二本柳くんへ

二本柳くん

この前の君の手紙が出てきて久々に筆をとってみた。
先日は互いに羽目を外し過ぎてしまったね。二条橋での大騒ぎ、あれは大変よかったが反省している。

君がいっしょに酒を飲めるまでになるとは思っていなかった。
病床の君が書いた手紙を受け取ったとき、僕は夢見る月を眺めながら倦くことなき〈tristesses〉を肴に酒瓶すべて飲み干してしまおうとたくらみをしていたくらいだ。
まさにフロべエルとボオドレエルのようではないと思わんかね。

送金はもうしない。戸を叩いてそのとぼけた顔で直接頼みにきたまえ。

田井