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「ヴィアベンテン滋賀」というムーブメント


2023年2月、サッカーはこんな時期から天皇杯の予選が各都道府県でおこなわれる。
2月12日、昨年に応援するチームを無くした(正確には活動休止)自分は、その時間的な喪失感を埋めるように、昨年から気にかけていた設立2年目、県2部リーグのヴィアベンテン滋賀の天皇杯予選1回戦にふらりと訪れた。
場所はルネス紅葉専門学校のグラウンド。
まあ事前に下調べはしていたのだが、観客席は無く、まあ「観戦」に向いた環境とは言えない。
なのに30名ほどのサポーターがいた。子供が多くて本当に驚いた。
前半こそ子供たちは大人しく見ていたのだが、後半になると「ヴィーアベンテン!」とコールを始め、大人たちがそれに続き、手拍子を送る。
なんとも不思議な暖かさのある応援に、心が揺さぶられた。
初戦は危なげなく勝利を飾った。

2月19日、この日の対戦相手はルネス紅葉専門学校、昨年の県一部のダントツの王者だ。
この試合は、子どもたちが喜ぶだろうと思い、スネアを担ぎ会場へ行った。
子供たちは「大人の楽器」に興味津々で一緒に叩いて応援した。
雨にもかかわらずやはり30名ほどのサポーターが訪れた。
2点のビハインドからの逆転勝利。まだスポーツで熱くなれる自分がいた。


2月26日、雪の甲賀の準決勝。
それでも多くのサポーターが集う。なんとも不思議なチームだ。
応援も進化する。
子供たちのコールに大人が便乗する。大人たちが簡単なチャントを歌うと子供たちが真似る。
少しずつ華やぐ応援を背に、県一部の上位チームである愛蹴会相手にこの日も勝利。
この勝利で、天皇杯県予選の社会人代表の権利を手に入れる。

いずれの試合後もヴィアベンテン滋賀の村田和哉選手権代表は試合後に、「滋賀県にムーブメントを起こしましょう!」と強く語った。
いいチームなのは分かる。スタンドの雰囲気もいい。
ただ、そんなに簡単に結果が出るはずはない。
ヴィアベンテンに魅かれる自分とその様子を冷笑する自分が混在した。

そんな幻想は一週間で崩れ去ることになる。

3月5日、天皇杯滋賀県代表決定戦・社会⼈の部の決勝。
この日は姫路にて仕事で、片付くや車を走らせ会場のビッグレイクへ。到着した時間はキックオフから20分を過ぎていた。
この日のビッグレイクは何かがおかしい。Bグラウンド横の駐車場に入ると満車で駐車することができない。
レイラックの試合も同時にやってたりするのか?それとも強豪高校の引退式でもあるのだろうか?
自分の仮説は外れる。その車はヴィアベンテンのサポーターのものだった。
やむなく外れの駐車場に車を止め、スタンドに向かうとスタンドを埋め尽くす人、人、人。
目算、200人はいる。そのうち、どんなに少なく見積もっても60-70人は子供だ。
日曜の夜に。県内予選なのに。一体なんなんだこれは。
「ヴィーアベンテン!!」子供たちのコールが、田園の寒空に響く。

「地域の子供たちのために」
そういう風に語るスポーツチームをいくつも見てきた。
ただ、こんなに子供たちに愛されるチームは初めて見た。

今日も子供と大人の掛け合いの応援に、スタンドは温かく盛り上がる。
ただ、試合はチャンスを作るも0-1で敗戦。
しかし、スタンドや選手たちに悲観的な雰囲気は不思議と無かった。
それは既に代表の権利を手に入れているからのものではなく、これだけのサポーターが集まったことへの喜びと達成感があったからだと思う。

試合後の村田さんのコメントでも分かるように、こんなに人が入ることは想定していなかったようだ。
おそらくスタンドにいた誰もが、想像だにしていなかっただろう。
ただ、実際に設立2年目の2部のチームがこれだけの人たちを動かした。それは紛れもない事実だ。
「滋賀にムーブメントを起こす」という言葉もあながち夢ではなく、実現可能な未来のような気がする。

人によってはこれをSNSの効果という人もいるかもしれない。
たしかにチームの発信だけでなく、村田さんをはじめ選手も積極的に発信を行っている。
彼らの言葉は前向きで、人をスタジアムに引き付けるには十分な力がある。
選手が多すぎて誰をフォローしていいか分からない場合は、とりあえずチームと村田さん、
それと三輪敦規選手をフォローしておくといいと思う。
三輪選手は自らの熱い発信だけでなく、チームメイトのツイートもかなりマメにリツイートしてくれるからだ。

そして、何よりも県内での活動がめちゃくちゃ積極的であることは欠かせない。
その様子は各種SNSから見てとれるが、夢授業やサッカー教室など、週に2-3回は何らかのイベントに参加している。
そして、これらの活動は単にビラを撒くようなものではなく、コミュニケーションに基づいている事には注目したい。
県内のスポーツチームはまねるべきロールモデルといえよう。

同時に悔しさも感じる。
なんで自分の応援してきた滋賀球団はこれができなかったのか。
ファンとしてこんな雰囲気のスタンドを作れんかったのか。
結局集客にとって重要なのは、地道な地域での活動だったのだ。
滋賀でもそのような活動は有効である。
それを示せたヴィアベンテンは本当にすごいとしか言いようがない。

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