安原伸監督のこと

2020年3月22日安原伸監督が亡くなられた。享年56。

あまりに早い逝去でした。

安原伸監督は、僕にとっては真下耕一監督、橋本幸治監督に並ぶ尊敬する監督でした。

安原伸監督の作品を初めて見たのは、1990年TBSテレビのイカす映像天国という番組でした。

その中で放送された安原伸監督の「国防挺身隊」は実に面白く。自主映画にありがちなタルさや難解さは皆無で、スピーディーな展開、適切なカッティング、印象的な登場人物、心に刺さる台詞、面白い映像で見る者誰しもを感動させる異色作でした。

国防挺身隊の隊員は乗車してる車から周囲の人々に向かってこう言います。「国防挺身隊は右にしか曲がりません」

こんな面白過ぎる台詞、あって良いのでしょうか。

「国防挺身隊第2話」は日本史上最初で最後の、ゴジラでさえ避けて通るという某所を破壊する映像を地上波でやりました。

その他の安原伸監督作品には「明治天皇宇宙の旅」「ライダー神風」と、タイトルを聞いただけで面白さが溢れ出るものがあります。

安原伸監督が遺された映画は全て面白く、1990年に僕は初めて安原作品を知った時に、安原さんはこれからは大きい規模の作品を撮られる方だ!と強く期待しました。

キャリアとして安原さんはその後、京セラに就職されたこともあり、映画はその後数本制作しただけになったのですが、遺作となった「昭和九十年」も素晴らしいドキュメンタリー映画でした。そう、遺作はなぜかドキュメンタリー映画だったのです。

後年、僕は幸いにも安原さんと知己を得、何度かお会いできたことは本当にありがたいことでした。

安原さん本人は、監督された映画群とはちょっと違って、シャイで物静かな方でした。

安原伸監督作は実に個性的で面白く、安原さんは真の映画監督でした。

安原さんは原作を他人に頼ることなく、自己の創作活動を全うされました。

安原さんの「国防挺身隊」を含む短編映画集は今もDVDを売っているので、検索して是非購入し見てもらえればと思います。

その中に入っている自伝的短編「昭和の残照」は、安原さんの優しい一面が全面に出た、すてきな一編です。

安原伸監督作品はいつまでも遺るでしょう。

しかし個人的には、安原さん自身にもっと普通にいて欲しかったです。早過ぎる逝去が惜し過ぎます。


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