音読ライマーから見た表記ライマーの問題(前編)

概要

コラム“音読ライマーと表記ライマー”のつづき。

表記派は、表記時の一致率によって韻を評価する者。
“母音一致率を偏重しがちであり、子音一致率を意識しない”“音便化を考慮せず、表記ベースで韻を評価する”といった特徴がある。
発掘手法は不明。

以下はすべて、筆者一個人の空想である。
筆者自身はどちらかといえば音読ライマーであるため、偏見があることを断っておく。

また、主としてネットライムなど活字媒体での話となる。

母音一致率を偏重しがちであり、子音一致率を意識しない

音響一致率を母音一致率だけで判断している。
「独学」と「とむらう」の韻を、「OUAU」「OUAU」で母音一致率100パーセントである点から“十分な一致率である”と判断する。
それ以上に音響一致率を高めるという発想がないため、子音一致率が高いかどうかは運任せである。

「独学」は「束縛」などと踏むほうが子音一致率は高くなる。

仮想子音αと一般子音β

個人的には“子音一致率の低い母音ライム”、とりわけ“仮想子音αと一般子音βで子音不一致となるような母音ライム”に抵抗がある。
コラム“子音保有音と母音単音を区別したリズム合わせ”において、以下のように“仮想子音α”“一般子音β”を定義している。

仮想子音αは、「あ」「い」「う」「え」「お」が持つ想像上の子音。
一般子音βは、仮想子音αを除いたすべての子音。
(一般子音は単に“子音”と呼んでもいいのだが、あえて仮想子音を除外したいシーンで用いる)

これを用いて表現すると、(母音一致するならば)仮想子音αと一般子音βの代用を厭わないのが表記ライマーである。
音読派のライマーがこのような韻を一切用いないわけではないが、なるべく回避できるよう意識する。

仮想子音αと一般子音βの代用

表記ライマーは「再開」と「たちまち」の韻を、「AIAI」「AIAI」で母音一致率100パーセントである点から“十分な一致率である”と判断する。

筆者の感覚では、次のように韻をとらえる。

「再開」と「たちまち」は、かなで表記すると「さいかい」「たちまち」。
母音と子音(+仮想子音)で表記すると「SAαIKAαI」「TACHIMACHI」。
仮想子音αと一般子音βで表記すると「βαβα」「ββββ」。

「再開」(βαβα)は「タイ米」(βαβα)などと踏むほうが子音一致率は高くなる。

補足すると、一般子音βの中には、「や」行「わ」行など“仮想子音αと一致率の高い子音”も存在する。
だが、基本的に表記ライマーはそのような違いを認識していない。

後編につづく。

(文/SIX)

from 韻韻
音読ライマーと表記ライマーと狭量ライマー。

関連項目

  • コラム“音読ライマーと表記ライマー”

  • コラム“子音保有音と母音単音を区別したリズム合わせ”

変更履歴

2021.11.29 メールマガジン用に書き下ろし
2022.8.3 note用に改稿

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