本当にあったひどい話3

これは本当にあったことなんですが聞いてください。

私が主人の実家に帰るときのこと、料金所で運転する主人に頼まれて主人の財布を取り出したんです。私は息を飲みました。そこには短髪の主人にはありえないくらい長い髪の毛が何本も入っていたのです。私は戦慄が走って時が止まったように動けないでいると「千円札あったでしょ」と主人に声をかけられ、何も言わずうなずいて髪の毛を避けて千円を取り出し主人に渡したのでした。

あれは女の人の髪の毛にちがいない。私は主人の動向が気になってきました。考えてみると主人は浴室の脱衣場にもスマートフォンを持ち込んでいるんです。私は主人がお風呂に入っているときに、タオルを持ち込むついでに主人のスマートフォンを見たんです。するとロック画面にLINEの通知がありました。メッセージの送り主は私達の共通の友人である高島愛子、そしてメッセージとして「見たな」という文字が。私は思わず後ろを振り返りました。もちろんそこには誰もいなかったんですが、なにか背中に冷たいものを感じました。

結論から言うと主人は浮気をしていたのでした。主人の車にGPSを仕込み、その動向を追っていると平日の昼間、仕事に行ったはずの主人の車は私達の家からも近く、そしてなにより高島家の近くにある西願寺というお寺の駐車場に停まっていました。決して仕事では立ち寄らない場所です。私は嫌な予感がして、そこがなにかはわからないのですが行ってみることにしました。

5月のよく乾いた晴れやかな日だというのに、その西願寺という鎌倉時代からあるお寺には木がうっそうと生い茂り、瘴気が漂うとも言えるようなありえないくらいの湿気が立ち込めていました。私は思わず息を止めて、主人の車を探すと、お堂から何か声が聞こえてきたのでした。それは女の、出産時のようなうめき声でした。私はそれが気になってお堂の格子戸に手をかけると少しだけ開きました。すると中からダダダッと足音がして、私は思わず目をつむったんですが、目を開けると中から顔をのぞかせていたのは主人だったんです。

私は信じられませんでした。主人と目が合うと、主人はじっと私を見つめたまま、息をしてないような人形のような表情で、小さく「……えっ。」とだけ言いました。私はそれが主人であるかどうかも自信を失ってしまうくらい普段とはかけはなれた様子だったんですが、主人を確認すると服を着てなくてただ下着を一枚つけているだけ。それが主人の勝負下着とも言えるタケオキクチと書かれたトランクスだったので、やはり主人だと確信した私はすぐに怒りがわいてきて「なにしてんの!」と言ったところ、ピシャリと戸がしまりました。

格子戸はさっきまで簡単に開いていたし、見るからに鍵がかかるような構造もしてないのに、私が開けようとしてもびくともしません。「なんで! なんで!」と私は戸を叩きました。

中から女の笑い声が聞こえてきたかと思うと次第になぜか私の耳元で聞こえはじめました。許せない、絶対に許せない……私は悔しさから涙があふれました。

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