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期待外れのアウンサン論

読後感は期待はずれ。
一言で言えば論述態度が公平ではないということです。
過去に「ビルマ」という呼称を日本人が使用していたからビルマと呼ぶというのは結構ですが、それならなぜ大東亜戦争という当時の呼称を使わないのでしょうか。その代わりに筆者は「アジア太平洋戦争」なる後世の造語を使って済ましています。
自家撞着が甚だしいのでしょう。
私はテイン・セイン大統領ら軍人が民主化に貢献してきた事実を重く受け止めており、軍事政権=悪という筆者のような立場には立ちませんので、ミャンマーと呼びます。筆者がミャンマーと呼びたくないのは軍事政権がこの名称変更に適切な説明を与えていなからだそうです。何でも軍が悪いの一点張り。日本軍が創設したとも言えるミャンマー軍を快く思ってないのでしょう。
この本読んだだけではなぜ未だにミャンマー人が日本贔屓なのか理解できないでしょう。
タクシー運転手ですらminamikikan(南機関:ミャンマー独立を工作した機関)ってわかるんですよ。そういう国です。
バーモー博士については『ビルマの夜明け』が有名ですが、まともに読んでもなさそうです。
そこには日露戦争についての感動とか記されています。でもこの本ではバーモーは偶然日本がそこにいたから利用したみたいな書き方しかしておらず、日本軍へは希薄な印象しか与えません。
バーモーの日露戦争を含めての対日感情は彼を理解する上で問われてきます。
もちろんバーモーは単純な日本賛美のがわにいた人ではありませんが、日本ほどアジアに貢献している国もないと明言しています。
そういうことがこの本では書かれていません。これではなぜ未だにミャンマー人が日本を愛してくれているか理解できないでしょう。
アウン・サン将軍に対する記述はもっと杜撰で、筆者がいかに公平性に欠落した人物か物語っているようです。
アウン・サンは訪日前から計画的に日本軍の軍事力を頼ってイギリスによる支配を壊したいと考えていたんです。それについては、洋書Aung San and the struggle for Burmese independenceに出ていたはずです。それをこの根本氏は
「ビルマにいたときから報道や本を通じて中国での日本軍の侵略について知っていたアウンサンは、日本軍と組むことに大変躊躇しました」
と書いてあります。多分嘘だと思います。ミャンマーのことなど誰も研究してないと思っていい加減なことを書いているのでしょうか。
同じミャンマー論でしたら山口洋一元駐ミャンマー大使の本を勧めます。客観的であり国際的視野からミャンマーの軍事政権がそこまでおかしいものではないと述べています。

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