画像1

第13話「器をサガソーヤ」

岡部八郎
00:00 | 00:00
おしゃべりエッセイ、『SO!SO!』へようこそ。
おかはち、です。


ことしの夏の終わり。
佐賀県唐津市の隆太(りゅうた)窯から、
1枚のハガキが届きました。


「ぜひ作品を見に来てください」と。


おーっ、

隆太窯といえば、唐津焼の伝統を受け継ぎながら、現代的なエッセンスにあふれる作品を作り続けている中里隆(たかし)さんを筆頭に、息子さんの中里太亀(たき)さん、そしてボクに案内状を送ってくれたお孫さんの中里健太さんの中里親子三代の工房なんです。

唐津市内から車で20分ほど、
奥深い山あいにあるのが、隆太(りゅうた)窯。

いいかんじです。


SO!SO!

僕は、30年くらい前に、佐賀県唐津市の素敵な旅館・洋々閣(ようようかく)を取材したときに出会った、中里隆さんの、焼き締め技法の茶色のビヤグラスが大好きで。30年たったいまでも大切に使ってます。

素焼きもせず、釉薬(ゆうやく)もつけず、
1000度以上の高温で焼き締めたやきもの。
とっても素朴な手ざわりなんです。

なんといっても、中里隆さんは、陶芸の名門、唐津焼第十二代中里太郎衛門(たろうえんもん)さんの五男。

なのに、鹿児島県の種子島に渡り、種子島焼の『焼きしめ』技法を習得して、唐津南蛮という独自の世界をつくった、まさにニューウェイブな陶芸家。

そういう意味でも、きょう出会うお皿やぐい飲みは、僕なんかが手が届かない、
天文学的な金額じゃないのかなー、という不安で、もういっぱいでした。

そんな、僕の目に映ったのが、ほんのり淡い白い色の唐津粉引湯のみ。

いいなぁー、とおもって手にとったら、
おや、まぁ、
なんとそのくぼみが、ボクの右手になじむこと。

いいなぁー、ほしいなぁーと
くぼみのある湯のみのお尻?
あ、いえいえ底の金額をこそーっとのぞきこんだら、
おーーー、なんとか買えるぞ、というお値段。
これで、日本酒をのんだら、さぞや、うまかろうやぁー。


その湯のみもこちらに語りかけてきました。
「そんなにみつめてばかりいないで、早く私を福岡に連れてって―」って。
思わず、にやり。買ってしまいました。

そうかー、器を決める瞬間って、ひょっとしたら、
みつめあう恋愛のようなものかもしれませんね。


SO!SO!
中里隆さんの息子さん、中里太亀(たき)さんは、お客さんがくると魚屋さんに行って魚を仕込んできて魚をさばいて料理したり、お酒もえらく好きらしいので好きな酒を美味しく飲むためのぐい飲みをたくさんつくっているそうです。

なるほど、器やお皿や、ぐい飲みって、使う人の笑顔や皿を彩るお料理を空想しながら、作家さんたちはつくっているんだろうなぁ。

SO!SO!
ボクに案内状を送ってくれた、お孫さんの中里健太さんは、
ことしの冬、雪の舞う日に福岡市内で個展を開いてました。

中里隆さんのお孫さんって、
どんな作品つくるんだろうと気になって見に行ったら、
ぴったんこカンカン、
明るくて思い切った作品だったので、
すぐにファンになりました。
そのご縁で、唐津の山の中まで足を運んだ1日でした。

おしゃべりエッセイ、『SO!SO!』 おかはちでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?