イザってどんな時です?

銀座に熊本県物産館がある。先日、冷たい雨が降る夜、私は件の「銀座熊本館」にいた。

私が買い物を終えるか終えないかの時、店員さんたち(県直営のアンテナショップらしいので県職員の可能性も捨てきれないと勝手に思っている)がブロンドの女性の対応をしていた。

漏れ聞こえる範囲で、
ブ「ソニービルはどこかしら」
店1「えっと…工事中…”工事中”って英語でどう言うの?」
店2「えー…工事……ごめん、わからない」
といった内容であった。

前述のとおり私は店員さんたちを「県職員かな?」と勝手に思っていたので、(決してその店員二人が若くて可愛かったからでは断じてないことを強調したい)勝手な正義感と「俺が熊本県民を救わねば」と言う正義感を発動させ、颯爽と割って入ったのであった。

ざっと、
私「ソニービル、2年くらい前から工事中だよ。このビルの隣の囲い見たでしょ?アレアレ。」
ブ「うそ、マジですか。どうしよう、待ち合わせしてカフェに行きたいんだけど…」
私「そしたら向かいの東急プラザ行けば?多分カフェあるよ。それか待ち合わせなら銀座四丁目の交差点のがランドマークあるし、ドトールでいいなら角にドトールあるよ」
的な会話をした。無論、英語で。

一応英検は準二級を持っている。
この「準」がなんとも中途半端な、どっちともつかない生き方をしている私らしい称号なので、気に入ってあえて外さないでいる。(本当は「準」を外したくて仕方がなく、二級を5年ほど前に受けたところ二次の口述試験で落とされたことは野暮だから、あえて言うまいて)

ともかく、それくらいの会話ならなんとかなるのである。オーストラリアで添乗員をつけずに5泊6日を乗り切れるくらいの会話力ならあることは実証済みだ。ということでひっそりと、こと英語には、私にしては珍しく自信を持っていたりするのである。

それが、だ。仕事で外国人対応をするとなると途端に単語が出てこなくなるのである。

イザというときに決めきれない。これまた私らしい展開である。

いやまぁ一応言い訳をすると専門用語が多かったり、そもそも日本人に日本語で説明してもわかってもらえない時はわかってもらえないこともある仕事をしているので、仕方がないといえば仕方がないのであるが、そこは変にプライドを持っている私。非常に悔しい思いをする羽目になる。

ここぞというときの一発が決まらない経験、皆様にも経験はないだろうか。普段なら、プライベートならできるのに、オフィシャルな場で急にできなくなる経験、皆様にはないだろうか。

そうなってくるともう、オフィシャルとプライベートが逆なのではないかと、最近の私は思い始めている。すなわち、「俺仕事あってないんじゃね?」状態である。

プライベートではAdobeさんとこのクリエイティブクラウドちゃんを飄々と乗りこなし(大したものは作っていないが)、英語を使いこなし、小粋に愛車を乗り回す、こうして字面で並べてみるといよいよ持って結構イケてるおじさんなのである。

それがどうだ、オフィシャルの場では肩に力が入りまくり、上司に怯え、後輩に気を遣い、同期には友達がいないダメおじさんそのものなのである、お恥ずかしいことに。

リラックスした状態の方が、いい成果をあげられる。誰しもが身をもって理解していることだろう。(適度な緊張が必要、とする向きもあるが今はとりあえず目をつぶっておいてほしい)

自分が自分らしく居れる場所、それが今、(また、)どこにもなくなって来ている。よろしくない傾向だ。

本来の私のポテンシャルはこんなもんじゃないのだ。もっと輝いたっていいはずだ、とここまで打ってみて、はたと気がついた。どうやら私は、案外自分のことが好きらしい。

今度「ここぞ」という時が来たら、まず今の立場とかそういったものを忘れて、自分を好きになってみよう。そうだ、そうしよう。そうすれば、多分きっとうまく行くのではなかろうか。私は私で、それ以上でも以下でもないのだから。

そう思って今日こそは書ける気がする、とビズリーチの自己PR文の作文を始める。

そして一行も書けないまま、また明日を迎えるのだ。たぶん。

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