いに行ける日を設定した。


「このまま会わずにサヨナラなんてイヤだ」


その願いが通じたのか、

なんとか僕たちが見舞いに行く日まで

祖母は頑張ってくれた。


とはいえ意識が戻ることはなかった。


病院について1人用の病室にいる祖母を目にした。

呼吸器をつけて点滴を打たれ

眠っているように動かない祖母。

やっぱり意識は戻らない。


「最後にあの優しい笑顔が見たかったな」


動かない祖母を目の前にしてそんな事を考えていた。


99.9%諦めていたその時。


祖母の身体がピクっと動いた。

「え!?」

思わず声が出た。


「おばあちゃん!!分かる!?」


ベッドの祖母に駆け寄った。

手を握って祖母の顔を見つめた。

呼吸器をつけてやっと息をしている祖母には

もう声を発する力は残っていない。


でも



僕の方を見てニコって笑ってくれた。

あの大好きだった優しい笑顔で。

思わず涙が溢れた。


父もビックリしていたし
母は涙腺が超弱いので号泣していた。

僕は涙で言葉に詰まりながら祖母に声をかけた。

「おばあちゃん、来たよ〜」

祖母はまたあの優しい笑顔でニコって返してくれた。


「いらっしゃい、来てくれたのぉ」


そう言ってくれてるみたいだった。

本当に嬉しかった。

面会を終えて帰る道のり。

3人で祖母の意識が戻った事をまた喜んだ。

「また会いに来よう」

そう誓った。




その数日後、祖母が亡くなった。

結局あれから意識が戻る事はなかったらしい。

泣いた。

すごく泣いた。



今でも両親とあの時の話をする事がある。

「あなた(僕)が来るから力を振り絞ったみたいだったね」

そう言う母。

なんであの時急に意識が戻ったのか、それは誰にも分からない。

でもどっちにしてもこの奇跡に。

大好きな祖母の笑顔を最後に見させてくれたことに、本当に感謝したい。

ほんとにありがとう。

そしてさようなら、大好きなおばあちゃん。

(あとがき)

病院での体験は今でも思うけど本当に奇跡のようでした。

でも僕たちが過ごしている毎日はこういう奇跡が常に起こって出来ているんだとも感じます。

だからこそ1日1日悔いのないように過ごしていきたいと思います。

周りにいてくれる人に感謝しながら、
大切に1日を過ごしていきたい。

そう思います。


長々と書いてしまいましたが、
最後まで読んで頂きまして
本当にありがとうございました。


そしてこの素晴らしい企画を考えてくれた
拓さんを始めとする実行委員の方々に
本当に感謝します。

この企画に携われたこと。
本当に誇りに思います。

ありがとう。


ブログ : 人生RPG攻略


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