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#100『心を上手に透視する方法』トルステン・ハーフェナー

 ちょっとしたした仕草に心模様が表れる――そのパターンを豊富な経験から解き明かす本。タイトルはちょっと狙い過ぎている感があるが、精神と肉体の密接な関連性を分かり易く説明してくれる良書である。
 例えばだが

・同じ労働内容のスタッフを二つのグループに分け、片方のグループに「この仕事には痩せる効果がある」と伝えた。結果、そのグループは痩せた。
・握手をしてから質問すると、被験者が嘘を言う確率が下がる。
・炭酸水の缶のパッケージに黄色を少し足した。するとほとんどの被験者が無いはずのレモンの風味を感じ取った。
・否定的な言葉を見た後の被験者は否定的行動を取る。逆も同様。文章の内容はなく、単語を見ただけでこうなる。
・同じく老化に関する単語を見た後では、挙動が遅くなる。
・クラシック音楽が流れているとワインが3倍売れる。
・二つの指示を出されるとそれに従ってしまう!

 など、人間の思考・行動・感情は、暗示によって大きく変動する。
 特に最後のは驚きだが、著者は講演会で「じゃ、誰かステージに来て下さい」と言っても滅多に誰も来てくれないことに気付き、「じゃ、誰か立ってステージに来て下さい」と言い替えた所、容易に観客が出てきてくれるようになったと言う。面白い現象だ。しかし考えてみると確かにそうだ。
「ちょっと背中掻いてくれないか」と父が言ったとする。
「ん?ああ」と私は言いそうである。
「ちょっとこっち来て、背中掻いてくれないか」と言われたら、と想像する…
 従いそうである!

 著者は暗示に精通している。透視術(マインド・リーディング)は超能力ではなく、非常な注意深さと暗示その他の組み合わせであると言う。
 またこれはよく言われることだが、暗示は私たちにとって実は常なる状態である。つまり「私は出来ない子だ」とか「私はこの作業が出来る」とか、そういうことも暗示である。そして暗示は潜在能力の中から特定の能力(または無能力)を引き出す、という訳だ。
 私なんか、ヒーリングをしている。これをどうやってやるのだろう、と考えると、暗示であることは明らかである。
 私にはヒーリングが出来る。だからヒーリングが出来る。ということなのだ。
 何度かヒーリングを教えたことがある。しかし大抵なかなか出来ない。勿論、それは私の伝える能力が低いからだが、ヒーリングを出来ることを人はなかなか信じることが出来ない。
 霊視・遠隔視も同様で、私には分かる、だから分かる。というふうになっている。この時「そんなの分かるはずない!超能力ないもん、私」という暗示を外すのは何と難しいことか。

 こんなことを書くと、「じゃあおじじは流石だな、(少なくとも自分には)暗示を使いこなしているんだ」と思われるかもしれないけれど、全然そんなことはない。15年近くもぶち当たっている人生の限界がある。詳細は割愛するけれど、超えられない。それはその限界を超えられないという強力な自己暗示があるからだ。
 ちなみに言うと「超えられない」と言ってしまう辺りが、そういう自己暗示の表れである。「今、超えつつある」という発想を心の底から持てるかどうかだ。
 小さいことで言うと、ピアノもそうだと思う。「沢山練習すれば上手くなる」と思っている。逆に言うと、「沢山練習しないと上手くならない」と思っている。しかし私はこれを実は昔から疑っている。練習しないで上手くなる方法が絶対にある…これはチェロを弾いていた頃に垣間見たことだ。その話はとても面白いのでまた別の機会にしようと思うが。
 上に列挙したものの中で「仕事すると痩せますよ」と言われた人たちは仕事している「だけで」勝手に痩せた。それ以外の人は「何かしないと」痩せない、という考えを保った。
 面白いことに、この本を読むわずか数時間前に、ピアノの練習量が多すぎる気がした。こういうのは魂の直感だ。楽しくて弾いているから良いのだが、それにしても無駄なエネルギーを使っている気がした。そしてその思いが湧いてから、今までのようになぜか記憶と指が連動しなくなっている…別の新しいやり方に向かい始める時、前のやり方が自動的に破棄されるということは、ものの道ではしばしば起きる。
 小さなことから大きなことまで、暗示の力を――つまり自分にどんな因果関係の物語を聞かせるか――高め、効率化していきたいものである。

 それと、身体言語について書いてある所もとても面白かった。
・人と話す時、首を傾げる
・人と話す時、顎を上向ける
・人と話す時、腕を組む、足を組む
・人と話す時、瞳孔が大きくなる、小さくなる

 など。小ネタとしてではなく、すっかり身に付くまでこれを覚えたら、また全然違う人生が見えてくるだろうなと思う。何しろ対面における身体言語の伝達は55%を担っているというのだから(声色38%、残るたった7%が意味)。

 1月17日にこの『おじじの書棚』を始めた。6か月経って、遂に100冊!色々な本を読んできたな~と感慨深い。興味の移り変わりも面白い。最初は割と文学が多かったが、自己啓発とスピリチュアルが増えてきた。そしてこれから暫くは実用書が続きます。
 数名の方、いつも読んで下さっているようで感謝しています。人に読ませるためではなく、あくまでも自分の読書体験の質を高めるためにやっていることなのですが、「スキ」もお勧めも有料記事ご購入も、また個人的なご感想やメッセージも、大変感謝です。これからもよろしくお願いします。


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