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合コンでデラウェアと呼ばれていたあの頃

秋風が吹き、キラキラした光の粒のような葡萄たちが
スーパーの店頭に並び出す季節には、
あの日の合コンがまるで昨日のことのように思い出されます。


あれは4年前、31歳の頃だったでしょうか。
職場の後輩女子に連れられて、やってきた大阪の隠れ家的レストランバー。
木製のテーブル上にはろうそくの灯りが揺らぎ、
キリムのクッションが並ぶお洒落ソファーに座りながら
向かい合う男女8人。

全員20代、私だけ30代。

男性陣にたまたま同じ大学の元駅伝選手はいたものの、
学年も学部も違うし私駅伝1回も見たことないしで特に会話は広がらない。
しかも隠れ家すぎて女性陣全員道に迷って20分くらい遅れてしまい、初っ端から男性陣のテンションもどことなく低い。

そんな中、盛り上げ役の男性が口火を切る。


「誰が●●か当てゲームをしよう」


【ルール】
・守備側の女性陣は、男性陣の1人ひとりに物や動物の名前をつける。
・攻撃側の男性陣は「付き合うなら誰?」など気になる質問を投げかける。
・女性陣は誰が●●かは内緒のまま、「私だったらキリン」「えーーゾウの方が優しそうじゃない?!」などと会話を繰り広げる。
・一通り質問したあとに、男性陣は「キリンはA君、ゾウはC君……」などと正解を予想して回答。
・女性陣は誰が当たっているかは内緒のまま、正解数のみを回答。
・「ゾウは俺で当ってるんじゃない?!」などと相談しながら答えを修正、回答チャンスは3回。
・当たらなければ女性陣の勝ち、真相は闇の中。
・一通りおわったら交代、女性陣が攻撃側になって同じことを繰り返す。


いかにも合コンらしい浮ついた……いや、楽しげなゲームです。


まずは男性陣の攻撃から。
「今日一番頑張ってない奴は誰?」『セロテープかな?』『私もセロテープ』『強いて言えば……セロテープ』『別に頑張ってことはないけど……どうしても1人挙げるならセロテープ』などと
一通りの質疑応答後、男性陣の正解当てタイムに。
しかし正解数が1〜2個で推移したまま、なかなか当たらない。
3回までというルールであったが「いやお願い、もう1回!!」などと泣きが入り、結局全員分当たるまで繰り返され、6回目くらいでようやく当たった。
アパレル店員のセロテープが傷ついていた。


次に、女性陣の攻撃ターンである。


女性陣に付けられた名前は、りんご、オレンジ、まろん、デラウェア。

『この秋に一緒にデートしたいのは誰?』「俺はりんごかなーー、紅葉とか一緒に楽しんでくれそう。」「俺はオレンジ。ベレー帽似合いそう」、『結婚したら長く続きそうなのは誰?』「まろんかな、俺のくだらない話に笑ってくれそう。」などと
一通りの質疑応答後、女性陣の回答タイム。

『えーーー誰だろ、Hちゃんがりんごじゃない?』『いや、私はHちゃんまろんだと思う』などと答えは纏まらず
『菜子さん、決めてください!!』と年長者の私に最終バトンが渡される。


私「りんごがMちゃん、オレンジがYちゃん、
  まろんがHちゃん、デラウェアが私。」


少しの沈黙のあと


「……全員正解だわ」答える盛り上げ役。
「いや俺、びっくりして何も言えなかった……」とセロテープが呟く。
『菜子さん、すごーーい!!』と湧き上がる女性陣。


いやでも

あれじゃん、


きっと後輩からは言えないだろうけど


一番デラウェアって名前つけられそうなの、私じゃん。


なんなら、デラウェア

「この秋デートしたいのは?」とか、
「結婚したら長続きしそうなのは?」とか、


そういうので一切選ばれてないじゃん。


唯一デラウェアが選ばれたの
「謎の人脈がすごそう」とかそんなんだから。


大体、当てたらなんかちょっと変な空気流れたけれど

このゲーム、もしかしたら、


一発で当てにいくことが正解じゃない????



なんか、アレじゃないか?
女性同士でも「まろんは菜子さんですよ〜♡」とか
パワーゲームの中でお互いを牽制しながら相手を立てつつ、
表面はキャッキャしながら
不正解という過程を楽しむゲームだったのでは?


そして、なんか、何となくだけど
それが出来ないから


私はデラウェアと呼ばれるのでは?


難しい、難しすぎるよ。

合コンも、男女も、コミュニケーションも

この世の何もかもが私には難しすぎるよ。


この日の最後にはみんなで連絡先も交換しましたが、
当然その後私のLINEが鳴ることはなく、
私はその後同じメンバーで行った別の合コンで
ゴールデンパクチーというあだ名を付けられるに至りました。


4年後の今、そんな私めも先月の8月31日(野菜の日)に結婚しまして。

蓼食う虫も好き好きとはよく言ったものでデラウェア選んでもらったことに感謝しつつ、
結局最後まで私には「モテ」とは何かが分かりませんでした。
「あの頃の未来に僕らは立っているのかな」なんて思いつつ、デラウェアなりにあたたかい家庭を築きたい所存ですが
何ならそんなに葡萄は好きじゃないし
デラウェアがどれかは未だによく分かりません。



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