路地裏メデューサ 読感

路地裏メデューサ 読感

 友人であり得がたい友だと認識している度会さんの、路地裏メデューサをようやく読了。

同作は、ジャンル的には青春ホラーとでも言えばいいのだろうか。ホラーというよりは怪奇ものかも知れないが、それでも的を射てないような気がする。

 メデューサ少女、いや路地裏メデューサ少女との出会い、少しずつお互いのことが解っていく過程は恋愛模様にも似ている。そして野球を通した青春模様。勝者や強者ではなく、敗者や弱者視点での強さを描くのも氏の魅力のひとつ。

 と、書いてはきたけれど、なかなかこれが一筋縄ではないのが今作だ。

 説明という意味では、不親切なのだ。この作品。

 比較的長いセンテンスのをおいて、時系列が変化する。今、がいつでさっきのくだりはいつなのか、に困惑するのだ。

 そしてこれは構成が上手いという事に直結すると思うのだけど、不明な点が少しずつ明らかになっていく……それはいいんだけど、それが本当に少しなんだ。

 路地裏メデューサの正体や、その存在理由、それらが小出しにというか多段的に明らかになりつつも、常に後回しになっていく。でもこれ、この文章量を読ませ切る作りではないと思うのですよね。

 青春模様、人間模様、それぞれの事情、そして恋、それらを実に丁寧にそして気持ちよく描かれているけれど、謎というものとその展開に関して言えばもっと熱量のある作品になったのではないかと思います。ウエイトでいえば、その場面場面での描写の良さに重きが成されていて物語全体としての流れをもう少し工夫されると最高ではないかと。

 とはいえ氏の実力は確かで、先にも述べたけれど描写ややりとりは素晴らしい。

正にそこにある物語と感じるし、呼んでいて気分も良い。

 内容そのものも、読めば納得。そしてわかりやすい。

 とても良い物語を読ませていただきました。度会さんは、やはりすごい。上手い。

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