栗麻呂ノ暗号宮崎父子_ノーラン1

銀河鉄道 クリストファーの城~第5話『宮崎吾朗とノーラン…HAYAOチルドレンの宿命、逃れられぬ影との戦い。この切ない心を何にたとえよう?』前編

やっと来たな第5話。

待ってましたァ!

ちなみに『カリオストロの城』のストーリーをノーラン映画で辿るシリーズ<銀河鉄道クリストファーの城>第4話はコチラ!

やあ君たち。

このシリーズも、どうやらやっと少しだけ注目されたようだね。初めてRTが20くらいまでいったんだ。

今までツイッターでRTと♡の最高が「3つ」やったからな。

しかも1つはオッサンが己で押しとったやろ。

自分で自分を褒めてあげるのは基本だろう。

さ、さて…

第4回ではルパンと次元の前に「カリオストロ伯爵の城」が登場するシーンまで解説したよね…

その通り。

しかしあれは面白かったね。

「カリオストロ城の全景はヘリのシーンの六本木と、新幹線の富士川橋で再現される!」ってやつ。

せやな、あれは鳥肌もんやったで。

さて、ノーランによる「カリ城完コピ計画」の検証を進めよう。

ルパンは次元にカリオストロ伯爵の城の詳細を説明する。

ルパンが「ほら、あそこ。風車が見えるだろう」と言い、画面には風車が映し出される。

これはオイラにもわかるぞ!

「風車」といえば『インセプション』だね!

大富豪フィッシャー父子の関係を象徴するアイテムとして使われたんだ!

「風車」っちゅうのは宮崎アニメに欠かせんアイテムや。

どの作品にも出て来おる。「風を感じること」の象徴やろな。

『インターステラー』でもクーパーが言っておったで。


だね。

「風車」や「蒸気船」ってのは、宮崎ワールドの象徴みたいなもんだよね。彼の思想というか哲学というか憧れが、そこに込められている。

映画の世界は未来だったり魔法の世界なんだけど、機械を動かす動力が「風車」や「蒸気」だったりするんだ。矛盾してるんだけど、なぜか惹かれる世界…。面白いよね。

そういえばノーランの映画もそうだよね!

凄いハイテクマシンが出て来る一方で、スマホもグーグルグラスも出て来ない。時空の謎を解くという人類未踏の計算も、スーパーコンピューターじゃなくてノートや黒板に手書きで計算してたり(笑)

似てるんだよ、あのふたりは。

というか親子みたいにそっくりだ。

ところで、第4話で「ディカプリオ演じる主人公コブと義父マイルス教授の会話の秘密」を紹介したよね。

映画『インセプション』は「夢の中に現実みたいな世界をつくる」話なんだけど、それはノーランが自分の映画の中に宮崎駿の『カリオストロの城』を内包する「カリ城完コピ計画」のことだった。

そしてフィッシャー親子や、老人サイト―とディカプリオの関係には、メディア王ルパート・マードックとその息子ジェームズのイメージが投影されていたんだ!

きのうの番外編でそこを紹介したね。謎の数字「528491」の意味と一緒に!

まさか元イングランド代表監督スヴェン=ゴラン・エリクソンの誕生日やったとはな…

「エリクソンの頭の中の重要機密抜き取り事件」には驚いたで。

そういえば、これを忘れたてたじゃんか!

2003~08年の間に起きた「ノーランに衝撃を与えた2つの事件」の2つ目のほう!

『インセプション』誕生の鍵を握る、「エリクソン事件」と匹敵するほどの大事件なんだよね!?

その通り。それが今日の主題だ。

タイトルでバレバレだと思うから、もうズバリ言っちゃおう。

クリストファー・ノーランに衝撃を与え、映画『インセプション』を生み出させたもうひとつの「事件」とは…

これだ!

『ゲド戦記』が?!

違う。

宮崎吾朗のほうだ。


ええ~~~っ!?

2006年7月に公開された映画『ゲド戦記』を観て、ノーランは衝撃を受けたに違いない…

良くて「トンビ」レベルだと思ってたジュニアは、もしかしたら「鷹の子」なのかもしれない…って。

どゆこと~!?

ノーランは少年時代から宮崎駿に強い憧れを抱いていた…

また始まった…

本作品における発言・描写は、おかえもん個人の推測や妄想に基づくものであり、実際の人物・団体の真実を表すものでは決してありません。

信じるか信じないかは、あなた次第やで。

あと、このオッサン、これまでネタバレとか1ミリも気にしたこともない男やさかい、こっから先を読むのは自己責任でよろしゅう。

宮崎アニメを観て、宮崎駿に憧れて、いつか自分でも映画を作りたいと思っていたノーランは、ついに8ミリカメラで自分の作品を撮り始めるようになった…

こんな風に思いながら…

ボク、いつか絶対に宮崎駿を越えてみせるぞ!

誰やねん。

そうして「HAYAOチルドレン」を自負するノーラン少年は、新進気鋭の映画青年へと成長し、英国内で着々と良作を撮りヒットを重ねた。

2000年にはハリウッドデビューを果たし、傑作『メメント』を世におくり出すことになる。

そして、ちょうど時を同じくして、宮崎駿は「世界のミヤザキ」となってゆく…

2001年発表の『千と千尋の神隠し』がアカデミー賞長編アニメ賞を獲得。続く2004年の『ハウルの動く城』も世界各地で数々の賞を受賞し、それまで一部のアニメ好きや映画マニアしか知らなかった「宮崎駿」の名が、世界に響き渡ることとなった。

ノーランにとってそれは、嬉しいことでもあり、少し淋しいことでもあり、身が引き締まる思いでもあったはずだ…

なんで?

ノーランにとって、宮崎駿は偉大なる父のような存在だ。

だけど、その偉大なる存在は、海外では一部の人にしか知られてなかった…

その父が、ついに同じ土俵、同じ市場で戦うライバルになったのだから。

映画とアニメやろ? 違う土俵やんけ。

宮崎駿は自分をアニメ作家だとは思っていない。彼は自分自身を映画監督だと公言している。

『もののけ姫』で全てが変わったんだよね。それまでのジブリ作品は「アニメ映画」だった。日本では「ハリウッド映画>実写の邦画>アニメ映画」という序列みたいなものがあったんだよ。今となっては国民的名作とされる『ナウシカ』や『ラピュタ』『トトロ』なんかも、ほとんどの大人は見向きもしなかった。

だけど『魔女の宅急便』『紅の豚』が「実写の邦画」以上の売上を記録し、ついに『もののけ姫』が『ET』の持つ日本の映画興行記録を塗り替えるに至る。ジブリ作品はハリウッド大作をも越える存在になったんだ。

これは海外の映画監督にしたら驚異だよね。

当時、日本での売上は世界の中で大きな割合を占めていた。もし自分の作品が日本で公開される時、ジブリ作品とバッティングしてしまったら大変なことになる。大コケしちゃうからね。

憧れの存在でもあり、強力なライバルか…

宮崎駿が世界的ビッグネームになったことが嬉しくもあり、恐ろしくもあり…

そう、複雑なんだよ。

ノーランは芸術家でもあり経営者でもあるからね。

ていうかノーランは宮崎駿のことが死ぬほど好きだから、一挙手一投足が気になって仕方がないんだろうな。

そこまで…

じゃないと「カリ城完コピ計画」なんて思いつかないよ。

で、吾朗はんは?

そうそう。

父とまで仰ぐ宮崎駿の息子だから、彼のことも気にならないわけがない。

そしておそらく『ゲド戦記』を観るまでは、ノーランは吾朗さんを「残念」に思っていたはずだ。

偉大なる父の血を継げなかった哀れな息子だと…

そして天才宮崎駿の真の後継者は、この自分だと…

踏み込んだな。

ほ、本作品における発言・描写は、おかえもん個人の推測や妄想に基づくものであり…

吾朗さんこと宮崎吾朗は、父の愛を知ることなく、ほとんど母の手ひとつで育てられたんだ。当時の宮崎駿は寝る暇も惜しんで描き続けていたからね。

吾朗さんは大学卒業後、ランドスケープアーキテクト、つまり設計士として公園緑地や都市緑化などの計画・設計に従事する。

なんかインセプションぽくね?

そして宮崎駿の右腕・鈴木敏夫に誘われスタジオジブリに入社。ジブリ美術館プロジェクトを任される。完成してからは、そのまま館長になった…

そしてノーランは失望した。

偉大なる表現者の息子が、三十代半ばにして父の記念館の管理人になるだって?

その若さで、過去の遺物の中に埋もれたまま、年を重ねるつもりなのか?

ってね…

ノーランは三鷹の森ジブリ美術館に行ったことあるのかな…?

たぶん無いと思うよ。理由は後で話す。

しかし宮崎吾朗は、突如、映画を監督することになる。

ジブリの鈴木敏夫社長に強力に勧められ、『ゲド戦記』を手掛けることになったんだ。

父・宮崎駿は当然激怒した。

あいつに監督ができるわけがないだろう!

絵だって描けるはずがないし、もっと言えば、何も分かっていないやつなんだ!

鈴木さんはどうかしている!

そこまで言わなくても…

でも、恐らくノーランも同じことを思っていただろうね。

「宮崎吾朗は鷹ではない。鳩や雀、せいぜい頑張ってトンビだ」と…

そして映画が完成し、試写会を訪れた宮崎駿は、人生で予期していなかった「息子の初監督作品」という事態にパニクってしまう。

上映中に途中退席した宮崎駿は、思わずこんなことを口にする。

「気持ちで映画を作っちゃいけない…」

この動画の2分40秒あたりだね。

でも、最終的には息子の作品を認めることになる。

「素人の初監督作品にしては悪くない」ってね。決して褒めたわけではない。最低レベルはクリアしてると語った。

厳しいんだね…

で、ノーランは?

ノーランはどう思ったんだろう?

さあ、どうかな?

ノーランは決して直接的に意見を言わない。

でも、映画『インセプション』で、宮崎駿・吾朗父子に対する思いを表現したんだ。

マジで~~~っ!?

ここまでの話をまとめると、こうなる。

ノーランの答えだろうね。

えっ?えっ?え~~っ!?

面白いよね。こんなシーンもあるよ。

ノーランの吾朗さんに対する期待と不安が複雑に入り混じった感じが良く出てる。

あ~~~~!

謙さん!

そしてフィッシャー邸のシーンに移る。

トム・ハーディ演じるイームスが潜入するんだ。

どっかで見たね。この感じ。

「カリ城」に潜入してた不二子ちゃ~ん!

そして寝たきりになった父フィッシャーの書斎兼寝室でのシーンが始まる。

父フィッシャーは、怒って手を振り回し、ベッド脇にあった写真立てを落とす。

息子ロバートが割れた写真立てを拾おうとすると、父は激しく罵倒する。

父の側近でロバートの名付け親でもあるブラウニングが、そっとロバートの側に来て慰める。

でも父の愛を知らずに育ったロバートは、こんな風に答えるんだ…

なんか似てない?

ロバートと吾朗さんって…


どっちもイケメンやしな。

せやけどホンマに宮崎父子もこんな感じやったんか?

みたいだね…

吾朗さんは子供時代、テレビで父の動向を知ったらしいよ。

家ではほとんど顔を合わせないし、たまに会っても話もしなかったそうだ。

まさにフィッシャー父子そのものだね。

そして「インセプション」計画がスタートする。

おお!

トム・ハーディ演じるイームスが作戦を提案する。

感心したアーサーがこんなことを言う。

ちょっと吾朗さんっぽい表情で…

トムハ…じゃなくてイームスは、こう答える。

これって…まさか…

次にアリアドネが、設計する夢の舞台の詳細についてディカプリオと語り合う。

この仕事場って、どっかで見たような…

もしや…

ゴールが決まったので、チームは具体的なプランの設計に移る。

グランドデザインを描くのはトムハ演じるイームスだ。

これでロバートへのインセプション計画が完成し、いよいよ実行に移す。

めっちゃスリリング!

詳しくは映画で!   

そして映画の終盤で、劇的な展開を見せる…

雪山の要塞の中の、秘密の部屋に辿り着くロバート。

出た!宮崎アニメみたいな「ハイテクなんだかローテクなんだかわからないドア」!

だよね。

部屋の中は超未来的だ。父のベッド周辺を除いて。

ロバートの姿を見て、父は何かを言おうとする…

でも言葉にならない。

ロバートは「わかってます」といった感じで、以前父から浴びせられたセリフ「お前に失望した」を言い、自分の能力の無さを認める発言をする。

でも、そうじゃなかったんだ…

がーーーん!


そして父は、ベッド脇の金庫を開けろと指をさす。

出た!エリクソンの誕生日!

金庫の中には、遺言書と「思い出の風車」が…

初めて父と気持ちが繋がったロバートは慌てて父のほうを向くが、すでに息を引き取っていた…

父のために初めて涙を流すロバート…

その光景を見て、満足げにうなずくトムハ。

ポチっとな。

ボカ―ン!

ドカーン!

ゴゴゴゴゴドガーーーン!!!!!

ト、トムハがノーラン!?

破壊された要塞って、もしかして…

そして彼らは長い長い夢から覚めましたとさ。

フィッシャー帝国がどうなったかって?

それは私たちだけの秘密。

紅の豚、被せんでもええ!

どうゆうこっちゃねん!?説明せえ!

最後にうなずくトムハは、きっとノーランの投影だろうね。

そして爆破されるのはジブリ美術館…


なにィ!?

だってノーランは吾朗さんに、過去にしがみついてほしくなかったんだ。

偉大なる宮崎駿の血を受け継ぐ表現者として、最前線で戦って欲しかったんだよ。

自分のよきライバルとして…


こんなエピソードがある。

吾朗さんは『ゲド戦記』の監督が決まった時、日本テレビ放送網の氏家齊一郎から「後戻りするつもりでやっちゃダメだ。館長は辞めろ!」と叱咤激励されたらしい。そして三鷹市立アニメーション美術館、つまりジブリ美術館の館長を辞任している。

なるほど…

じゃあやっぱりノーランは吾朗さんの夢の中で「ジブリ美術館」を爆破して正解だったんだ…

そして完成した『ゲド戦記』をノーランも観た。

そして衝撃を受ける。

「鷹の子は、やはり鷹なのでは…?」

とね…

なんでわかるんや?

吾朗さんの『ゲド戦記』に対して、ノーランはアンサー映画を作った。

アンサー映画?

なにそれ?

『ゲド戦記』に対するノーランの「返歌」だ。

返歌ぁ?

そう。

宮崎吾朗は『ゲド戦記』で監督だけでなく主題歌の作詞もしたんだ。

それが「テルーの唄」。

この歌に何かを感じ取ったノーランは、その想いを映画にしたんだよ。

吾朗さんへの返歌として…

歌詞にある通り、心を映画でたとえたんだね…


それが『インターステラー』なんだ。


『インターステラー』が…

ノーランの心のたとえ…?

宮崎吾朗への…返歌…?

詳しくは次回の後編でたっぷり解説しよう。

これを聴きながらお別れだ。

じっくり歌詞を味わってほしい。

サム・山下歩・財部亮治『テルーの唄』


<後編へ続く>



紹介した映画の視聴はコチラ

『INCEPTION』@Amazonビデオ

『INTERSTELLAR』@Amazonビデオ


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