マガジンのカバー画像

『バートン・フィンク(BARTON FINK)』コーエン兄弟

32
運営しているクリエイター

#アート

コーエン兄弟・徹底解剖その7『バートン・フィンク』④「621号室と623号室の謎」

さて、チェックインを済ませたバートン・フィンクは「621号室」へと向かった… 前回を未読の人はコチラ! 「”CHET!”って何?」 「621」っちゅう数字にも意味がありそうやな… もちろん。隣人チャーリーの部屋番号「623」もね。 どんな意味が隠されてると思う? 「階数」の「6」は「十戒」の「第6の戒律」やったから、「21」と「23」は… それぞれの戒律の詳細な項目じゃないの? 「戒律第6条、第21項:前項の目的を達するため、銃剣鈍器その他の凶器を保持しな

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖5「めくれる壁紙とヌメヌメの謎」

さて、今回はバートン・フィンクとチャーリーによる「最初の会話」から解説しよう。 前回を未読の人はコチラから! その④「621号室の意味とは?」 衝撃的な回やった… 毎回のことやけど。 隣室「623号室」の男が苦情に対する文句を言いに来たと思い、ビビりながらドアを開けたバートン… だけど、隣人はそんなに悪い男ではなかった。 ちなみにこのポーズは、フラ・アンジェリコ『受胎告知』の中に描かれていた「楽園を追われるアダム」のポーズだった! その通り。 バートンの

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖6「猛烈早打ちタイピストおばちゃんの謎」

さて、今回こそはガンガン進むぞ。 もう「バートン・フィン編」の6回目なのに、まだチャーリー(ジョン・グッドマン)の初登場シーンだもんね! マジでお願いしますよ! 早よせんと『サバービコン 仮面を被った街』の公開日になってまうで。 『サバービコン』公開記念で始めた企画だからね。まかしといて。 前回を未読の方は、まずコチラからどうぞ… さて、チャーリーと初めて「会った」夜が明け、昼近くにバートンは映画プロデューサーのベン・ガイズラーに会いに行く。 このシーンの始

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖10「チャーリーのレスリング講座」

さて、前回を未読の方はコチラをどうぞ。 第9回「チャーリーはカンザスシティで何してたの?」 チャーリーの「武勇伝」が、実は聖書の「某有名シーン」の説明だったとは驚いたね。 そんでもって「レスリング実演講座」は、聖書で「最も有名なシーン」の再現になっとるっちゅうハナシやったな… その通り。さっそく解説を進めるよ。 チャーリーによる「主イエスの変容」の説明を途中で遮ったバートン・フィンクは、暗い顔で、こう語る。 「君が羨ましいよ。君の仕事は単純だ。やることも、やり

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖11「海水浴をする女とネブカドネザル」

さて、チャーリーと「妄想レスリング」を行ったバートン・フィンクは、脚本のヒントとなる「何か」を掴み、タイプライターの置かれている机に向かった… 衝撃の「妄想レスリング」解説はコチラ! 徹底解説第10回「チャーリーのレスリング講座」 そしてバートンの頭の中で「打ち寄せる波の音」が鳴り響く。 壁に飾られている『The Bathing Beauty(海水浴をする美女)』の写真から、新しいイメージが湧いてくるんだね。 そして新たな妄想が始まる。 再び「アル中作家W.P

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖12「妄想ピクニック前編~オードリーの秘密」

さて、今回は映画『バートン・フィンク』の最重要シーン「バートン、W.P.メイヒュー、オードリーによる妄想ピクニック」を徹底解説しちゃうよ! シーンの冒頭3秒間で行われるクロスフェードをこれでもかと解説した前回はコチラ! 第11回『The Bathing Beauty』 シーンの「つなぎ目」をここまで語るやつ初めて見たわ。 しかもテクニカルな話は一切なしで。 ふふふ。 さて、バートンの部屋に飾ってある『The Bathing Beauty(水浴をする美女)』がフ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖14「妄想ピクニック後編~オールド・ブラック・ジョー」

さあ、いよいよ映画『バートン・フィンク』の山場ともいえる重要なシーンだ! 「妄想ピクニック」の後半、W.P.メイヒューが歌う『オールド・ブラック・ジョー』の徹底解説だよ! 日本語字幕や吹替えではなぜかコーエン兄弟の意図が完全にスルーされてしまった「問題の場面」なので、日本の映画ファンは必見だぞ! その前に、前回を未読の方はコチラをどうぞ。 第13回「預言者たちの午後」 さて、秘書兼愛人のオードリーに「汚物」扱いされたW.P.は、ムキになって強がりを言った… 「

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖15「タイツに身を包んだ大男って誰?」

もう第15回か。 さっきビデオのチャプター数をチェックしたら、「妄想ピクニック」のシーンが終わって丁度中間地点だったよ。 第14回「妄想ピクニック後篇」 っちゅうことは、第30回まで行く可能性があるってことか? それはない、安心してくれ。 今までは、この『バートン・フィンク』という映画の構造を説明するのに多くの時間を割いてきた。 この物語が、新約聖書の中の使徒パウロが書いた『ローマ人への手紙』がベースになっているってことや、主人公バートンが書く脚本が『マタイに

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖16「ネタバレ御免!」

さて、「靴」から始まった「妄想」シーンを解説するよ。 前回はコチラ! 第15回「タイツに身を包んだ大男って誰?」 バートンの妄想はとどまるところを知らんな。 次々と妄想キャラを生みだしては、奴らと会話しながら作品を作り上げていく。 一種のビョーキや。傍から見たら相当キモいやろ。 なんか、おかえもんに似てるよね。 オイラたちみたいな妄想キャラと会話しながら、映画や小説を解説していくところとか。 ・・・・・ そうゆうヤヤコシイこと言うたらアカン… さ、さあ

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖17「死と復活」

さて、作者であるコーエン兄弟自身による「ネタバレ」で話は進めやすくなったね。 前回でこの映画が、使徒パウロによる『ローマ人への手紙』をベースに、主人公バートン・フィンクが『マタイによる福音書』を書く物語だということが明らかにされた。 前回を未読の方はコチラ! 第16回「ネタバレ御免!」 しかしホテルの部屋番号が『ローマ人への手紙』の章節に対応しとるっちゅうのはオモロイよな。 作家としての魂を売ってしまったバートンの部屋「621号室」が、 6:21 その時あなた

コーエン兄弟『バートン・フィンク』徹底解剖21「蚊」

さて、いよいよ「事件発生」だ。 その前に、前回を未読の方はコチラ! 第20回「洗面所と排水パイプ」 「洗面所=ゴルゴタの丘」っちゅうのには驚いたな。 あんな細かい仕掛けが施されていたなんて、発見した僕も正直ビックリしたね。 さて、話を進めようか。 翌朝バートンは蚊の飛ぶ音で目覚めた。 ベッドの上を飛び回っていた蚊は、バートンの隣に寝ているオードリーの背中にとまる。 LAに来てからというもの、ずっとバートンを悩ませてきた「犯人」が、その姿をようやく見せた…