2020/04-07 夏学期を終えて

東大に合格して最初の学期(セメスター)が終わった。とはいえ今年は世界的な感染症の流行により全面オンライン授業だったので、想像していたキャンパスライフとは程遠く、ほとんど受験勉強の延長のような環境で過ごさざるを得なかった。しかしまあ悪いことばかりではなかった。

それにしても3月〜4月はバタバタだった。3月10日に岩手の実家で合格発表を見たあと、すぐホテルをとって新幹線に飛び乗り、住まい探しのために上京した。不動産のお兄さんの「千里眼っていうラーメン屋がオススメっすよ!」というトークを聞きながら駒場キャンパス周辺を歩き、幸い下北沢の近くにちょうどよい物件があったので即決した。残念ながら千里眼にはまだ行っていない。4月には例の感染症のために2週間ほど開講が延期された。延期の間も一応授業はあったが自由参加だったので、しばらくは会社の退職手続きだとか奨学金書類だとかの事務手続きにゆっくり時間を使わせてもらった。

ところで、東大に入ると第二外国語によってクラスが振り分けられることになっているのだが、クラス単位に役職があって「〇〇委員」みたいなものがある。そこまでは普通の大学と変わらないが、東大にはユニークな役職があって「オリ長」とか「シケ長」とかいうポストがあったりする。ここで自分は「パ長」というのを拝命した。パ長というのはいわゆるクラスコン「パ」を取り仕切る役職であって、上級生の方によれば例年は定期試験後に打ち上げに行ったりしていたということなのだが、今年は例によって対面で集まるのが難しい状況なので、今のところオンラインでクラス会を開くくらいに留まっている。ちなみにこのオンラインで大人数が集まってワイワイやるというのは結構難しくて、開催するたびに主催側のメンバーで反省会をしているのだが、早く対面で集まりたいねと毎回毎回思っている。

しかしオンライン授業というのは案外快適だと思う。まず、ずっと家にいながら授業を受けられるというのは素晴らしい。時間的・地理的制約は激減するし、教科書とか辞書を常に手元に置いておけるし、授業中に歩き回っても迷惑にならない。微分積分学の授業なんかでは、ホワイトボード(自宅にデカイのがある)の前をウロウロ歩いて数式をゴチャゴチャと書きながら受講したりしていた。もしこれが対面授業なら、授業中に突然立ち上がって黒板に落書きしているヤツは狂人に違いない。

一方で相互コミュニケーションが必要な授業は結構大変だった。東大には初年次に ALESS という必修授業があるのだが、これがなかなかヘビー級なヤツで毎年1年生を苦しめているらしい。実際、多いときで週20時間も自宅学習時間を費やしたのは ALESS くらいである。ALESS の授業内容はグループで実験を行って学期中に英語で論文を書き上げるというもので、この授業内容を聞いただけでも「英語がわからない」「論文の書き方がわからない」「実験がうまくいかない」「参考文献がない」などなど色々な大変さが絡み合ってきそうな感じがする。今年は基本的に完全オンラインでグループ内コミュニケーションをとる必要があったので、リモートワーク時代に使っていたツールを一部導入させてもらった。とはいえそれだけではもちろん不十分なのは重々承知している。こういうプロジェクト始動の段階でツールを導入するだけじゃダメで、定例会の設定だとか運用ルールの策定だとか考えることがまだ山程残ってるじゃないか…と昔の自分に見られたら怒られそうでしょうがない。しかし、他の授業もあって断片的なコミットにならざるを得ない状況でそれをやり切る自信は無かったので、とりあえず Trello を導入したくらいにして今学期は乗り切った。メンバーには色々わがままを言って手を煩わせてしまったけど、無事に(?)プレゼンまで終えられて良かった。

1年生の夏学期は必修がとにかく多くて、自分の場合は時間割を必修・準必修で埋めたら自由なコマが残らなかった。そんな必修授業のなかに「情報」という授業があるのだが、選抜試験を通過すると代わりに「情報α」という授業を受けることができる。授業内容は深層学習の数学を学んだりプログラミングをしたりするものだった。自分は数理的側面にとても興味があったし、プログラミングにはそんなに苦労しないだろうと思って軽い気持ちで受講したのだが、これがまた結構ヘビーだった。上で「週20時間も自宅学習したのは ALESS だけ」と書いたがあれはウソで、本当は ALESS だけでなく情報αにも多いときで週20時間近く自宅学習に費やしたし、入学してから唯一徹夜をしたのが情報αの課題だった(労働基準法に引っかかるぞ!)。使うプログラミング言語には Python が推奨されていたので Pythonista な友人に聞きながら環境整備をして取り組んでみたものの、Python あるいは TensorFlow のデバッグに慣れていなかったので結構苦労させられた。また数学面では(難しい定理は証明なしに認めることを許されてはいるが)確率論・測度論などの話がカジュアルに入ってきて理解が追いつかない。どちらも期末レポートの〆切が夏休みのど真ん中に設定されているので、この記事を執筆している時点ではまだまだ頑張らないといけない。頑張ります。

必修のなかでは線型代数が一番楽しかった。純粋に勉強が楽しかったのもあるし、オンライン授業中に先生が LaTeX ライブコーディングを始めたのは入学してから一番興奮した瞬間だった。微分積分学も楽しかった(数学系科目は概して楽しいものである)。微分積分学では自分ともうひとりのクラスメイトがシケ対(試験対策委員のこと)という役職に就いていたのだが、自分はあまり仕事ができず相方に任せっきりになってしまって申し訳なかった。もしまたシケ対に就くことがあるなら、もう少し余裕を持って取り組める教科を担当したいと思う。第二外国語のロシア語も楽しかった。ロシア語ではクラスのシケ対の方々が単語一覧などをデータ化してくれていたので、ふと思い立って試験対策 web アプリを作るなどして遊んでいた。このとき久々に AWS を触ることになって昔の知識が活きたので、何でも一回は経験しておくもんだなと思う。力学はそれなりに楽しかったのだが、期末試験の出来は最悪だった。今期の履修科目のなかで「単位さえ来ればいいや…」の境地にいるのは力学くらいだ。思い返すと理科生のくせに文系科目にリソースを割きすぎていた感じがしていて、実際英語の期末試験なんかは復習を頑張りすぎたおかげで試験時間の半分くらいで暇になってしまったから、もう少しちゃんとサボらなければいけなかった。秋学期ではもう少し勉強時間のバランスを修正していきたいと思う。

夏学期を通して、課題に追われている感じは無かったといえばウソになってしまうけど、それでもたくさん勉強ができている今の状況はとても楽しい。それに、周りにも優秀な人がウジャウジャいて日々すごいなあと思わされる。例の感染症のせいでまだキャンパスは2, 3回しか歩いたことがないけど、今後少しずつ入構規制が解除されてゆくようなので期待するしかない。クラスメイトの実在も早く確認したいと思う。

よろしければサポートお願いします!