本当にあったひどい話10

これは本当にあったことなんですが聞いてください。

私の主人は浴室の脱衣場にまでスマートフォンを持ち込んでいました。私はそれが気になって友人に相談したところ、浮気を疑ったほうがいいというのです。まさかと思いましたが結論から言うと主人は浮気をしていました。

いつものように仕事に行くと言った主人の車は私の親友である高島愛子の家に停まっていることがGPSにより分かりました。私は高島宅に押しかけてインターホンを押しました。

ドアが開くと私は目を疑いました。そこには真っ赤なつるりとした肌の、それでいて大きな茄子のようなものがあったのです。「えっ……」と驚くとその根本にはしわくちゃな翁のようでいて、獰猛な猿が怒ったような顔がありました。そうです、そこにいたのは天狗なんです。天狗の面などではなく実物としての天狗がそこにあったのです。

主人は天狗と浮気をしていたというのでしょうか。それとも主人は浮気に狂い情慾のあまり天狗になってしまったというのでしょうか。そんなことがあるのでしょうか。

私は一瞬混乱して現在を見失いかけましたが、そんなことよりも主人がよからぬことをしているのには間違いがなく、私は「一体どうしたって言うのよ!」と天狗にむかって怒声を上げました。

そうです、主人がよからぬことも間違いはないのですが目の前に天狗がいることにも間違いはなく、「カカカカカカ」と高笑いが上がったかと思うと大きな葉っぱのうちわのようなものをチェーンロックがかかったマンションのドアごしにびゅうと一振りし、途端に大風が起こって私はマンションの廊下から吹き飛ばされてしまいました。

木の枝に引っかかった私はその体の痛みに、天狗に比べての自分のちからのなさに、やるせなさに、涙がぽろりと出てきました。


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