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#002:EGFR Exon20挿入変異陽性の進行肺腺がん 間に合わなかったセカンドオピニオン

 セカンドオピニオン・個別相談を受ける手続きを「進めて頂いていた」患者さんです。
 残念ながら、正式なご依頼を受ける前に、患者さんが急変し、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
 セカンドオピニオン・個別相談は、依頼を受けるにあたり、できる限り患者さんの病状を正確に捉えるよう配慮しています。
 そのため、患者さん・ご家族にとっては、依頼用紙の設問を埋めるのがかなりの負担となるようです。
 また、個人情報保護のため、依頼用紙提出・回答の往復は郵送を原則としていますので、そこでも時間がかかってしまいます。
 結局、この患者さんでは、それがあだとなってしまい、お役に立つことができませんでした。
 
 後日、患者さんのご家族から、患者さんが亡くなった旨をご報告いただきました。
 そうしたご連絡を頂くだけでも非常にありがたいことなのですが、ご相談したところ、診療経過、質問予定だった内容、それに対する回答まで、公表することにご同意を頂きました。

 EGFR遺伝子変異を有する進行肺がんの患者さんの診療では、様々なテーマでのご相談があります。
 その中でも、EGFR Exon20挿入変異は最も難しいテーマの一つです。
 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬はもちろんのこと、その他の薬物療法の効果も得られがたい。
 それでも最近になって、Exon 20挿入変異にターゲットを絞った治療薬開発が進められており、一筋の光明となっています。

 最後に、ご家族からお寄せいただいたコメントを抜粋します。
 ご家族のおっしゃるように、本記事が同じような病態と闘っている患者さん・ご家族の一助になることを願ってやみません。

「とても、辛く悲しい思いではありますが、昏睡状態に陥ってから息を引き取るまでの時間が短かったので、苦しみは少なかったのでなはいかと思い、それはよかったのではないかと感じております。
人はいつか必ず死ぬものですし、それは重々承知しているのですが、やはり、肉親の死は辛いものですね。
闘病期間中、先生のブログの記事なども大変参考にさせていただいておりました、ありがとうございました。どうぞ、今後とも、ブログなどを通じて多くの有益な情報を発信していただき、1人でも多くの命が救われ、また、あるいは、勇気づけていただけると幸いです。
同じ、エクソン20挿入変異の方の闘病にお役立ていただけるなら、よろこんで協力させていただきます。」


ID:20-005

① 年齢:60代
② 性別:女性
③ 職業:保育士
④ 喫煙:なし
⑤ 合併症:なし
⑥ 出身地域:九州・沖縄地方
⑦ 居住地域:近畿地方
⑧ 症状:咳、息切れ、全身の痛み
⑨ Performance Status(PS):2
⑩ 病理診断:腺がん
⑪ 他臓器転移:骨、脾臓、肺内転移
⑫ 診断時病期:IV
⑬ 胸水貯留:無
⑭ 遺伝子変異:EGFR Exon20挿入変異
⑮ PD-L1発現状態:0-5%(担当医から数値について明確な説明はなく、治療レジメンから依頼者推測)
⑯ 経過:公開可
⑰ 質問:公開可
⑱ 管理人からの回答:公開可

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