新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンを接種して

 医療従事者として先行接種をすることとなったので、覚え書きとして。

 実際に現場にいて感じたのは、ワクチンの供給自体が当初の目算よりも遅れているのだろうな、ということ。
 2月にも接種が開始になるということだったが、この間現場では全職員のワクチン接種スケジュールが2回も白紙に戻された。
 つまり、全員分の『誰々3は○月△日に接種になります』と決まって通達があったものが、2度も「やっぱナシ」となったのだ。
 理由は単純に当初の予定通りにワクチンが届かない、というもの。そりゃあ、ないワクチンは打てない。白紙延期もむべなるかな、だ。
 各種報道を見るに、高齢者の接種も当初予定より遅れていくようだし、やはり供給そのものが遅れているのだろう。

 さて、そんなことがあっての3回目の実施案内。
 今回は過去の2度とは違い、具体的にどこで接種するのか、どこが接種後の待機スペースとなり、実際にアナフィラキシー等が怒った際にどうするのか、などが詳しく発表された。
 正直、3回目のアナウンスも「また延期になるんじゃないの」と思っていたところだったので、この発表にはちょっと本気度というか、いよいよ始まりますという気概のようなものをそこはかとなくは感じた。
 そしてそのスケジュールを見ると、自分は最初の日、当院の接種開始のトップバッターでありました。
 これはたまたま接種予定日の翌日が自分は休みになっていたことが理由だと思われるのだけれど、接種初日は院長やら師長やらがズラリと居並ぶ中での接種で「ちょっと緊張するかなあ」と思った。
 なにしろ接種して、ハイ終わり! ではないのだ。接種の後30分程度お歴々の中で過ごさねばならないのだ。無論、ソーシャルディスタンスは厳守した上でだが、黙って座ってるわけにもいかないのではないだろうか……
 と、そんな心配を避けるため、接種には読み差しの本を持って行くことにした。これに集中することで、お歴々からのコンタクトを『いえ、今ちょっといところでして』と無言の拒否をしようという思惑である。

 そしていよいよやってきた接種日。3月15日である。
 当日は仕事であり、当然仕事中に接種場に行くわけだが、現場から抜けるというのは中々大変なもの。しかも、もしも万が一ではあるがなんらかの重い副反応があった場合は、現場にもう今日は戻れないのかも知れないのだ。
 そんなわけで接種時間までに、できるだけの諸事をなんとか済ませ、接種会場へ。
 会場スタッフも問診医も施行看護師もみな知り合いであり、現場でも「お、きたな」「ひとつお手柔らかに」など軽口をたたきつつの接種となる。ここらへん、一般の方がこの後接種していく際とは少し気分的にも違うんだろうなあと思う部分ですね。自分なんかでも、別の病院の知らないスタッフからの点滴とか緊張しますもの。知り合いが、気安くやってくれるのとは訳が違う。
 問診は問題なく、すぐワクチンの接種。
 このワクチンは、ファイザー社のコミナティ。
 筋肉注射など、もう受けるのはいつ以来だろうかというほどの経験しかないけれど、痛みはまったくない。毎年接種しているインフルエンザの予防接種の皮下注射の方がよほど痛い。このあたり、インフルも筋注に日本もした方がいいんじゃないだろうか。
 打ってくれた看護師さんの腕も良かったんだろうけど、本当にまったく痛くなく、だが確かに身体に何かが入っていく感覚はちょっと面白く『ああ、これで自分も5Gでマイクロチップな人間なんだなあ』と少し笑う。
 その後の待合いでも、自分を含め誰も何の副作用もなく、穏やかにすべてが終了した。本も2ページしか読み進められなかった。
 もしかして誰かが重篤なショックをお越し、居並ぶ院長や科部長医や師長たちによる緊急時対応が見られるかもと漠然と考えたりしていたものの、実際には起こらなかった。
 まあ重篤な反応など、ないわけではないけれど限りなく少ない事例なのだ。

 そんなわけで何事もなく職場に戻り、それまでハイペースですすめていた仕事を少し余裕を持って終わらせ、定時に退勤した。
 帰宅し家族にも「痛くなかったよ」などと話して笑っていたが、この後入浴をするあたりからちょっと様相が変わってくる。
 なんとなく気だるいのだ。
 あの熱がある時に入浴する時独特の、身体に痛みと悪寒を感じながらそれがほぐれていくような感覚。それのごく軽い版というか、風邪のひき始めのような、明確ではないけれどなんとはない不調感が始まった。
 とはいえ、気分が悪いわけではなく、このあたりなかなか説明がつかないのだけれど、不調の前兆を感じつつあるというような身体状況だろうか。
 ただこの倦怠感の原因は明白であり、そうした軽い不調も『起こるであろう』と想定していたので、気分的には楽だった。
 なにも覚えがなくこの身体状況なら『風邪か? まさかインフル?』と戦くところであるが、原因は間違いなくコロナワクチンである。自分も気楽に『お、きたきた。やはりなんらかの身体状況の変化はあるよな。よし、効いてる効いてる』などとのんきに思っていた。

 そして就寝。
 自分は左側臥位になって寝ることが多く、ワクチンは打った後の特に翌日に接種した腕が痛くなると聞いていたので、あえて利き腕である右腕に打ってもらった。施行看護師さんは「利き腕じゃない方がいいけど」と言ってはくれたけど、気安さもあり要望通り右腕に打ってくれた。
 ちょっと気だるく、熟睡はできなかったけどそこそこの睡眠をとって翌朝目覚めた。
 腕はそんなに痛くない。まったくではないけれど、多くの場合『打った方の腕が上げられないぐらい痛い』と聞いていたので「なーんだ、こんな程度で済んだか」という印象。
 ただその代わり……
 身体がめっちゃダルい!
 ホント全身倦怠という感じ。
 検温すると37.1℃。なるほど、これが副反応かと納得の状態。
 ただ身体はものすごくダルいんだけど、そんなに気分は悪くない。「ま、ワクチン打ってるしな」とヘラヘラする余裕もある。
 これはまあ、病気じゃないという確信があるのが大きいのかも知れない。
 微熱かある、身体がすごくダルい、となれば病気を疑うのが自然だが、この場合原因は明白だ。

 ワクチンを打つ→なんらかの副反応はあって当然らしい→発熱と倦怠→なるほど副反応だ

 という流れ。
 そこに疑念がないので、気持ちが楽だ。
 その日は休日だが予定のあったものの、キャンセルして静養につとめることにする。
 といっても、身体はダルいが熟睡はできず、ちょっとまどろんでは起きての繰り返し。それでもなるべく臥床してスマホを見たりして、なるべく身体を休ませていた。
 食欲はあり、普段と変わらない朝食を摂った。
 午後になり、改めて検温をすると37.7℃になっている。
 が、相変わらずそれほどつらくなく、むしろ倦怠は治まってきた。
 奥さんがおじやを作ってくれ、昼食はそれで済ませるが、甘いものなども間食し、普段ほどの食欲はないものの深刻な食欲不振もなく、午後もダラダラと過ごす。
 と、接種から24時間後あたりから身体がストンと楽になる。熱も37.2℃に解熱傾向。
 夕食も脂っこいものは避けつつも、量は普段と変わらない程度食べて就寝。
 その夜はグッスリと眠り、翌朝には熱も36℃代になり倦怠感も嘘のように治まっていた。
 仕事にも普通に出勤。
 後で聞いた話によると、37.5℃以上の発熱が出るのは全体の3.3%程度とのことで、自分の例はかなりのレアケースだったかも知れない。

 ただ2回目の接種後副反応は1回目よりも強いのがわかってきているらしく、3週間後にやってくる2回目接種の後は更なる高熱と倦怠に襲われるのかなあ……と、少々は不安に思ったり。
 けれど今回の発熱も、身体になんらかの異常をきたし始めているところにワクチンの副反応が現れたのかも知れず、ここのあたりなんとも言えない。

 さて、今回1回目のワクチン接種が終わったわけですが、10日以上かかって免疫効果が出始めるわけですし、そもそもワクチンを打って免疫を獲得した人が増えることでコロナの蔓延を防ぐのが最大の目的なわけでして、今後も怠りなくマスクに手指衛生そして3密を避けて感染対策を継続していきたいと思います。
 2回目の接種を受けたら、またその顛末を書きたいと思います。

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