本当にあったひどい話9

これは本当にあったことなんですが聞いてください。

私が主人の浮気を知り、とあるマンションの一室のインターホンを押したとき、ドアが開いて驚きました。
「うそ、なんであんたがそこにいんの!?」
そこにいたのは髪が大きく乱れ雑に服を着た私の親友である高島愛子だったんです。まさか愛子が私の旦那の浮気相手。

「私は親友に裏切られたってこと!?」
目を伏せていた愛子はその言葉に反発したのか
「私はあんたのこと親友だなんて思ったことは一度もないから!」
と言うんです。

まさかと思いました。行基像の前で待ち合わせて一緒に学校に行ったあの日々はなんだったんでしょうか。ふたり同じ人を好きになってケンカして泣いてカナリアのパフェを食べたらその人のことなんてもうどうでもよくなったあの日々はなんだったんでしょうか。

私は先月も愛子の誕生日に長い手紙を書いて渡しました。不器用な愛子が欲しがっていた私のマフラーと同じ手編みのマフラーと一緒に。親友でないのだとしたらそんなものを送った私はなんだというのでしょうか。

「ウソでしょ、ねえ、ウソでしょ!? あの日々はなんだったの!?……親友でないのだとしたら私は距離感のわからない頭の痛い奴だって言いたいの!?」
愛子はうつむいてだまっていました。まさか、そんなまさか。本当に私はただの勘違い野郎だっていうことなんでしょうか。
「ねえ、なんとか言ってよ!」

「あのね、前から言いたかったんだけど……」と愛子は長い沈黙のあと切り出しました。
「それね、あんたが着ているその服ね、リバーシブルだリバーシブルだって言ってるけどね。それリバーシブルでもなんでもないから。裏地にも気をつかって見栄えよく作ってるだけだから。それ裏にナイロン地を貼ってるのはするっと脱ぎ着できるようにしてるだけだから。だからそれ今、服、裏表だからね」

まさかと思いました。だったらあの私にとっての輝かしい日々はなんだったんでしょうか。それもすべて裏地だったというのでしょうか。

私は夫に裏切られ、親友に裏切られ、トップスにまで裏切られました。すべてを失った私はただただ、泣きました。


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