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読みものとしても楽しめる、食品成分表

こんにちは。
おいしい健康 管理栄養士のすうさんです。

今回は料理や献立などの栄養価を算出する元になる、食品成分表についてお話します。

みなさんは買い物をする時、栄養成分の表示を見ていますか?
例えば、おにぎりの裏面に「1包装あたり180kcal」などと書かれています。

おにぎり

おいしい健康では、例えばこんなところで使われています。

パプリカ

アプリ

このエネルギーやたんぱく質といった栄養価は、いったいどうやって計算されているのか、疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?

元になっているのは、こちらです。(※1)

成分表

食品成分表は、文部科学省から公表されていて、正式名称は「日本食品標準成分表」といいます。

5年に1回改訂されますが、2016年からは1年ごとに見直しされ「追補」というかたちで、公表されています。

みなさんにとっては馴染みのない話かもしれませんが、管理栄養士にとっては一大イベント。
なぜなら、公表された時から、栄養素が増えたり栄養価が大きく変わったりするからです。

具体的に、過去の事例から2つご紹介しましょう。

1、ひじきの鉄分が減った

2015年に公表された食品成分表からのご紹介です。
この時は栄養関連の専門誌だけでなく新聞にも取り上げられ、大きな話題となりました。

ひじきの鉄分が減った理由は、ステンレス製の釜が普及し、以前より鉄分が少ないものが流通しているため。

「ほしひじき」は、「ひじき」の原藻を煮熟(蒸し煮)後乾燥した製品です。煮熟用の釜の材質は ステンレスと鉄に分けられ、加熱時間は1.5時間~6時間であることから、釜の材質の製品への影響が考えられます。つまり、加工の際に鉄釜から溶け出した鉄分がひじきに吸収され、ひじきに含まれる鉄分として値が公表されていた、ということなのです。

100gあたり55mg(※2)あった鉄が、6.2mg(※3)に。
小鉢1杯で、4mgほどとれていたのが一転、0.4mgほどに!

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当時病院のシステムに関わる業務をしていた私は、管理栄養士さんたちが必死に献立を修正する場面に、何度も立ち会いました。

病院の献立は専門のシステムで作成することが主流。食品成分表の最新版が公表されてからシステムにそのデータが反映されるまで、数ヶ月かかることが一般的です。
このため、データの切り替え時期は手計算で予測しつつ、システムにデータが反映されたら一気に献立を入力して修正、栄養価を確認、修正という業務を行っていました。
1日では終わらず、何日も何日も・・・。今では懐かしい思い出です。

2、アイヌ民族の伝統食が追加された

2019年に公表された食品成分表(データ更新)(※4)からのご紹介です。
食品成分表は食文化を記録する側面も持ち合わせています。

和食・日本人の伝統的な食文化はユネスコ無形文化遺産に登録されており、アイヌ古式舞踊も同様です。
食品成分表では2019年にアイヌ民族の伝統食が初めて掲載され、例えば、以下のような食品があります。


・たらのあぶら
アイヌ民族が調味料として伝統的に利用してきたもの。
スケトウダラの肝臓油。
・なぎなたこうじゅ
シソ科ナギナタコウジュで、アイヌ民族が伝統的に利用してきた植物。
お茶にして飲むことができる。
・きはだ
ミカン科キハダで、アイヌ民族が伝統的に利用してきた食材。
果実は生で食用にし、また乾燥後に保存して料理に利用する。

文字だけではイメージできないと思いますが、このように食品成分表から新しい食品のことを調べ学んだり、食文化の知見が広がるなど、単なる「データ」としてでなく、読みものとしても楽しめるものなのです。

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今回ご紹介した食品成分表のお話は、ごく一部。

時代により食品の分類や栄養価の分析法など、栄養を取り巻く世界は進化しています。
私たちが日頃よく食べる米や野菜など、2000以上の食品に対して、多くの改訂がなされているのです。

食品成分表は公表前に、文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会でさまざまな議論・検討がなされます。※余談ですが、私はこれまで3回聴講したことがあります。
ご興味のある方は、文部科学省のホームページを見てみるのも面白いかもしれません。

次はどんな改訂がされるのでしょうか!?公表が楽しみです。

参考資料
※1 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より引用
※2 文部科学省「日本食品標準成分表2010」より引用
※3 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より引用
※4 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂) データ更新2019年」より引用