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「浅草御厩川岸」−布目よりもハプニング−『江戸名所道戯尽』

今日は大学図書館でとある本を借りるついでに夜まで残っていたのですが、帰る直前になって本を借りようとしたら、延滞している本があって借りられないという結末を迎えました。

本を借りても「直ぐに読みたい」というより、「読んでおきたい」というスタンスで借りるものが多いので返却期間までに読み切れていないことが多いです。
だからせっかく図書館があってもネットや本屋で買ってしまうんですよね。

勿体無いけど手元に置いておきたい気がしてしまう。

そんな言い訳をして延滞を正当化している今日も広景。今回は『江戸名所道戯尽』の「四十一 浅草御厩川岸」です。

◼️ファーストインプレッション

また被害者が出ている絵ですね。
右に建てられている建物に黒く塗装している途中だったのでしょうか。
多分下の男性が木の箱にあった黒い塗装料を上の男性に長い棒で渡している時に、上の男性が塗装料を置いておく板を落としてしまったのですね。
下の男性に板が落ちて命中してしまい、尻餅をついてしまった様子。

上の男性は悪びれているというより、「やっちたぜえ」というような表情で下の男性が痛がっている様子を見届けています。

当時は高さのある建物が今より少ないとはいえ、2階3階をつくるには事故は付き物だったでしょう。
事故をとまではいかなくても、建築現場を描いた浮世絵を見ていきたいと思います。

◼️元絵

実はこの絵には元絵があって、参考書に記載がありました。

その元絵というのは北斎。
『富嶽百景』の「足代の不二」です。

確かに画面右に壁を配して、その壁に塗装している途中である場面を描いています。
ここでは事故が起こりそうもないですが、それでも起こりそうなくらいぎりぎりの作業をしているのが伝わってきます。
下の男性の前には箱がありますが、そこに塗装料が用意されていますね。

こうして連結して作業していたのですね。

この絵の巧妙なところは、骨組みの角度が富士山の傾斜にあった角度に描かれているので、富士を近景に感じることができます。
そこに下の男性に事件性を加えて滑稽に描きこんでいるのが広景ですね。

構図や物の配置まで北斎と同じですが、北斎の絵にはない、道具の動きが感じられますね。

◼️浮世絵×建築現場

歌川国輝の「衣喰住之内家職幼絵解之図」 「第十一 屋根屋 第十二 左官のかべ作り」です。
ここでは塗装ではないけれど、屋根に登って資材を運びながら屋根の補修をしています。
その下に骨組みに乗ってしゃがんでいる男性がいますね。彼の役割は一体何なのでしょうか。
屋根の上をよく見ると、A3くらいの木材を互い違いに何重にもして重ねているのがわかります。

一般家庭の家の屋根をこうして作っているのか、建築の歴史を知ることでわかるかもしれませんね。


歌川国輝の「衣喰住之内家職幼絵解之図」一部です。
先ほどの絵と同じシリーズですね。
屋根瓦にコンクリ?を乗っけて固めているところでしょう。
そのコンクリを梯子を伝って上に上げているところでもありますね。
そんな中、部屋の中で室内の塗装に勤しんでいる男性がいますね。
彼は左手に漆喰を持って、右手で壁に塗り固めています。
「しっくいにて布目などもぬり込むをきづ○といふ」
と書いてあります。
布目も塗り込むということはただ塗るというより、模様もつけていく職人技であるということでしょうか。

建築中の職人や建築を描いた作品はもっとありそうですし、江戸時代だけでなくもっと前の職人尽絵などにももっと描きこまれているかもしれませんね。

そこから何か借りた絵などもいくつかありそう。

また建築途中の絵が出てきたらまとめてみようかな。

今日はここまで!
#歌川広景 #江戸名所道戯尽 #浮世絵 #美術 #芸術 #アート #日本絵画 #江戸時代 #江戸絵画

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