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狼だぬきの欠落、あるいは穴ぼこ

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#コンテンツ会議

「天気の子」は「転機」そのものだった【ネタバレなし】

 大ヒット上映中の「天気の子」を観た?ぼくは観たよ。内緒にしておいてほしいんだけど、2回も。「君の名は。」は3回劇場に足を運んだから、「天気の子」でも少なくともあと2回は観に行くだろうな。つまりはすごくよかったんだ。もちろん、内容には触れないよ。ネタバレは無粋で、ぼくは粋だからね。  ぼくは、実は新海誠監督の作品が大好きなんだ。距離の美学、切なさを受容するかのような、あるいはそれすらも美しいと捉えるかのような描写。もしくは審美眼。ポエティックなセリフ。青く、脆く、刹那的で、

実は一番の抗うつ剤は「90年代後期ミスチル」だった【前編】

 また太陽が昇ってしまった、と窓の外に目をやる。「明けない夜はない」みたいな言葉が使い古されていて、ほとんどなんの重みも感動ももたらさないと思っていた。でも、本当に明けない夜はない。毎日、正確な時間に太陽が登る。憎くて、でもちょっと嬉しい事実だな。  最近夜になったらミスチルをずっと聞いている。小学校のときに「抱きしめたい」をひょんな機会で聴いて、それ以降90年代のミスチルを中心にウォークマンが擦り切れるくらい聴いた。もちろん、ウォークマンは擦れないし切れないけれど。なんに

一人の起業家で独りの文筆家の「絶望」について

0:「起業」あるいは「夢追い」の絶望 世界は幾分キラキラしすぎている。そこに、文句を垂れようと思う。もちろん狼ダヌキ個人にとってという注釈が付くが。「そーしゃるねっとわーくさーびす」のせいだろうか、日本人の満たされない尊厳欲求は、インフレを起こしている。オンラインサロン加入だって、リクルートの内定だって、なんならタピオカだって、全部虚構なのに。  今、夢を語ることは尊いとされている。教養と思慮の深い一部の起業家によって、夢を追うことは実は泥をすするようなものだという認識も広