東海道を歩く。息子と紅茶と/1日本橋→品川
東海道を歩くようになったのは、ちょっとした前段があったのです。
中学に入った息子が、部活を辞めてしまい、土日に暇するようになった。そこでなんとなく「そこらを歩こうか」と散歩に誘うようになったけど、次第にお互い飽きてくる。そんなとき、新宿に買い物に行った帰り、電車に乗らずちょっと歩いてみたのです。我が家は小田急線の経堂にありますが、新宿から行ける駅まで行ってみようと。
するとこれが意外と楽しかったのです。次々と電車から眺めていた駅をクリアする感じがあり、気が付くと3時間ほどかけて下北沢くらいまで来た。
「こうやって歩いていくと、小田原まで行ける。行ってみるか」
そう話しかけると「別にいいよ」と。
それで次は下北沢を出て、狛江まで。そして狛江から登戸まで。登戸から新百合ヶ丘まで。新百合ヶ丘から町田まで。そんな風に時々、数時間かけて飽きるまで歩いていくうち、最後まで歩き切ってみようという気がお互いにしてきたのです。途中、町田から小田原に行くのは山越で大変だから片瀬江ノ島にしたらどうかとアドバイスをもらったので町田から桜ヶ丘まで。桜ヶ丘から藤沢まで。そして藤沢から片瀬江ノ島まで。こんな風におおよそ8日くらいにわけて小田急線を全部歩き切ったのでした。
それはなんだか清々しい達成感があり、当時、中学生だった息子との距離も、それほどお互い話すわけではないけれど、縮んだ気がしてよかった。そしてここで少し運命めいた出会いをします。
それが片瀬江ノ島にある「ディンブラ」という紅茶のお店。
ここの紅茶とホットサンドが実においしくいろんなことを知った。ディンブラというのはスリランカの地名で、そこで採れた茶葉を使った同名の紅茶の名前でもあるんですね。そんな初歩的なこともお店にあった本を読んで知った。この頃、紅茶に興味をもっていた息子も「いろんなお店で飲んでみたい」というので、じゃあ歩いて行くなかで、紅茶の店があったら入ってみようということになり、小さな目的ができたのでした。
その後、井の頭線と山手線も完歩したのち、2022年10月16日、日本橋を出発して京都に向かって歩き出したのです。この日は、次の宿場の品川までなので2時間ちょっとの小さな一歩。でも、それは確実に京都に続く一歩で、それまでの沿線歩きとは少しちがう気持ちでした。
でも本当に京都まで行けるのか。僕も息子もそう思いながらも歩き始めたのです。
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