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石油精製プロセス(蒸留編)

前回のnoteでは石油製品にどのようなものがあるかを紹介致しましたので、今回は原油がどのようなプロセスを経て製品になっていくのかを紹介したいと思います。

石油精製のプロセスは大きく分けて下記の4種類のものがあります
・蒸留分離
・水素化脱硫
・接触改質
・分解
今回は精製プロセスの中でも蒸留装置についてを取り上げて紹介しようと思います。

蒸留とは
蒸留と効くと皆さんはどの様な物を想像されるでしょうか?
中学校の理科の実験で水を沸騰させて、その蒸気を皿で受けて水滴を集めた記憶がある方もいらっしゃるのでは無いかと思います。
これがもっとも簡単な蒸留かと思います。

蒸留実験

蒸留とは簡単に言えば、液体の物質を加熱し沸騰(気化)させた後に、冷却する事で液体に戻す事を指します。
水の蒸留では、水中の不純物を除く事などができ、泥水を綺麗な透明な水にする事ができるわけですね。

その他に蒸留の身近な例としては、お酒の種類として蒸留酒などもポピュラーかと思います。

ウイスキー(蒸留酒)

この様に蒸留は非常に身近な所で良く使われている技術になります。


蒸留分離

蒸留の基本的な原理は上記しました様に、物質を加熱し液体から気体に変化させ、冷却しまた液体に戻す事と言う事は理解いただけたと思います。
ただ、それだけでは石油精製のプロセスにどう使われているかは想像が付きにくいと思います。

これを想像しやすくする為にはもう一つ、蒸留分離という概念を理解する必要があります。

皆さんも水は何度で沸騰するかと聞かれたら、直ぐに100℃と答えられるかと思います。
この、物質が沸騰(気化)する温度を沸点と呼び、これはあらゆる物質に固有の値があります。
また、気体から液体に戻る温度を凝縮点と呼び、こちらも物質固有の値となります。
(条件が一定であれば、沸騰=凝縮点)つまり複数の物質が混ざっていたなら、物質はそれぞれ違う温度で気体になり、違う温度で液体に戻る訳です。

前項で書いたように蒸留は液体→気体→液体と物質変化させることですから、沸点と凝縮点の性質を利用することで、複数の物質が混ざった物を分離することができます。
これを、蒸留分離と言います。

蒸留分離   出典:化学工学会 web資料

前記事で紹介しました通り、原油からは様々な製品が取れる事は皆さんお分かりいただけたと思います。
この原油から、製品を作る第一段階として蒸留分離の技術が使用されています。

この蒸留分離を行う装置を石油業界では一般的にトッパーと言い、正しい日本語では常圧蒸留塔と言う装置になります。
(以外、トッパーと表記します。)

掲載しましたイラストのように、トッパーでは原油を加熱した後に、トッパーへと通油します。
(この加熱で、重油以外はほぼ沸騰します)
トッパーの中はただの筒ではなく、複数のトレイで上下に部屋が分かれています。
この部屋の温度を適切にコントロールする事で、凝縮点の異なるそれぞれの留分を、特定の部屋で凝縮させる事で分離しているわけです。

トッパーは石油精製における第一段階であると共に、その製油所の精製能力の指標として扱われ、トッパーでどれだけ原油を処理できるのかで、その製油所の規模を知る事ができます。

ちなみに、現在日本で最も原油処理を行える製油所はENEOSさんの水島製油所となっています。

製油所能力(2020年時点)  出典:石油連盟

以上が、石油精製で用いられる最もポピュラーな蒸留装置のトッパーの紹介でした。

勿論、トッパーの装置全体はもっと複雑で、原油を蒸留する前の洗浄工程や、製品純度(業界ではキレやカットと言われます)をコントロールするサイドカラム等、様々な付帯装置がついていますので、興味のある方は是非調べてみられてください。

また、石油精製における蒸留設備はトッパーだけではなく、各留分の純度を上げるために後段の装置の大半に設置されておりますし、残渣油(重油や重油より重たい油)を減圧し蒸留する設備などもあります。

今回は最も代表的な蒸留設備として、トッパーを紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
もっと深掘りしてほしいことや、分かりにくい所があったならコメントをいただけると嬉しいです。

ここまでお読みいただきありがとうございます
次回は脱硫設備を紹介したいと思いますので、しばしお待ち下さいねぇ

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