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色々な人生①(裕福なお宅)

仕事柄多くの高齢者の話を聞く機会がある。

とある豪邸に住むいわゆるお金持ちの高齢女性の話である。昔からの農家で若い時から農業を営んできました。子供を寝かせた後、月あかりを頼りに稲刈りをしたり、リアカーを押して都心まで野菜売りに行ったりと苦労を重ねてきた。また、若くして両親をなくし、家業である農業を一人で長年従事してきた。旦那とは見合いで結婚し実家へ嫁いてもらった、今まで人を好きになった事がないという。夫は仕事を持っていたため農業には参加しなかった。しかし高齢化と共に担い手もなく、広い農地は割と都心に近いことから農業をやめた後、畑であった広大な土地を売って巨万の富を得た。

家族は夫婦と子供が5人いた。本人は自分にお金をかける事に興味がなく、今まで子供や孫にお金を使ってきた。例えば、5人の子供の結婚式の費用を全額負担、実家に帰る孫に小遣いを1回3万ほどあげるている。中流家庭の私からすれば、考えられない額である。本人曰く「今まで多額のお金を子供に費やしてきた。」といつも呟いている。施術中はお金にまつわる家族の話が多い。本人もそんな人生に疲弊しているようにも見え「早く迎えに来てほしい。」と呟く。

本人は高齢である為、腰痛もちである。遠出ができなくなっており、自宅で過ごす日々が多く、お金を使う先もない。しかし、定期的に病院への通院や買い物へ行く必要があり、家族の手助けが必要となっている。その全てを担っていたのが、長男の同居中の息子であった。息子は母が行きたい時に行きたいところへ連れて行き、当然、通院へも連れて行った。

しかし、その息子は病気になった。どこへも連れて行けなくなった。今は近隣に住む次男が母(本人)をどこへでも連れていく。どこへ行くにも母は現金でガソリン代としてお金を支払っている。お金を支払う以外の事しかできない。その心情は私には理解できないが、他の家でも見たような話は聞く。ただ「ありがとう」だけでは済まなくなっている。これは今まで何かつけてお金を与えてきた本人の問題なのかどうかはわからない。

今は5人の子供中の紅一点の離婚をしている娘が定期的に母の元へ遊びにきている。その母は病院へ行く際に、その娘に頼らざるを得ない。なぜなら同居の息子は病気をしており、母をどうする事もできない。その娘の車は中古車でガタが来ており、外出中の親子間の会話がどのような物かわからないが、その娘の車を中古で買い換えるという事で200万支払う事を決めたようであった。これは他の兄弟(すでに定年間近)にも了承を得たといった。私からすれば集られているように見えた。事実、高齢の母は嫌がっていた。自身がお金を自分の為に使わないために、子供から当てにされいる。一人に多額のお金を払えば、皆に平等にしなければ、他の子供たちは納得しないと思っており、お金を使う際は周囲に気を使っている。しかし、その100万は結局、自宅の浴室の改修費用にあてがわれる事になった様子。その200万の用途ももはやどうでも良い様子であり、それによってねだられること、揉める事を高齢になっても続く事で、本当に嫌がっているようにも思われる。

第3者の私には関係のない事なので言いやすいのだろう。

外出する機会が少ない事から、自身の身の回りの備品整理を少しづつしている様子であった。ネックレスやダイヤなど、宝飾品を家族にあげたりしており、私もそんな話が当たり前になり、その額を聞いていも驚く事もなくなってしまった。最近は300万のネックレスを20代の孫にあげたとか。私の金銭感覚も麻痺しつつある。気をつけないと。



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