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カズオ・イシグロ『日の名残り』小説&映画の徹底解説!

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ノーベル文学賞を受賞した日系英国人作家カズオ・イシグロの代表作『日の名残り』を、小説版と映画版の違いの理由などを交えて徹底解説しています。世界一のネタバレ記事となっていますので、…
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「MOON あなたは知ってるの?MOON あなたは何もかも…」~カズオ・イシグロ『日の名残り』徹底解説・第7話

お~お~~~~お~~~ お~お~~~~お~~~ お~お~~~~お~~~~お~~~ うっうっう… グスン… やるやんけ、カツオ… 鳥肌モンの声や… す、素晴らしい… 伝説とされるリンキンパーク「LIVE at テルアビブ」での、ボブ・マーリー『NO WOMAN NO CRY』から『The Messenger』へのメドレーですね… この鉄板メドレーで堕ちなかった女はいない… あのライブでは、『The Messenger』のイントロ最中にギターのブラッド・デ

《惚れっぽい私》は、いったい誰に惚れたのさ?~『夜想曲集』#1「 Crooner /老歌手」~カズオ・イシグロ徹底解剖・第49話

~~~ 三日目:夜 五島・福江島 ~~~ 『恋フェニ』の衝撃の余韻がまだ収まらんわ… ねえねえ、オイラ気付いたんだけどさ… トニー・ガードナーがヤネクに「キーをEフラットまで上げてくれ」って言ったのって… ジミー・ウェッブのことをほのめかしていたんじゃない? なんでや? だってホラ… 「Eフラット」は「E♭」って書くでしょ? 「Jimmy Webb」の中には「eb」が入ってる… ああ! 「Vincente(ヴィンセント)」の中に「Venice(ヴェニス)」

~『夜想曲集』#2「 Come Rain or Come Shine /降っても晴れても」~カズオ・イシグロ徹底解剖・第51話

~~~ 三日目:夜 福江島(長崎五島) ~~~ だから、二人は星空の下で踊りつづけた… お終い… え? それでおしまいなの? タイトルの『降っても晴れても』は、最初のほうでチョコッと名前が出てきただけやんけ。 しかも小説では雨も降らん。 どないなっとんねん? そこはあとでゆっくり考えていくとして… 何か気付いた点は? 引っかかったこととか。 主人公のレイモンドって「レイモンド・カーヴァー」のことじゃないのか? 随所にカーヴァ―の短編小説のタイトルや小ネ

「なぜ人は《雨が降る=悲しい》と決めつけるのか?(Here's That Rainy Day)」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第56話

まさか小説の三行目までの解説で、こんなに回を重ねるとは思ってもみなかったね… ホンマやな。 出だしの3行で、もう6回も書いとる。 しかし、よくもまあ毎回毎回、驚愕の新事実が飛び出してくるよな… 前回もホントに驚かされた… 仕方ないですよ… カズオ・イシグロが「ややこしい」伏線を張り巡らすから… 第3の曲『ヒアズ・ザット・レイニー・デイ』も、これまでの曲に負けないくらいの「ややこしさ」だぜ。 いや、ひょっとしたら、最も「ややこしい歌」かもしれないな… マジ

「こんなことになるとは思いもしなかった…(It Never Entered My Mind)」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第57話

それにしても、あのジャズのスタンダードナンバー『Here's That Rainy Day』の「出自」には驚いたな。 ホンマややこしい歌やった。 いよいよ、イシグロの短編集『夜想曲集』の第2話『Come Rain or Come Shine/降っても晴れても』の「冒頭で提示される4曲」の最後の1曲『It Never Entered My Mind』の解説だね… 曲名やタイトルが混在するとややこしいな。 現時点までをまとめると、こういうことだ。 おお!わかりやすい

「ロレンツ・ハートの子守唄」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第58話

さて、『It Never Entered My Mind』と作者ロレンツ・ハートに関して、ちょっと紹介しようか… 歌の解説はコチラ! この歌は、1940年のブロードウェイミュージカル『Higher and Higher』のために作られた。 『サヨナラ』『南太平洋』で有名なジョシュア・ローガンが脚本・演出で、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャースの名コンビが曲を書きおろしたんだ。 『Higher and Higher』っちゅうたら、フランク・シナトラの映画デビュー

「サラ・ボーンのLOVER MANとパリの四月」~『夜想曲集』#2~カズオ・イシグロ徹底解剖・第66話

四つん這いで「犬」になりきり、「雑誌」に嚙みついていたレイモンド… 会議を切り上げ帰宅して、その姿を見てしまい、戸口で立ちつくすエミリ… 前回を未読の人はコチラ! さあ、ここからが小説も解説も正念場だ。 お手並み拝見といこうか。 へ? 実を言うと、ここから「3つ」の物語が同時進行するんだよ。 み、3つ!? 「表向き」と「裏」のストーリーだけじゃなくて!? そう… まず「表向きのストーリー」は、こんな感じだよね。 レイモンドの「偽装工作」を目撃したエミ

「マロニエの花、咲き乱れる頃」~『夜想曲集』#2「降っても晴れても」~カズオ・イシグロ徹底解剖・第68話

さて、主人公レイモンドと人妻エミリの二人による「交合ストーリー」における『ラバーマン』の意味を解説しよう。 前回を未読の人はコチラへ! レイモンドは、サラ・ボーンの『ラバーマン』を聴きながら、目を閉じて昔のことを思い出す。 およそ三十年前の大学時代のこと、エミリの部屋で「レコードプレーヤ」を囲み、この曲を二人で聴いていた。 Sarah Vaughan《LOVERMAN》 エミリがこの曲を選んだことには、非常に深い意味があるよな。 深い意味!? エミリがこの歌