糖尿病の治療方針

以前よりも糖尿病の指標であるHbA1cに対して、基準が緩くなってきているのが最近の流れです。米国内科学会(ACP)はいくつかの臨床研究の結果にから、以下のような声明を発表しています。

1 臨床医は2型糖尿病患者の血糖管理目標を個別化すべきである。個別化においては、以下の項目についての議論を基にすべきである。①薬物療法の利益と害、②患者の嗜好、③患者の全身状態や生命予後、④治療の負担、⑤療養にかかる費用

2 臨床医はほとんどの(薬物療法中の)2型糖尿病患者のHbA1cの管理目標を7%以上8%未満とすべきである。

3 臨床医はHbA1c 6.5%未満の2型糖尿病患者では薬物療法の減量を検討すべきである。

4 臨床医は生命予後が10年未満と思われる以下のような2型糖尿病患者については、治療による利益よりも害が上回るため、HbA1cの目標を設定することを避け、高血糖に関連する自覚症状が最小限になるように治療すべきである。①80歳以上の高齢者、②介護施設入所者、③慢性疾病の合併者(認知症、がん、末期腎不全、重症慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全)

日本でも最近では、薬物療法中の高齢者糖尿病に対しては、HbA1cの管理目標に下限がある治療ガイドが発表されています。ポイントは個別に対応するということです。

薬が複数回飲めない人は、一日一回の薬にする
低血糖の心配がある人、低血糖の副作用の少ない薬にする

最近では週に一回の薬、注射などもあります。認知症、要介護状態の方は画一的に、HbA1c7.0未満を目指す必要はなく、無理のない治療を本人と相談して決めることが重要です。

正直いうと、85歳以上の高齢者に対して薬がどれぐらい効果があって、そのひとの健康寿命を延ばすのかというハッキリとした研究はありません。繰り返しになりますが、個別に対応することが重要です。個別に対応するという事は、総合的にその人を診療するという事です。

糖尿病の薬は新薬、合剤など新発売が続いています。製薬会社の営業も過熱している現状があります。過熱した営業、患者さんへの新薬、合剤等の過量投薬が患者さんにとって、マイナスになる可能性もあります。
岡部医院院長 岡部誠之介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?