「カミゴロク」第3話
■【数年後・村・馬剣邸にある離れ・朝】
離れの寝床から、日が上らない早朝に誰よりも早く起床する15 歳になったカグマ。
水浴びをすると黒髪から赤髪に変わる。
それをコトサナの実から作った染料で黒染めをする。
そして、皆が起きてくる時間となり、掃除、朝食の準備、馬の世話など、朝の付き人としての仕事を3、4人と連携して淡々とこなすカグマ。
その目に生気はなく、明るかった性格が嘘のように抜け殻のようになっている。
■【村・馬剣邸・朝】
馬剣「・・・ふむ。お前も少しは役に立つようになったか、カグマ」
カグマ「・・・はいっ」
馬剣「孤児のようなお前を雇ってやった私への奉仕だ。さぞかし気分がいいだろう・・・?」
カグマ「・・・おっしゃる通りです」
生返事なカグマに飽き飽きする馬剣。
馬剣「ふんっ・・・まぁいい。今日は外出が許される日だが、昼飯の準備までには戻ってくるように。少しでも遅れた時はわかっているな・・・?」
カグマ「・・・はい、存じています」
馬剣「私としては折檻がそろそろ恋しくてな・・・わざと遅れてもいいのだぞ?」
カグマ「・・・失礼します」
そう言って部屋から出ていくカグマ。
後ろに控えていた付き人Aが馬剣に近寄る。
付き人A「・・・馬剣様はなぜ、出自も分からぬあのようなモノを置いておられるのです・・・?」
ニヤリと笑う馬剣。
馬剣「奴には利用価値があるのだ・・・あの藤御門秀鳴を陥れるための・・・な」
■【山中・昼過ぎ】
山にコトサナの実を収穫しにいったカグマ。
その手には、ゼンが残した自生場所が記された地図が握られている。
■【山中・家・昼間】
ツクヨと猪を倒した場所を通り、以前、ゼンとツクヨと住んでいた家に到着する。
半壊し、煤だらけだらけとなっている。
カグマ「・・・ただいま、ツクヨ、ゼンさん」
■【山中・家の中・昼過ぎ】
すり鉢を使って無くなりそうになっていた染料を作り足すカグマ。
■【回想・数年前・家の中・夜】
ゼンが村人達に殺される前にカグマに言った言葉を思いだす。
ゼン「__________いいか、俺の身に何かあったとしても、村人達を逆恨みするなよ。その復讐の火は、心にしまい、来るべき時に正しく燃やすんだ。そうしないと今のお前じゃ、復讐や悲しみに身を滅ぼし、最後にはあっけなく死んじまうのがオチだ。いいか、必ず"その時"は来る。あの方は俺に言ったんだ。『いつか迎えに来るその時まで、我が子を任せたぞ』・・・ってな。それまでは村人達に紛れ、耐え凌ぐんだ」
■【山中・家の中・昼過ぎ】
カグマ「ゼンさん・・・ツクヨ・・・俺はもう・・・無理かもしれない・・・流れる月日が心を癒す事はなくて、常にすり減らされる日々。あの村で笑顔で挨拶される度に、親切にされる度に吐き気がするんだ・・・全員死んでくれって、殺したいって思ってるのに、普通のフリをしなきゃいけない・・・なあ、いつまでこんな日々を過ごせばいいんだ・・・?」
もちろん、返事が返ってくるわけがなかった。
カグマ「・・・俺は怖いよ。自分が自分じゃなくなる感覚・・・いつかゼンさんとツクヨのことが俺の中で薄まって、あいつらと同じになっちまうんじゃないかってさ・・・」
カグマ「ゼンさん・・・ツクヨ・・・誰か、誰か____________助けてくれよ」
■【村・昼過ぎ】
馬剣の元に戻ったカグマ。
昼飯時が終わると、馬剣が行脚の付き人の一員としカグマを同行させる。
そして、村の視察へときた馬剣達一向。
すると、ある小さな男の子が、馬件の服に持っていた食べ物をこぼしてしまう。
馬剣「_____________この童を殺せ。カグマよ」
カグマ「え・・・」
子供「ご、ごめんなさい・・・!」
子供の近くに親らしき人は見当たらず、泣きながら許しを請う子供。
馬剣「私の着ているものを汚したのだ。童だろうがなんだろうが、この村じゃ当然の摂理だろう・・・?なぁ、皆の衆よ」
すると、周りの村人達が迎合する。
村人A「そうだそうだ!」
村人B「殺せ!殺せ!」
カグマ<この村は・・・この世の中は・・・何にも変わっちゃいねえ>
馬剣「・・・カグマ、早うせんか」
カグマ「俺は_________俺は_________」
馬剣「もう、良い。私手ずから沙汰を下そう」
そう言って、式神を召喚し、子供を襲わせる馬剣。
泣いている子供がツクヨの姿と重なる。
カグマ<俺はまた・・・繰り返すのか・・・・?また、失うのか・・・?>
カグマ<そんなのはもう・・・いやだ!!!!>
そして、式神無しで力を使い、子供を救うカグマ。
それを見ていた衆人がざわつきだす。
付き人A「式神なしで特異な力を使った!?まさかこいつ・・・」
馬剣「やっと正体を表したなあ!禍身子よ!」
そう言って、近くにあった水の入った桶を掴みカグマにかけ、赤髪を露わにする馬剣。
馬剣「お前を手土産に私は、官の陰陽師へと成り上がるぞ!」
そして、式神を使いカグマ襲う馬剣。
死を悟るカグマ。
???「やっぱり僕の愛する我が子に間違いなかったね。長い間待たせたね。迎えにきたよ。僕が君のパパだ!」
そう言って式神を消しとばし、さっきまで泣いていた男の子がカグマを守る。
その姿が変わり、それはまさに神だった。
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