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自分を自分で守る側に立つ

暑い夏の頃だ。
更年期の入り口に立った時に急激な身体の変化についていけず、パニックになったことがある。
言いようのない不安感と吐き気と頭痛。
そして虚脱感。
寝ても起きてもぐるぐる天井がまわり治まらない。階段をのぼる気力が無いので、リビングに布団を敷いてずっと倒れ込んでいた。
出勤途中に電車の中で意識がなくなりそうになり、必死に堪えて何とかタクシーを拾って帰ったこともある。
限界が見えて、仕事を辞めた。


昨年も暑かった。
眠れなくなった。頭痛と吐き気と目をつぶったまま開けられないほどの気持ちの悪さ。
力は抜け、立っていられない。
暑さが引き金になり、以前のようになるのではないかという恐怖と不安感で絶望した。
婦人科に這うように行き、漢方薬を処方してもらいなんとか乗り切った。


そして今年のこの夏の酷暑である。
また婦人科へ行き、ひと月分の薬を処方してもらい、欠かさず服用している。
リンゴ酢を飲むようになり、多少は元気に動けるようになった。(病は氣からか)
とはいえ、もうすぐ9月の声をきくというのに日中は34℃35℃を超える異常気象。
この体も、いつどこでどうなるかはわからない。

。。。。。。。。


ある日、職場でお茶をのんでいると同僚から申し送りの電話が入った。
用件はほんの数分で終わったが、彼女が話したいことは別にあった。


わたしたちは土日祝日も関係なく働いている。
必然的に来場者も多くなるそれらの日は多くの新規のお客様を迎えられる好機だ。
そこで外に立ち、呼び込みの役目を負わされるのがわたしたちなのだ。
繁忙期にはバイトが入るが、予算上、毎週入らせるわけにはいかない。
となると、その役目がわたしたちにまわってくる。

テントは設置されているとはいえ、この炎天下の中、数分立っているだけで頭がぼうっとしてくる。
彼女はそれでも立たなければ事務所に身の置き所がない、上席の指示ではやらざるを得ないと無理して立っていたという。
そして家に帰ると嘔吐し、フラフラで倒れてしまったこともあるという。
完全に熱中症を発症していた。


(よそは)立っていますよ。
ある上席に言われたひと言を彼女は忘れないという。それ以来、わたしはそのひとを嫌いになりました。口もきいていません。
くすっと笑いながら言う。
これ以上、外に立つことを強要されたら、わたしは爆発しますよ、その場で辞めます。
そして本社に全て言います。
わたしこう見えて結構怖いんですよ。
またくすっという笑い声が耳元で聞こえてくる。おそらく本気だろう。


わたしは彼女に言った。
立たなくていいんですよ。
わたしは立ちません。もちろん、様子を見てお客様が歩いていたら、出ていってお声がけはしますけど、あの炎天下の照り返しの危険な気温の中で誰も歩いていない時に立っているなんてあり得ないですと伝えた。
ええ、でも…いづらくて。
彼女は真面目なのだ。


どーんと事務所で座ってお茶飲んでいますよ、わたしなんてと言うと、彼女はわたしも早くその域に達したいと、またため息混じりに笑った。
自分の体は自分が守らなきゃ。
どんなに時給を上げられたところで、健康は買えない。休みながらお願いしますよという、気遣いともとれる言葉を投げかけられたところで熱中症は防げない。
想像力がないのだろうか。
これくらい仕事なんだから。自分で管理しながら呼び込みできるでしょ。


わたしはわたしの身体と健康以上に大切なものを仕事に見出せない。
自分を守ることができるのは自分だけだ。
声をあげよう。
雇う側、雇われる側。
対等な筈だし、そうでなければならないと思う。


あやとりりいさんの記事にまさにそのとおりと膝を打ちました。
ありがとうございます😊

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