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2021年12月22日の乾杯

2021年12月22日の乾杯。年末にむけて次々に上演される舞台たちに翻弄されるおじさん。いろいろと観劇へのためらいが消えないおねえさん。そんな中でおじさんが観たお芝居たち、Mo'xtra Achive、アマヤドリ、FUKAIPRODUCE羽衣、宮崎企画、Cuebicle、MCRなどの公演やお芝居を観ることへの想いについて語ります。


👨こんばんは、演劇のおじさんと
👩おねえさんです。よろしくお願いします。
👨よろしくお願いします。いやぁ、もうあといくつ寝るとお正月という時期になってきましたね。
👩そうですね。もう、あっという間ですね。
👨また数え年でひとつ齢を重ねるというね。
👩うんうん。
👨いやぁ、でもそんなせわしない中ではありますが、世間ではほんと一気に芝居の数が増えましたよね。
👩ほんとうに。そうなってくれないと困りますっ。
👨まあね。ただ、こんなに増えるとは思っていなかったので流石にちょっとびっくりですけれど。
👩今のように、またこれから先もできるかどうかなんていうのはわからないですけれどね。
👨また新しいのがじわじわと勢力を拡大してきているからね・・。
👩なんでしたっけ、えーと、「オ」のつくやつ。新しい変異株
👨あれ、なんだっけすぐには出てこないね、あとで調べておくけど(オミクロン株でした)。
👩そういうのもありますしね。
👨そんな中でも、みんな凄く興行というか公演をやりたかったみたいで。助成金の関係とかもあるらしいですけど。またあちこちでダブルというか、なんだろ、一つの公演でも2バージョンとか2作品を上演みたいなパターンもボコボコ出てきてくれて。
👩なんやかんやで稽古も出来ますからね。
👨ただ、とある方に、ちゃんと2mの距離を取って伺ったところによると、稽古も、マスクは面倒くさいけどしているんだって。マスクは外せないと。
👩そうですねー
👨だけど、Zoomでやるとかはもう完全になくなったみたいですね。
👩うんうん。
👨Zoomではわからないって。
👩やっぱり会話とかのタイミングなんて全然ずれてしまうしね。
👨きっとそんなに単純な物ではないですものね、演劇って。Zoomでやるにはもっとずっとデリケートですものね。
👩はい。
👨なんかね、須貝英さんという方がいらっしゃって、彼がMo'xtra Achiveの名義で公演をされていて、それも2本立てだったのですけれどね。両方とも従前の彼の作品の再演なのですけれど。1本は『リバース、リバース、リバース!』、もう1本は『サイクルサークルクロニクル』。『サイクルサークル・・』の方はこれからの可能性をたくさん感じる若い俳優さんを集めて、で、もう一本の方はもう働き盛りというか俳優の筋肉ががっつりついた女優さん達のお芝居だったのですけれど。

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👩うん。
👨場所はApocシアター。
👩ほうほう。
👨で、それぞれにとても面白かったのです。加えてなんか片方のバージョンだけだと須貝さんらしいお芝居を観ることができてよかったなあだけなのだけれど、両方を観るとそれぞれの作品ごとの俳優の力量とかポテンシャリティとか勢いとかそういうところまでを受け取ることができて、それも興味深かった。
👩最近はたくさん観ていらっしゃるんですか、おじさんは。
👨そうですね、気がつけばてんこ盛りで観ていますね。
👩私は全然観ていないからなぁ。
👨なにせ本数も増えて、しかも前より賑わってもいるので。
👩暫く我慢の時だったから。やる方も観る方も鬱憤が溜まっていたのだろうなとおもいますからねぇ。
👨えぇ。それで、観た方も単純に観たというだけではなくて、ある意味なにか解放された部分もあるじゃないですか。そのお芝居の世界に入り浸るることによって。
👩そうだね。
👨そのパワーってとても大事なのだなと客席に座っていてすごく思いました。
👩なるほど。
👨あれはやっぱり大切な時間ですよ。観客がぎっちり詰まって全員が拍手するっていうあのひとときは。
👩うん。
👨今でもキャパの半分でやっているところもあるんだけれど、こう用心をしてみたいな感じで。もちろんそれは間違っていることではないのだけれど、でもやっぱりフルキャパの客席でやってよいお芝居だったときの、終演後の空間の熱量はまったく違う気がして。で、久しぶりにそれを体験して、あぁ、やっぱりこれが演劇だよねみたいなことはおもいましたけれどね。
👩うん。
👨あと、ただ演劇がよかったではなくて、この演劇のここが良かったみたいに興行ごとに比較してそれぞれの良さをいえるようにもなってきていて、。それもまた贅沢なことなのですよね、観る側にとっては、昔と比べると。昔というか半年前とか一年前と比べると。オリンピックみたいに参加することに意義があるという世界ではないから、もはや。
👩うーん。
👨さっき話した須貝英さんの舞台にしても、ベテランというか場数も踏み表現に秀でた俳優たちが作る舞台と、まだ若くて、でも才に溢れた俳優たちが作る舞台ではやっぱりもらうものが違って、そこに感じる技量の差っていうのは、あるんですよ、やっぱり。片方『リバース・リバース・リバース!』には浅野千鶴さんとか小口ふみかさんとか、あとiakuでよく拝見する橋爪未萠里さん、今年もたんと観た橘花梨さんも。前に東葛スポーツなどで見た寺田華佳さんも目鼻がくっきりとした良いお芝居だった。でさ、たとえば浅野さんと橋爪さんが編むお芝居の密度って、もうひとつの若い俳優たちの編むものとそのお芝居を比べると、やっぱり違うのね。
👩それを比べられるのはおもしろいしなぁ。
👨演目が違うということもあるのかもしれないけれど、やっぱり基本的な技量のちがいというのは、ただ一本観ただけだと感じないけれど、二本をそれぞれに観ると感じる。同じ演出家でもあるしね、作品は違うにしても。そうすると、この技量の俳優に対してはこのようにして演出をしていくのねという感じもなんとなく見えてきて。また逆に技量に差があったとしても、それだけではない俳優の勢いとかが醸す魅力もあるなぁとか感じたり。
👩うーん。
👨一つのお芝居があったときに、演出家はそれをキャストのどの部分で魅力的にしていくのかその手口が、いや手口とは言わないか、その演出のやり方みたいなものが今回違って感じられていて、それも面白かったですね。
👩うん。
👨で、それと同じような話をすると一公演二本立てを今アマヤドリもやっていてね。
👩はいはい。

アマヤドリPhoto UP


👨両方とも再演なのだけれど、片方は2006年ごろの古い作品を再演していて、それをアマヤドリでも若い人たちと最近のアマヤドリとはそれほど強くご縁のない俳優たちでつくっていたのですよ。
👩へぇ。
👨でも、それを俳優たちの力を引き出してしっかりとアマヤドリの作品にする演出家の力というのがあったし。俳優たちもがっつりそれに答えていて見応えがあった。
👩ふんふん。
👨もう一本は『青いポスト』という作品で、2年か3年前に王子(花まる学習会王子小劇場)でやったお芝居なのですけれど、それはアマヤドリの中でも作品の初演から支えていた俳優さんがけっこう今回も演じていて。一川幸恵さんとか榊奈津美さんとか大塚由祈子さんとかもそうだし、ほら、アマヤドリには双子の女優さんがいるじゃないですか。相葉るか・りこのお二人が今回も主演を張っているんだけれど、コロナの前にやってコロナ後の上演だと、同じ役を演じていく中でもその中で彼女たちの役者筋がちゃんとついたというのが観ていてとてもわかるんだよね。
👩ほうほう
👨あと、『青いポスト』には中村早苗さんというそれこそ多分「ひょっとこ乱舞」のころからの女優がご出演で、で、彼女が物語上のロールに加えて最初に観客を物語に導く役と終盤に物語が終わることを観客に告げる役をするんだけれど、その時の空間の作り方のさりげなくものすごく見事なこと。完全に舞台と客席をひとつにしてその中で語りを出し入れするみたいな、そういう力をみることができて。
👩はいはい。
👨彼女の手練れの立ち振る舞いというか、元々一人芝居なども観たことがあって至芸に近いとは思っていたけれど、やっぱりあそこの域までいくと、こうなんか小劇場界の人間国宝を観るような感じすらあってね。作品に加えてそこでも良いものを観たなぁって思った。
👩ふんふん。
👨しかも劇場も一時小劇場演劇から離れていたシアタートップスだったしね。
👩ああっ、はいはい。
👨そう、シアタートップスが昔に比べてめちゃくちゃきれいになってた。
👩そうなんだ。あらあら、全然知らなかった、その辺。
👨昔ってさ、そんなにきれいではないけれど、まあまあアクセスが便利で見やすいというイメージの劇場だったのだけれど。
👩うん。
👨今回コロナ対策で座席間の隙間をつくっていたこともあるのかもしれないけれど、また照明などもリニューアルに際して新しい設備に入れ替えたのかもだけれど、なにか空間からやってくるものの解像度が違うの。で、今回アマヤドリってどちらの作品も舞台空間を広く使う必要があるから、客席のA・B列を撤去して、十分な広さを確保したりもしていて。
👩ふんふん。
👨そうすると、アマヤドリ独特のムーブメントがさ、
👩ああ、動きのね。
👨群舞というか。それも両方の作品共にしっかりと機能していてとても美しかった。
👩うん。
👨ああ、これなら、今に進化した演劇でも使えるなという劇場になっていた。
👩はい。
👨やっぱり本多グループってすごいのねって。
👩すごいよねぇ
👨ええ。
👩そうか。
👨なんか懐かしいでしょ、おねえさんも。
👩うん、懐かしすぎました。
👨ただ、唯一直せていなかったのがエレベーターで。
👩うん?
👨あそこのエレベーターって本当に遅いのよ、一台しかないし。
👩ああーー
👨昔から、よく言えば極端に安全運転なのよ。アマヤドリは2日がかりで観て、最初の日にはそれでもかなり待ってエレベーターでいったのだけれど、2日目の時はもうエレベーターの前に制作スタッフが立っていて「はい、階段で上がりましょう、階段でお願いします」って誘導をしていた。
👩うわぁ。
👨ほら、あのビルって上に飲食店なんかもたくさん入っているから、そういうところからクレームが来たんじゃないかなぁ、きっと。なんか、エレベーターのドアの前に立って半強制的みたいな形で誘導していたので、4階かぁと思いつつ、観劇人の根性の見せどころみたいな意識も芽生えてそれもちょっと燃えたりもしましたけれどね。
👩そうね
👨作品に話を戻すとどちらにもアマヤドリのスピリットを感じて。ただなんか、アマヤドリをずっと演じている方と比較的アマヤドリ経験の浅い方たちが演じるものはやっぱり質感がすこし違っていて。比較的経験の浅い方が多い方の『水』という作品は、意外にもほんとうに昔見ていたアマヤドリ、もしかするとひょっとこ乱舞からアマヤドリに変わった時期に感じた新鮮さすら思い起こさせるテイストがどこかに残っていて、それも面白かった。すごくピュアにも思えるし、動きというものにたくさん委ねて演じているところもあるし。客演陣には演じることに対してとてもしっかりした強さを持つ方もいて、物語が曖昧にならないし。そうそう、きっとコンサバティブなバレエでも踊ることができるのだろうなと思えるような女優がいらっしゃって、冨永さくらさんだったかな、その身体での表現が入ると、それでまた舞台の印象というか研がれ方の感覚が変わったりもして目を瞠った。元々身体の使い方について圧倒的な洗練のある団体だけれど、その中でも際立っている俳優さんが動ける空間が設えられていて、その動きがトップスの舞台だと映えるのよ。
👩へぇ、そうだったんだ。いやぁ面白いものを観られていない悔しさある…観たい気持ちもあるなぁ。
👨うん。
👩劇場もね。
👨うふふふ。そうそうアマヤドリは26日までやっているよ、確か
👩あぁ・。いや、でも今舞台は…観に行く時間がない。時間も心の余裕もない。
👨しかもアマヤドリの作品は尺が長いし。
👩アマヤドリさん、疲れるんだよなぁ。良い意味でね?あはは。
👨物理的にも疲れるとは思うよ、それぞれ140分と135分の上演時間だから。
👩そうそう。
👨あれ、昼夜で観たら死ぬよね。
👩うん、きっと腰が爆発してしまう。
👨でもね、椅子はそんなに悪くなかったよ。
👩腰にやさしい…??
👨多分??でもどちらか一本でも観るという手はあるけれどね。
👩うーん。
👨あとね、最近観た中でとてもおもしろかったのは・・・。あの、FUKAIPRODUCE羽衣って団体があるじゃないですか。
👩ありますね!
👨あそこの、劇場ではなくて森下スタジオでの公演があって。
👩はい。

甘え子ちゃん太郎 photoUP


👨美術とか照明とかもとてもシンプルで。で、日頃演出をやっている糸井さんが今回は歌って踊っていたからね。
👩へぇぇ。
👨まあ、あそこが標榜しているのは妙―ジカルだから、たとえ少しぐらい踊りがついていけなくても、それはそれで味なんですけれどね。
👩うんうん。
👨むしろ、その必死さだって愛でるべきなのだのだけれど。しかもね、ただ必死なだけではなくて、ほんとに糸井さんが踊ることで醸される味っていうのがあるんですよ。
👩・・なるほど。
👨それはディスっているわけでもなんでもなくて、本当にそうなの。ただ必死なだけではなくて、彼が踊る、彼が本当に楽しそうな態で深井さんのとなりで踊っていることで変わったり色づいたりする空気というか空間があるんですよ。。
👩へぇぇ。
👨まあ、ゆうてもスタジオなので。私はたまたま一番前の席で拝見していたのですけれどね、そういうのが間近に感じられる。舞台といってもほぼフラットだし、美術も真ん中にひとつ丸い台が置いてあってまわりになんとなくここまでが舞台ですよってわかる境界があるだけで、建て込みのたの字もないとてもシンプルなものだったし。強いて言えば中央に札が一枚下がっていて『あの世』って書いてあるだけなのね。
👩ふんふん。
👨そこでけっこう艶めかしいシーンなども歌って踊って演じてもらったりもするのだけれど、なんだろ、そうすると人間が生きていることの生々しさみたいなもの、えーと、人間に限らず生命の存在の生々しさが、むしろ劇場などで観るよりもよりどわっとたっぷりと出ていて。最近のFUKAIPRODUCE羽衣にはものすごく洗練された舞台もあって、それはそれでめっちゃ素晴らしいのだけれど、それとは違った、なんかもういちど彼らの原点に帰ろうみたいな感じの作品だったので、
👩うん。
👨また来年になれば劇場でやるみたいなことも書いてあったけれど、それとは別に今回の作品を観ることができたのはラッキーだったなぁとも思う。
👩うんうん。
👨ほんともう、ほとんど宝くじみたいなチケットでね、この舞台。
👩ほう。
👨なんか突然にこれから販売しますみたいなのがツイッターで流れてきて、その数十分後にはほとんど完売していたという感じだったから。
👩凄いな、あっというまだ。
👨だってさぁ、吉祥寺シアターを一週間とか満席にできる団体がさぁ、多分今回は1ステージ50くらいしか席がなかったと思うんだよね。
👩そんなの一瞬でなくなるに決まっている。
👨うん、下手すると三鷹の喬太郎師匠よりたちが悪いからね。
👩あははは。
👨で、そのあとにちょっとキャンセルが出たので追加って流れた瞬間にまたチケットが蒸発したみたいなこともあったらしい。
👩ふーん。
👨だから、たまたまその時にツイッターをいじっていたおじさんだけがチケットを取れたみたいな。
👩いやぁ、よかったですね。
👨ええ。人間というのは運というか、犬ですら歩くから棒にあたるというのはあるので、やっぱりツイッターはマメにみておかなければいかんなぁという、訳の分からない教訓でしたが。
👩うふふ、なるほど。
👨まあ、だから、先週の木曜日から日曜日までが全部マチソワになりまして。
👩うんうん。
👨結局4日間で8本見たわけで、もれなく違う味わいで楽しませていただいたけれど、さすがにちょいと疲れまして。
👩はい。
👨でもね、昔とか、コロナが世界を席巻する前は普通にそうだったなというのも思い出しましたけれどね。毎日違った色合いの舞台を楽しんで、飽きないというか。
👩あぁ、うふふ。
👨そうだ、あれも良かったんですよ。アトリエ春風舎で宮崎企画という、青年団リンクの団体があって、『東京の1日』という舞台をやったのですけれどね。

宮崎企画 photo UP


👩ほうほう。
👨それもすごく良くて。ただ単純に東京に暮らす人たちの一日が切り取られてコラージュされていくだけの作品ではあるのですけれどね。凄く緻密に作られてもいて俳優のかたもしっかりお芝居をしているのだけれど、観ていると演じられたものを受け取るという感覚が割と少なくて、そこにとてもナチュラルな時間がいくつか自然に生まれて、時にルーズに、ああちょっとここが絡まったみたいだな、いろいろがなんとなく交わっていて気が付けばそれが東京で毎日を生きている感覚だよなって、日々がとても瑞々しく伝わってくるし、終演後にあとを引くというかとても心に残るなにかがある作品だったのですけれど。たとえばアマヤドリなどの世界とは真逆、まあ真逆とまではいわないけれども違うベクトルの作品なのだけれど、その世界の肌触りはしっかり心に刻まれているのね。
👩どんなふうに?
👨たとえば散歩とかしているとふっと作品の印象が心によみがえって来ることがある。その舞台から訪れたものを風景に自然に重ね合わせて、ああ、私はこんな時間を過ごしているんだなぁってていう風に思う。そこには、作品を観る側に刻む、日々を生きることへのデッサン力っていうのかな、そういう何かがあったのだと思う。
👩言葉で聴くだけだから、想像の旅…。
👨うん、それはもう百聞は一見にしかずなのかもしれないけれどね。
👩まあなかなか。今は舞台が観れないから、いろんな面でね。
👨うん。そうだね。あのさ、そのなんだろ、キャパシティみたいなものってあるじゃないですか。
👩ありますね。
👨それは当然、おねえさんのお芝居を観れる観れないという話もあるし、それだけではなくて演劇を作る方のキャパシティもあるし、社会環境とかもあるし、なかなかそれらが一致してうまく回っていく機会というのは、特にコロナなどが絡むと、実はそんなにないのかもしれないなぁと思う。
👩ほう?
👨記憶を辿ったりおねえさんの話を聴いているとなんかそんな気がする。
👩そうなのかな…そっか。
👨でも一方で、それが容易に一致する環境が生まれると、もう観劇本数年間300本越えおじさんが雨後のたけのこみたいに続出するみたいな感じにもなるわけで。赤い靴をはいたおじさんじゃないけれど観劇を止められずに死ぬまで劇場を回り続けるみたいなね、実際にだれか止めてよこの赤い靴みたいなことを劇場のロビーでおじさんたちが言い合っていた時代ってあったわけじゃないですか。
👩まあまあ、ありましたね。
👨で、そういう疾走するような時代が本当によかったのかというのがというと、それについては私、実は今でもわかっていなくって。
👩はい。
👨でも、この一週間というのは、間違いなくそういう日々のことも思い出すような繁忙さだったので、なんか良し悪しは別にいろんなことを考えてしまったのですよね。
👩うん。
👨表現や芸術というのは、きちんきちんと均等に観る側にやってくるわけではないし、いろんなものが出来てくると様々に秀逸な表現などであっても観る側の受け皿から溢れてしまうこともあるし。一方で、あんなものができました、こんなものができましたということで収まる量ではない創作達って、観る方も全然関係ない作品を観てもそこから相乗効果みたいな形でイメージの膨らみを得ることもあるし、  
👩そうですね。
👨そういう意味ではなんか、すごくアバウトな言い方だけれど、世の中ってなにか様々な波形を作りちゃんと呼吸をして、歩んでいる気がするのね。
👩うんうん。
👨ちょうどコロナのころっていうのは暫らく息を止めていたのが、また息を吸い息を吐きだしたりして。だんだん社会の血のめぐりも戻ってというかよくなって来たりしてみたいな。
👩うん。
👨でも、血のめぐりが良くなりすぎると、過食にもなるし最後は高血圧か何かでぶっ倒れたりもするのだろうけれど。
👩うんうん。
👨ただ観るっていうことでも、実はフラットにしていることではないのだなぁというのは、なんとなく最近感じていることですけれどね。
👩うーん。
👨まあ、一本一本がおもしろいからね。
👩そうですね。
👨文句はないのですけれどね。
👩それはすごく良いことだよね。一本一本がちゃんと面白い、それはすごく久しぶりでもあるわけだから、それがちょっとなんだろうな、俳優たちや作り手たちが切磋琢磨してくれていたんだなぁって思えるから。それはありがたいことですよ。やめてしまってもおかしくないのに、というかやめてしまった人もいっぱいいるのに。
👨で、なにより嬉しかったのは、みんなが自分の語り口で、自分の感性で表現を研ぎ続けていてくれたということね。見失わなかったというか。
👩うんうん。
👨そう、肋骨蜜柑同好会のフジタタイセイさんっていらっしゃるじゃないですか。
👩はい。
👨彼が、肋骨蜜柑同好会の名義ではなかったのだけれど、一本作・演出をした『Transcendent Express』という舞台を上野ストアハウスで観て。やっぱりフジタさんにはフジタさんらしい企みがあってね。

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👩へぇ。
👨開場時というかシーン0の段階でというか、開演時間に至る前から俳優たちがずっとあちこちに佇んで舞台を動かし続けて。台詞がめちゃくちゃ多い芝居ではないとおもうのだけれど、開演してからも舞台の動かし方が滅茶苦茶うまいの。
👩ほうほう。
👨装置などをいろいろに動かしていろんな角度でシーンごとが見えるようにしたり、そんな中で物語自体も最初の視座を最後にはガラッとかえるような仕掛けも作ったのね。この舞台の研がれ方は最近溢れた舞台たちのなかでも埋もれずに際立ちを持っていた。まあ、田瓶市はでてこなかったけれど、やっぱりフジタさんの作るものだなぁという気もしたし。
なにか最後にはフジタさんや俳優たちののどや顔が浮かんでくるような舞台でしたね。あとね、色がしっかりといえばその極めつけはMCRですよ。
👩あぁ。

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👨あの、ほんとによくもまあこれだけ小汚い舞台美術をつくれるなぁみたいな、絶妙に散らかった部屋を作って、
👩へぇぇぇ
👨舞台前方の客席との距離を作るスペースにいろんなガラクタがごろごろ並んでいるんだもの。で、建て込まれた部屋の畳とかも悪意すら感じるのような畳をわざと敷いているし。それが抽象ではなくてめちゃくちゃ具象なのですよ。で、壁があるのだけれど、いかにもうすっぺらい壁で、隣の音がガンガンに響いてきて、それをバンバン叩くようなシーンがあったりとかね。ほんと殺伐とした部屋でのダメな人たちのドラマなんだけれど。
👩そういう舞台が出てきているのはまた良いですね。今もう、世の中が大変なのに、舞台でまで大変なものを観たくないって思っていたから、またそういうのが出てきているのはほんと嬉しい。まあ、これからもちょっとまだまだ心配ではあるのだけれど、でも、このままね、ちゃんと気をつけて芸術活動が滞りなく行えるような、そういう風に進んでいってほしいですね、本当に。
👨あの、MCRのことをもうちょっとだけいうと、あんなにピュアな愛を舞台からうけとったことがなかったですよ。主宰の桜井さんと客演で五反田団の後藤飛鳥さんがただお互いに好きだ、好きだって言いあうシーンがあって。
👩そういうシーンあるある。
👨そこまでに至る気持ちの道程っていうのを桜井さんも後藤さんもしっかりと作り込んでいるのね、その殺伐としたなかで。なんで私はMCRで泣くのかがよくわからないのだけれど、さんざん笑っていたにも関わらず、うるっと涙が出るようなお芝居でしたね。澤唯さんと加茂井彩音さんが編む関係も心に残った。才溢れる人はどんな時代であってもこういうものを変わることなく、熱量を減じることなくきちんと作るんだなぁと思った。
👩変わっていくのもそうだけれど、変わらないでいてくれるのもありがたい話ですね。
👨うん、ていうか、力ある人はどんな時代になってもそう易々とはその力を失わないのだろうなぁとも思いました。
👩うん、まだまだ大変だけれど、穏やかながらも、ただ確実にまた舞台というものが観れるようになって、なんていうかな、私も観ることができるようになったらいいなとは思う。
👨なるほど。
👩すぐには無理ですけれど。
👨うん、でも、そういうのって、実はちょっとしたきっかけかもしれないじじゃないかなぁとも思うし。
👩はい。
👨こうボタンを掛け違いながらしていると、なんかこれどうしようもないなぁって言う感じでなにもできなくなってしまうけれど、そういう状態であってもふっとした瞬間にボタンがはずれてまた正しくかかることもあるかもしれないなぁという気もするのですけれどね。
👩はい。
👨そういえば、たとえばほら、来年あたりに舞台以外に、たとえばこんなことをしたいとか観に行きたいとかってあるのですか?
👩まだね、今はとにかく年末を乗り切ることがおねえさんの一番なので、年明けのことは年が明けてから考えようと。
👨鬼に笑われても困るでしょうしね。
👩そうです。
👨そうか、じゃあ年が明けたら、来年になったら一回目では、来年はこれをしましょうみたいなことを言うっていうのをやってもいい?
👩そうですね。年明けに抱負などの話をしましょう!!
👨ええ、わかりました。はやくこいこいお正月と。それは今日はこのくらいにしましょうか。
👩はい、そうですね。
👨では、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。皆様よいお年をになるのかな。
👨そうですね。
👩ではみなさま良いお年を。
👨来年もよろしくお願いいたします。

(ご参考)

・Mo’xtra Archive『912・3R/3C・ス』
2021年12月15日(水)~12月20日(月)@APOCシアター
脚本・演出 : 須貝英
出演:
(上巻 『リバース,リバース,リバース!』)
寺田華佳、小口ふみか、橘花梨、
橋爪未萠里、浅野千鶴
(下巻『サイクルサークルクロニクル』)
大澤彩未、小林桃香(露と枕)、高見駿
西田真実子、東出薫、松本卓也
吉田紗也美、李勇雅、渡邉力(PAPALUWA)

・アマヤドリ 20周年記念公演 第二弾 『水』/『青いポスト』
2021年 12月16日(木)~26日(日)@新宿シアタートップス
脚本・演出 : 広田淳一
出演
『水』
河原翔太、徳倉マドカ、松尾理代、宮川飛鳥(以上、アマヤドリ)
一之瀬花音、阪本健大、木村聡太、齋藤拓海、冨永さくら、
瀬安勇志(南極ゴジラ)、福冨宝(劇想からまわりえっちゃん)
右手愛美(ピヨピヨレボリューション)
『青いポスト』
相葉るか、相葉りこ、榊菜津美
一川幸恵、大塚由祈子、中村早香(以上、アマヤドリ)
村山恵美、さんなぎ、ばばゆりな
佐藤美輝、星野李奈、菊地音々子

・FUKAIPRODUCE羽衣 トライアル公演:
『ニュー甘え子ちゃん太郎』
2021年12月16日(木)- 19日(日)@森下スタジオ Cスタジオ
プロデュース : 深井順子
作・演出・音楽 : 糸井幸之介
出演 :
深井順子 糸井幸之介 高橋義和 鯉和鮎美
新部聖子 岡本陽介 田島冴香(以上、FUKAIPRODUCE羽衣)
岩田里都(シラカン)葛生大雅(マチルダアパルトマン)

・青年団若手自主企画 vol.88 宮崎企画『東京の一日』
2021年12月16日[木] - 12月26日[日] @アトリエ春風舎
作・演出 : 宮崎玲奈
出演 :
 立蔵葉子(梨茄子)* 石渡愛* 黒澤多生* 南風盛もえ*  
伊藤拓* 黒澤優美 藤家矢麻刀 渡邉結衣 宮崎玲奈

・Cuebicle『Transcendent Express』
2021年12月10日(金)~19日(日)@上野ストアハウス
戯曲 : Alison Grace
演出 : フジタタイセイ(劇団肋骨蜜柑同好会)
出演 :
鍛治本大樹(演劇集団 キャラメルボックス)、佐野功、小寺悠介(青年団)
江益凛 すずきぺこ(FLAGGERS)、藤本悠希(劇団肋骨蜜柑同好会)
ハマカワフミエ

・MCR『あの部屋が燃えろ』
2021年12月15日(水)~19日(日)@下北沢 OFF・OFFシアター
作・演出 : 櫻井智也
出演  :
澤唯(サマカト)、櫻井智也、日栄洋祐(キリンバズウカ)  
後藤飛鳥(五反田団)、加茂井彩音、青木絵璃
本井博之、上田房子、おがわじゅんや、北島広貴   


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