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2021年8月24日の乾杯

相次ぐ公演中止の悲報やその中でもなんとか観ることができた喬太郎師匠、世田谷シルク、DULL-COLORED POP、ムニなど。
そしてなにより、相変わらずの猛暑と非常事態宣言のなかで、互いが抱く毎日への想いを語り合います。

👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。こんばんは。よろしくお願いします。
👨こんばんは。
👩まずは、乾杯しましょうか。
👨はい。今日はソフトドリンクなのですけれどね。
👩そうですね。ちょっとおねえさんの胃の具合が余り良くないということで。
👨私も合わせて。今日はね、そば茶があるのですよ。冷やした・・。
👩ああ、いいですね。
👨じゃあ、とりあえず。乾杯!
👩乾杯!
👨あの、無印良品で・・・
👩・・・ぷはぁ、はい。
👨今、がっつり飲んでいましたね。
👩あははは。めちゃめちゃおいしくてごっくんごっくん飲んでいましたね。喉が渇いていたみたい。
👨なにを飲んでいらしたんですか。
👩りんごジュースです。
👨ああ、りんごジュースはおいしそうですね。贅沢ですよね。
👩美味しいですよね。りんごジュース。
👨なんか、無印良品でね、1Lの冷水筒とそれで水出しができるティーバックを売っていて、水を満たしてぽんとティーバックをひとつ放り込んで冷蔵庫に冷やしておくと、いろんなものができるシリーズというのが何種類かあってそのひとつがそば茶なんですよ。
👩へぇ。
👨このお茶、どれも口がさっぱりとして美味しい。
👩ほう。
👨黒豆大豆茶とかトウモロコシ茶とかもあるんですけどね。
👩おいしそう。
👨そんなに高くないものなので、今順番に試していますけれど。ちょっと大人買いをして。
👩うふふふ。いいですね。
👨あと、せっかく夏なんで、最近はあの、300円ショップってあるじゃないですか。
👩ありますね。
👨そこに、枝豆とかとうもろこしをレンチンするプラスチック製の容器を売っていて、
👩ほうほう。
👨昔はいちいちお湯を沸かして茹でるのが面倒くさくて枝豆とかそんなに食べなかったのですけれど、それだと5分チンをするだけで枝豆が食べられるということがわかったので、今日も枝豆が横にありますけれど。
👩あぁ、ははは。とても良いですねぇ。枝豆はお酒のお供!!
👨やっぱり夏は枝豆が基本という感じがするし。
👩うん。ビールが飲みたいですねー、ビヤホールとかで。
👨そうですよね。
👩でもねぇ、なかなかねぇ。
👨夏は美味しいスピルナーが飲みたい。
👩ああ、いいですね。……とんでもないことになっているからねぇ、今はねぇ。
👨そうですね、やっぱり3千人とか4千人とか言われちゃうとね。
👩規模がもう違いすぎて。
👨まあねぇ。
👩知り合いの方どんどんお芝居が中止になっていますし。
👨なっていますね
👩今酷いね。
👨ええ、私は来週とか再来週のに予約したもののうち、8割ぐらいが公演中止になりましたね。
👩あぁ……
👨なんかね、もう、次々にくるんですよ。予約した翌々日に中止のお知らせが来たとかもある。
👩うんうん。
👨今日はこれが中止になりました、次の日にはこれが延期になりましたとかいって。
👩はい。
👨もう9月の公演などでも延期になってしまったやつがあって。
👩うんうん。
👨果報プロデュースの『あゆみ』とかすごく楽しみにしていたのに。
👩なくなったの?中止ですか。
👨延期だって。なんか2022年秋を目安に調整しているらしい。
👩そうか。延期になった作品を今公演打とうとしているけど、それも出来ないかもっていう話もあるしね。
👨そう。だからね、ちょっとこう、可哀想になってきますよね。
👩ほんとですよ。私の知り合いの団体さんがそうで。延期になった作品ができなくなったらもう中止かもって言っていて。
👨うーん、リベンジの返り討ちってやつね。
👩いやぁきつい、きついですね…
👨それはもう切ないですよね。
👩本当に。
👨だから、喬太郎師匠の勉強会も、良くできたと思って。
👩うん、本当にそうですよね。
👨たまたま師匠の三鷹勉強会でご一緒になって。おねえさんもいらっしゃっていて。
👩はい。
👨あれは面白かったですよね。
👩そうですね、とても。
👨でも、ご存じでした、あの噺。喬太郎さんがこうね、中入り前ととりに続き物的にやったあの噺って・・・。その、三鷹の師匠の勉強会って昼夜じゃないですか。昼も聴いたというお客様が前にいらっしゃって、やっぱりあの噺の前段を前後半でやっていたみたいで。実は四席にわたる噺だったみたいで。
👩ああ、そうらしいですね。
👨で、三遊亭圓朝作という。ただ、この噺は他の師匠方がやったのを観たことがないんですよね。
👩うん。
👨で、気になってググってみたら確かに江戸時代から明治時代の名人、初代圓朝の手によるものらしいのですけれど、これには元ネタがあるらしくて、それが『トスカ』。
👩えっ?なんですって。
👨『トスカ』。
👩『トスカ』?
👨あの、プッチーニのオペラに『トスカ』っていうのがあるんですけれどね。
👩ああぁーー!
👨あれって元々はヴィクトリアン・サルドゥという方の戯曲で、それをプッチーニはオペラに仕立てたみたいなのだけれど、
👩はい。
👨なんか日本では劇作家の福地桜痴という方がいらっしゃって、戯曲の段階でこんなのがあるんだってその筋立てを圓朝師匠にお話したんですって。まだオペラになる前に。
👩うん。
👨そうしたら、圓朝師匠が「おっ、こりゃあおもしろいね」てなもんでね、なんかいきなり江戸っ子になってしまいましたけれど。
👩うふふふ。
👨「こりゃあおもしろいね」っていうので落語にしたんですって。
👩ほぅ。 そうなんだ。
👨で、それが、プッチーニさんがオペラにする10年以上前なんですって。
👩へえぇ。
👨だから、どっちかといったら今回聴いた噺のほうがオペラより歴史は古いという。
👩うんうん。
👨今、『蒼天をを突く』という大河ドラマをNHKでやっているけれど、渋沢栄一が生きた時代、あの頃の日本、明治になっていろんな海外の文化が入り込んできたころの日本って、そういう情報の吸収の仕方が今想像するよりも遙かにすごかったのだろうなという感じがするよね。
👩うん。
👨で、もっと言っちゃうと、プッチーニさんがオペラにする前に、日本では『舞扇恨之刃』という歌舞伎にもなっているんですって、あれ。
👩いろんなものに・・・、そうなんだ。凄いな。
👨そうらしいですよ。
👩知らなかった。
👨まあ、わたしとて、殆どがネットを通して頂いた知識ですけれど。
👩ありがたい世の中ですね。いろんな知識が知れるから。
👨そう。だけどさ、凄えなぁと思って。でも、そうやってみんながいろいろ作ると言うことはベースの物語が面白いのでしょうね。確かに面白かったし。
👩そうですね。 観ていてやっぱりとても面白かったし。
👨で、演者さんによってどんどん熟していくような要素もあったじゃないですか。
👩うんうん。
👨だけど、あの噺をやっている人って、私が調べた範囲では喬太郎師匠以外いないんですよね。
👩へぇ、そうなんだ。なんでなんだろ、渋いからですかね?私は大好きでしたが。
👨えーと、どっちかっていうと講談に近いじゃないですか、最後も読み切るという態だったし。
👩ああ、そうなのかも。落語の笑いを・・、でも笑いだけではないじゃないですか、落語って。いろんな噺があるから。
👨まあ、江戸前は人情噺っていうのもありますからね。
👩うんうん。まあだけど、そういう中でもさ、めっちゃ面白かったんだけれど。
👨私も、めっちゃ面白かったですけれどね。それは。その一方で、もっといろんな人が手を挙げていろんなやり方でやったらそれはそれでいろんな味が出て面白いんだろうなとか思ったりも、
👩観てみたいですよね。
👨だけど、この『錦の舞布』でググったら、最初に出てくるのは喬太郎師匠のお名前なんですよ。で、後がない。
👩わあ、そうなんだ。
👨喬太郎師匠のネタおろしはずいぶん前らしいんだけれど、6~7年前に高座にかけたというあたりからWeb上に感想なども上がっていて。だけど師匠自身もあまりしょっちゅうやっている噺ではないとおもうんですよ。
👩勉強会だからって、
👨ご本人もおっしゃってましたものね。
👩うん、確かに勉強会という形でないとちょっと難しいのかなというところはあるけれど、そういうのが好きな人もいるからね。少なくとも私は好きだったし。
👨まあ中にはね、喬太郎師匠といったら「コロッケそば」とかね、なんか池袋のすごくニッチな場所の話とかね、そういう噺じゃないとという人もいるけれど。。
👩そうですね。その型破りなところが観たいというようなところは確かに期待としては持たれてしまっているから。私にもそういうところはありましたし。
👨で、それでいきなり今回みたいなのがでてくると、固まってしまう人がいるのかもしれないけれど。だけどあれはほんと良い高座でしたよね。良い噺というか味わい深かった。おもしろかったですね。
👩うんうん、凄くすごく。
👨加えてあの会は、中入り後の小んぶさんの『棒鱈』も面白かったし。うふふ。
👩面白かったーー。
👨まあ、喬太郎師匠のあの噺の間に『棒鱈』が挟まるって言うのもすごいけれどね。
👩うふふふ。
👨まあ、最初の木はちさんの『子ほめ』は許すとしてもね。うふふ。木はちさんもきちんとしっかりに演じていたし。
👩『子ほめ』とか『棒鱈』とか、なんだかほかの方のも聴いたことがあって。落語を好きな方ってもう演目とかをものすごく詳しく知っていらっしゃるじゃないですか。
👨あぁ、はいはい。
👩私は全然そこまでじゃなくて、ほんとに聴いていく中で、この噺知っているなぁみたいなのがようやっとあるかなくらいなものなのですよ。
👨ああ、なるほど。
👩だけどね、だんだんそういう体験が出来る様になってくるから面白いですね、いろんなものを聴きたいな、何回もいろんな人のいろんな演目を聴きたいなという気持ちも凄くわかってきたし、楽しい。うん、楽しいですね。多分今、落語がもう一段楽しくなる時期なのだろうなぁと思っていますね。
👨そう、でね、同じ人の噺でも、なんか歳を重ねてくると変わってくるわけですよ。私は元々が関西のひとだから、上方の、まあ上方って言うのは二つ目とか真打ちとかはないんですけれど、若い頃上方落語ばっかり聴いていて、で、同じ演者がそのころに演じたものをまた東京に来て落語会で演じることってたまにあって。で、そうすると演じ方が端から違うんですよね。同じ噺をされても。そこには工夫も円熟もあって。こっちも歳を喰ったからいえるのだけれど、そうやって一人の噺家さんを若い頃から人生をかけて観ていくというのは、それなりにすてきで。
👩うふふ。
👨まあ、変化を感じるっていうのは、逆にこっちもそれだけ老けていっているということですけれどね。
👩それはみんな一緒ですから。
👨ええ、歳を取るというのはだれにも公平だから。またでも、喬太郎師匠を聴きにいきたいですよね。
👩うん、聴きに行きたい。ほんとに、ほんとに。とっても。
👨そういうお気に入りの噺家さんが何人かいて、いろんな噺を聴けるといいね。まあ喬太郎さんは持っていらっしゃる噺も多いし。そういう推しの噺家さんを2~3人つくって時々聴きにいくのであれば、演劇とはまた別の楽しさがあるのではないかなぁと思うのですけれどね。
👩うんうん。

喬太郎写真UP


👨でもね、なんか今、演劇のほうは、皆さんさっきのお話ではないけれど苦労をされていらっしゃるみたいで。
👩うーん。今は大変そうですね。感染者の数がいままでの比じゃないから。もう、もうどうなっちゃうんだ。
👨それもあってか、世田谷シルクなんかは、堀川炎さんの一人芝居をLe Decoの地下で観客5人限定というのをやってましたね。4人か。
👩へぇ、
👨でね、安全に配慮してね、とにかくスタッフも最小限しか口をきかない。
👩うん。
👨で、ステージの全面は透明なシートで覆って、天井もきちんと覆って、完全に客席から隔離された密閉された隔離空間を、なんか水槽の中を見せるような感じで、でもそうすると音が籠もるから、みんなヘットフォンを、完全に消毒されていますって袋に入っているヘットフォンをつけて中の音を聞くって言う一人芝居を50分ほどの尺でやっていましたけれどね。
👩へぇ、おもしろーい。大変興味をひかれました!
👨要は一人の女性がコロナで巣籠もりをしているっていう態なわけですよ。だから、そういう女性は時々エクササイズなんかもするからね、そういうエクササイズ仕様のダンスなんかも織り入れて。元々堀川さんは踊れる人だから。でその中で鑑に向かっているような感じで一人どや顔なんかもして。あと過去の出来事や思い出なんかにも吸い込まれたりもして。いろんな工夫があって50分があっという間で飽きませんでしたけれどね。
👩へぇぇーー
👨で、観終わったらとっとと帰れという。
👩えっ。
👨とっとと帰りなさいという。
👩あははは。
👨しかも観客が4人だから、エレベーターも自然と1人ずつ順番なのですよ。
👩わあ、すごい。
👨まあ、地下一階から一階だから、時間もそんなにかからないのだけれど。
👩うんうん。
👨あそこまで徹底するのもひとつの手だなという。
👩チケット代はいくらなんですか?
👨3000円。
👩なんと!
👨来週から9月10日まで配信もやっていてそれも同じ値段。多分、だからね、ほかではこういう公演をやっていなかったし、全部ソールドアウトだったろうし、また時間も50分程度だったから、一日3回くらいはできたのだろうけれど、加えて配信もやるけれど、それにしたって多分原価ぎりぎりの公演ですよね、きっと。
👩そうですね。
👨でもそこはなんか、演劇人の心意気でね。で、一旦やりだしたら堀川さんは元々とんでもなくノウハウも力も実績もある方なので、とことんまで工夫をするというか・・。
👩そういうイメージがありますね。けっこう…良い意味で風変わりな作品を作っていらっしゃる方だなぁと思いますし。ほかでは見ないというか。
👨だってさ、人がヘットフォンをしたらいきなりクラッカーを食べ始めるんですよ。
👩ボリボリボリって?あはは。
👨そうすると、彼女がなまなましく生きているなぁ感があってね。
👩はい。
👨あれは上手いなぁと思いましたけれど。ただ、あそこまでしっかりやって頂けると観る側としても採算面が気になるというか。なにはともあれ、安全対策もしっかりで、安心だったし、観ることができてよかったです。まあ、箱が小さくても大きくても出演者もスタッフも観客も最大限気をつけて、できるだけのことをやるということなのだろうなとも思った。大きいところでも、中くらいのところでも、そういうやり方をしていることに変わりはないし、今観るどのお芝居もそれで安心にちゃんとまわっていたから。スズナリもしっかりしていたし。
👩うん。

世田谷シルク写真UP


👨Dull-Colored Popってまだ公演中だと思うけれど、ザ・スズナリで。『丘の上、ねむの木産婦人科』というお芝居で、なんというか妊娠にまつわる物語というかカップル達の話で。
👩うんうん。
👨いろんなベクトルですごく良くできた舞台でした。私はAというか俳優が男女を自らの性別で演じるノーマル版をみましたけれど。男女逆転版もあるみたいですけれど。
👩へぇ。どういう逆転版?
👨全部カップルの話なの。産婦人科を訪れる男女のオムニバスみたいな感じに、カップルたちの物語が積み上がっていくの。子供を望んでいたり、出産間近だったり、堕胎をしようとしたりするカップルがいて、そこにはいろんなシチュエーションの設定もあるわけですよ。年齢差もそれぞれだし、専業主婦の女性もいれば、ほぼ主夫になっている男性もいたり。夫が豊かだったり、妻が豊かだったり、収入のバランスが均衡していたり、共に貧しかったり妊娠中絶を考えるカップルもいたり、あと昔というか昭和中盤のころのカップルも編み込まれ、未来のカップルの姿なども描かれている。で、Bというかもう一つのバージョンでは、私も観ていないからあまりちゃんとしたことは言えないけれど、その男女のキャストが逆転しているらしいのね。
👩ふんふん。
👨確かにあれは俳優の演じるジェンダーがひっくり返れば間違いなく新たに面白いとは思う。というか、みえないものがみえる気がする。男女それぞれが心に描いていることを、自分のジェンダーで演じることと相手のジェンダーを見てそれを演じるのでは、浮かびあがってくるものが違う気がする。そこに現れて出てくるものが。
👩ううん、そうですね。
👨体験で演じるのと想像で演じるのって違うじゃないですか、きっと。観る方にしても、たとえ々戯曲をベースにしていても受け取るものは違う気がする。多分おもしろいのだろうなと思う。ただこのご時世、個人的に観劇の本数制限をかけていて、その中でいろんな作り手の方に触れたかったので、つい逡巡しちゃいましたけれど。
👩そうか。興味はめちゃめちゃありますけれどね。
👨うん、まだやっているのだったら、まあ当日券などで観に行っても良いのですけれど。かなり迷ってはいますけれど。
👩以前みたいに観たいと思ったものが自由に観れない状況というものが辛いですね。
👨コロナ前だったら、躊躇なく両方を予約していますよね。まあ、今回は作演が谷賢一さんですしね。

DCPOP写真UP


👩みんな頑張っているんですよ。その、演劇人みんな滅茶苦茶がんばっている。でもさ、もうさ、長いじゃないですか。そろそろねぇ、元から辛かったけれど、限界をむかえている、むかえそうな方が一杯いるんですよね。もうとっくの昔にへこたれていてもおかしくないような状態なのだけれど、演劇業界ね。それでも、それでもって思って頑張っていた、なんとか気を張って頑張っていた人たちが「本当に辛いよ」ってぽろっとこぼす段階なんですよ。もうほんとに…。そんなこと言いたくないだろうし、そういうのを出さないようにってしている人も多い中でね、でもね、もう…もちろんそれは演劇業界だけに限ったことではないし、みんながそうだとは思うんだけれど、でもねぇ、そろそろねぇ。本当にこのままだと、演劇人口がとっても減るだろうし、というか実際にもう減っているだろうし、
👨ずっと耐えていて、いつか良くなると思っていたのが、悪い方にいっているものね、今。更に。
👩そう。そうそう。そうなんですよ。
👨ええっ、あの人が感染みたいな話っていうのがいくつかあったし、中でも普通に終演後の役者面会で喋っていた人が罹患したとかいわれると、マジで心が痛むしね。もう何人かいたけれど。
👩ねぇ、そうだよね。しかもさ、その一生懸命やっている人たち。自分だけじゃないじゃないですか。みんな気をつけているんだよ?ほんとうに。多くの人はね。まえにちょっとだけ愚痴ったけれどさ、いろんな団体があるんだが、でもその、気をつけていても自分だけではないし、自分がどれだけ気をつけていてもどこから?って言う場合もあるじゃないですか。もうね心が痛い。本当に心が痛い。制作でいろいろな現場に入っている知り合いがいるんですけれど。中止になりました。と。コロナに罹患された方がいらっしゃってと。本当に、凄く気をつけて、罹ってしまったかたは本当に気をつけていたし、徹底もしていたと。そんな気を抜いていたとかいうことではまったくないのに、中止になったらしいんですよね。もうね、辛いって。普段そんなことは余り言わない方なんだけれどね、ツイッターでもう辛いって、もう限界ですって言っていて。本当に頑張っていらっしゃったのにって…それ見て私、もう何も言えななくて。
👨私なんかでも時々メールとかDMでご案内を頂いて、じゃあ予約しますって観に行くような話ってあるじゃないですか。俳優の方とか、主宰の方とかから。
👩うん。
👨でね、そうして予約をした公演が中止になったときのごめんなさいメールってやっぱり頂くわけですよ。でね、さらっとご連絡いただければ、ああしょうがないですねで返せるのだけれど、そこに想いみたいなものが透けて読めてしまうとやっぱり凄く辛いですよね。
👩うんうん。
👨また、こちらが誘いを受けてくれたっていう感謝の気持ちも頂くので、これは最後まで実らせてあげたかったなって観る方からしても思いますよね。
👩そうですよね。私たちもさ、楽しい話題だったりその感想みたいなことかがめちゃめちゃしたいんですよ。したいんだけれど,ちょっとね。知っても欲しいわけよね。その知らない人だったりとかにね。いやもう、これを読んでくださっている方はさ、演劇をお好きな方が多いのかなとも思いますし、あんまりそんなこと知らないよという方は少ないのかもしれないけれど、でも誰かの何かで目に入るときに、全然関係ない方がこうやってもし覗きにきあてくださっているのであれば。いやね、本当に。そして、そしてね、家に籠もらなければならなくなりとか、外に出れなくなったときに、やっぱり芸術とかエンタメの大切さって出てくるというか、実感するじゃないですか。
👨そうですn。
👩家でなにか観なかったら、エンタメがなければ多分心持たない。いろんな人がいるけれど、私は心が持たないなと思うわけですよ。日々エンターティメントを提供してくださる方がいらっしゃるから、家にいても楽しい時間が過ごせるっていうね。もちろん舞台ってなったらその場に行ってというのもあるかもしれないけれど、映像にいっぱいしてくれてたりさ、見れるようにしてくれていたり、また配信だったりとかね、うん、あるわけで。
👨やっぱりね、前から言ってるけれど、配信というのは確かにありがたいし、あれなんだけれど、一時期中途半端に戻ることができて再び生を観てしまうと、生の力というのは簡単にその配信の力を凌駕してしまう部分というのがあるんでね。
👩ライブはね。それはもう、そりゃそうですよ。やっぱりそれが舞台の
👨舞台の舞台たる・・・
👩良さ、魅力の大きいところだから。
👨うん。なんかね、しかもその・・・、このご時世、そうはいっても創作ということとか演劇の歩みが停まっているわけではないのでね。こないだね、ムニっていう団体を観てきたんですよ。『カメラ・ラブズ・ミー』っていうタイトルで、えっと中編だね、1時間とか1時間半ぐらいの作品を3本上演したんですけれど。90分のやつは単独で、60分と50分のやつは連続上演みたいにしてA/Bみたいな形でやっていたんですけれどね。えーと宮崎玲奈さんという女性が作・演をやっていらっしゃるのですけれど。
👩はい。
👨その戯曲の組み上がりの感覚がねぇ、あまり体験したことのないようなものなの。
👩ほうほう。
👨一見ね、バラバラにエピソードが差し入れられていくように感じるのだけれど、なんだろ、観る側の無意識の中でルーズにちゃんと繋がっているの、それが。
👩ふーん。
👨すごく不思議な広がりを持った作品なんですよ。
👩ふんふん。
👨情景とかって普通はシーンが変わることでしっかりと変わっていくじゃないですか。それがこの舞台では、時にまったくちがう時間や風景がシームレスにルーズに繋がっているの。だけど、そこのところの流れとか揺らぎとかがそうすることによって・・・、ほら、人間の思うことって演劇のシーンみたいにきちっとしていないじゃないですか。頭の中ってそういう風にしてすごくルーズに巡っていってるじゃないですか。
👩うん。
👨そのルーズなところがなんかものすごく凄くリアルなの。
👩ふーん。
👨最初に観たのが90分の『須磨浦旅行譚』という作品で、二人ずれの女性と偶然知り合った男性が須磨浦公園に向かいその当りを車で巡る話なのだけれど、その車の動きもただの具象ではなくて、むしろ3人のダンスなんですよ。
👩ふんふん。
👨で、毎回場の空気にあわせてさりげなく動き方がちがったりもするのね。だけど、観る側も慣れてくるとその動き方によってその時の空気の質感やそれぞれの心情が伝わってきたりするの。あの、実は身体をからめて表現している部分というのもけっこうあって、いろんなことがあって、言葉とか台詞とはまた違う感覚がやってくるの。あれはねすごくおもしろかったです。このコロナ渦の最中とはいえ行って良かった。
👩あははは。そういうのに出会えているというのは素晴らしいですね。良かったですね、観ることができて。
👨で、観終わった後でさ、そういうものに出会えたということで高揚していたのだけれど、
👩はい。

ムに写真UP


👨ふっと考えたときに、もしコロナがなかったら、きっとそういうことがもっとたくさん演劇の中で歩んでいたかも知れないし、なんか、コロナになれてしまったけれど、実はそのことでもったいない時間を過ごしているのではないかという気にもなったのね。
👩そうか、そうなんですかねぇ。そうかなぁ。
👨いや、実はもっとたくさんの人がいろいろなものを作れるのに、今は押さえられているのだなぁともおもって。
👩ああ、それは確かに思う。だけど、コロナは絶対厭だよ、前から言っているけれど。絶対厭だと思うんだが、でもそれを言っても…。コロナは現状あるものだから。今そういう状況が…どうしようもない状況があって、それで、なんというかあったから今があると思うのね。
👨それはそうだね。
👩なかったらもっとということよりは、それがあったから今現状のそういう舞台になっている。その経験をいまみんなしているから、全てをね。いろんな言い方をされるけれどさ、やはり経験は財産ですよ。あの、演劇で言えば、創作には自分の知ったこと、知識だったりや経験だったりがものすごく関わるじゃない。
👨そうだね。
👩もう、もう、主になるものじゃないですか。そういうことを考えると、コロナは早くなんとか落ち着いて欲しいし、あったことは、この数年は本当にしんどい。みんながしんどい想いをしていると思っているし、あってほしくなかったと思ってしまうけれど、でもそれを見ることができたのはきっとコロナがあったからだともおもう。コロナがなかったら見れなかった舞台だと思うから、言わんときましょうって思う。
👨私もね、なんかおねえさんの話はよくわかるっていうか賛成で、今までもそう思っていたのだけれど、初めてだね、なんかこういう風に悔しいなって思ったのは。
👩うん、それはきっと信じてくださっているからだと思いますね。おじさんが演劇人たちを、演劇を。信じてくださっているから出る言葉だと思うし、それは本当にありがたいし、そうやって信じてくださる方がいるから、やっぱり、演劇業界まだなんとかがんばるぞってやってくれている人がいると思う。
👨まあ確かにそういうのがあるうちはまだ演劇って死んでいないのだろうなって間違いなく思うし、で、ほかのものにも確かにコロナの中でやるからこその頑張りみたいなものを感じることもあるしね。
👩うんうん。
👨で、それが実際に果実になっているところも見ているし。まあ、そうなってしまっていることはそうだし、解消できるかっていってもだれも解消できないのでしょうがないんだけれどね。
👩うん。
👨でも、観終わっての帰り道、それはね、ふっと思いました。
👩いやいや。信じてくださっているなぁって思いました。だけどね、これは、それだけではいけないかなぁと思って。そう、そうはね言ってもせんないことだから、より辛くなってしまうからね。
👨そうそう、だから演劇だけではなくて、たとえば美味しいものが食べられないとかね、最初のはなしじゃないけれど。
👩そうですね。人に会えないとかね、辛いよ。
👨おねえさんと、会って酔っ払って馬鹿話が言えないとかね。
👩したいですね。いつまで続くんだとは思うけど、もう生きるしかないしなともおもってしまって。なんというか、これはちょっとだけあれですけれど、国は頼れんしなぁというのもあって。
👨まあ、頼れないという部分と頑張っているっていう部分の両方を感じるんだけれどね。
👩そうですね、それは思う。あの、なんにもとは思わない。やってくれたことはあるし。でも足りてないと思うの。謝っているかもしれないけれど、全然足りてないよって思う。見てって。
👨そもそも彼らにも、もうちょっと物の言い方があるのではとは思うけれどね。
👩うん、そう。思う。自粛、自粛っていうけれど補償はって。補償もなにもなく生きていけるわけないだろ、みんな霞を喰って生きているわけじゃないんだぞっていうのはすごく思う。なに考えてるのって。そういう感覚がなかったら意味なくない?なんのための政治なのっていうのは思っちゃうけれどね。
👨そう、そうせざるを得ないにしても、もうちょっと言い方があるだろうがと思うんだよね。
👩ねぇ。気持ちがわからな過ぎるんだよ。よく考えて何とかしようと思っている人もいるとはおもうんだけれどね、そういう人がこう出てこれないっていうか。
👨みんなね、ただ逆らっているわけじゃないじゃん。みんなそれなりに努力しているんだけれど、なんかそのあたりに対する思いやりにかけているんだよね。
👩欠けてる。ほんとさ、だからほんとさ、自分たちのことを上流の人間だと思っているのかっていう苛立ちがね。みんなが、みんながそうじゃないよ。もちろんそうじゃないのはわかっているつもり。だけどそういう人が目に映る。映るんだ、目に。腹が立つんだ。あはは。いいかげんにせいよって思うんだ。
👨なんか最近上流市民っていう言い方があるのね。私、知らなかったんだけれど。
👩うん、あるある。なんだそれって思う。
👨まあね、ワクチンとかはね、そうはいってもなんとか他のアジアの国々に比べたら日本はかっさらってきてくれているし。         
👩うん、それは確かにね。やってくれているとは思うが。
👨たとえばインドとかアメリカに比べてね、今ニュースで見ていると悲惨なことも多いけれど、それでも、まだ亡くなる方が少ないんでね。それを見ていると政府がどうのこうのということだけではなくて、日本人が頑張っているのだなと思うんですよ・
👩もう頑張りすぎて、精神病院とかのカウンセリンなどはもうめちゃくちゃ大変なのでは。心を病む人がめっちゃいるのではとは思うけれどね。頑張るっていうことは無理をするっていうことでもあるからね。曲がってしまうからね、すぐにね。心配。
👨いや、いまは頑張れていても、どこかでなんかポキって音がする時が怖いよね、すごく
👩そうそう、来るよ、絶対。来ないわけがないもの、来るよ。いやぁでも、でも言わなければいけないんだ、私たちは。もう少しかもしれない。もう少しがんばろって。がんばろ、みんな。
👨うん。
👩がんばりましょう。
👨だって昔のスペイン風邪の時だって第5波まできたけれど最後は収まったからね。
👩うん。
👨あとインドだってあれだけ酷かったけれど、なんか今は凄く新規の感染者が減ったんでしょ、急に。
👩うんうん
👨ただ、インドの場合は、何十万人もの方が亡くなって集団免疫ができたから減ったという話もあるみたいだけれど。
👩ああ、なるほどねぇ。
👨だから、地球が破滅してしまうわけではないんですよ。酷い話ではあるけれど。                                     
👩でも、だから、優しい言葉をつかっていこう、私たちは。みんなだって、しんどい思いをして、それでも頑張れ、頑張れって言われているわけだから、私たちまでそれを言うことはないのかも。それはほかの人たちがやってくれているよ。
👨うん、そうだね。
👩おねえさんは思う。だからみんな心大事にして、おうちでしかできることはないかもしれないけれど、美味しいご飯を食べたり、あの最近は取り寄せでね、美味しいご飯とかもできるから、そういうもので自分を満たしたりしましょうね。
👨枝豆だっておいしいもの。
👩そうだよ!だから、私たちからは……。私たちも頑張るし、みんなにエールを。自分の心を大事にして、無理するんじゃなくて、自分を癒やす方法をいろいろ探して見て欲しいと思います。
👨はい、そう、だから今できる精一杯をやるということですよね、結局は。
👩そう、今日はだから、そんな優しい、自分に優しくしようというお話、ですね。
👨うん、そうですね。そうすれば、たとえば「ムニ」のような良き演劇の新たな才能にも巡り会えるかもしれないし。
👩うん、うん。本当に。そう。
👨まあ、そういうことで、では今日はそろそろ終わりにしましょうか。
👩はい。
👨ということで、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨おやすみなさい・
👩皆様、自分のことを大事に、楽しいことをいっぱい見つけていきましょう。

エンド写真UP

(ご参考)

・三遊亭圓朝『錦の舞布』の由来については、2014年4月6日に東洋経済オンラインに掲載された古書山 たかし氏の『円朝の「お須賀」は「トスカ」の先輩だった』を参照しました。
https://toyokeizai.net/articles/-/34551

・世田谷シルク『跡 2020』
2021年8月18日(水)~22日(日)@ ギャラリールデコ B1階
配信 2021年8月27日(金)19時30分~9月10日(金)19時30分
https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/369 3000円
脚本・演出・出演 堀川炎

・DULL-COLORED POP 『丘の上、ねむのき産婦人科』
2021年8月11日(水) ~ 29日(日)@ザ・スズナリ
2021年9月1日(水)~5日(日)@in→dependent theatre 2nd
配信 2021年8月27日(金)17時~9月26(日)23時59分
   A公演 https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/385 
   B公演 https://v2.kan-geki.com/live-streaming/ticket/406 

   通常チケット 3300円 特典付きチケット 5000円 
脚本・演出 谷賢一
出演 東谷英人、内田倭史(劇団スポーツ)、大内彩加、
倉橋愛実、塚越健一、宮地洸成(マチルダアパルトマン)、
岸田研二、木下祐子、冨永さくら、
湯舟すぴか、李そじん、渡邊りょう

・ムニ『カメラ・ラブズ・ミー!』
2021年8月19日[木] - 8月22日[日]@こまばアゴラ劇場
作・演出:宮崎玲奈
出演:
『須磨浦旅行譚』
石渡愛(青年団)、南風盛もえ(青年団)、藤家矢麻刀
『回る顔』
新田佑梨(青年団)、黒澤多生(青年団)、
伊藤拓(青年団)、日向子(青年団)
『真昼森を抜ける』
南風盛もえ(青年団)、藤家矢麻刀

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