実証と虚証

漢方用語で「実証」と「虚証」というものがあります。

実証とはがっちりとして筋肉質、声が力強い、夏は暑がるがバテない、消化機能が強く、冷たいものも平気、お相撲さんのようなイメージです。ほとんどの漢方を問題なく飲める、麻黄の入っている漢方、葛根湯などを飲んでも平気というのが実証です。

虚証とはやせ形、水太りで皮下脂肪が多く、夏バテ、寒がり、消化機能が弱い、麻黄の入っている漢方を飲んで胃がムカムカするという人は虚証です。他にも地黄、石膏、当帰などでも胃がムカムカすることが多いです。

ただ、実際には麻黄が飲めそうで飲めない、飲めなそうで飲めることもあります。ちょっと飲める人は中間証と考えます。また、これらは症状や時期によっても変化していきます。

少しマニアックな話になりますが「○○の裏処方は△△」といわれることがあります。
本当はこれを飲ませたいが、それより虚証なのでこちらにしようという事です
小柴胡湯→補中益気湯
桂枝茯苓丸→当帰芍薬散
女神散→加味逍遥散
などがあります。

小柴胡湯と補中益気湯の関係性はなかなか興味深い所で、補中益気湯は「医王湯」とも呼ばれ、江戸時代の漢方医の浅田宗伯いわく、本方を小柴胡湯の虚した状態に用いれば期待を裏切ることはないと話していたそうです。

補中益気湯の「中」は胃腸を指し、「益気」には「気」を増すという意味があります。胃腸の消化・吸収機能を整えて「気」を生み出し、病気に対する抵抗力を高める薬です。

私は補中益気湯と五苓散を併用して飲むことが多いのですが、補中治湿湯と呼ばれます。胃腸・吸収機能を整えて水のバランスを整えるといった所でしょうか。
岡部医院院長 岡部誠之介

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